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月別アーカイブ 2024年9月25日

法人税の計算方法|会計上の利益に対する税務調整や税率の適用について

法人のする事業活動により儲けが出たときは、法人税の負担も発生します。個人における所得税に対応するものですが、税負担の大きさや計算方法は異なります。

細かいことは税理士にお任せいただければと思いますが、おおよその負担や課税のされ方については知っておいた方が良いでしょう。

法人への課税の基本

税金を納める方法には①申告納税方式と②賦課課税方式の2つの方式が挙げられます。

  • 申告納税方式:納税義務者自身が税額の計算を行い、申告期限までに申告書を提出し、納付を行う方式
  • 賦課課税方式:課税庁が納付税額を具体的に納税義務者へ賦課する方式

法人税や消費税が①に該当し、固定資産税や不動産取得税等が②に該当します。

法人税に関しては「ある事業年度における会社の儲け(所得)に対して課される税金」であると説明ができます。そこで法人税の大きさを調べるには、まず儲けの大きさを正確に把握するところから始めなくてはなりません。

これはつまり「所得」の計算を意味します。会社が決算業務を通して作成した損益計算書の「当期利益」がベースとなりますが、この利益の大きさをそのまま使うことはできません。というのも、損益計算書においては“収益-費用=利益”という考え方をするのですが、税務上は“益金-損金=所得”という考え方をするためです。

収益と益金、費用と損金はそれぞれ共通する部分がとても多いですが、必ずしも一致するわけではありません。異なる部分が含まれていることもあるため、その分を調べて調整しないといけないのです。

法人税を計算する流れ

法人税については、会社の利益計算に加減の調整を行った上で、算出された法人の所得に対し税率を乗じ、納付額を把握することができます。そこで次のような流れに沿って計算を進めていきます。

  1. 企業会計に基づく利益を調べる
  2. 税務会計に基づく所得となるよう税務調整を行う
  3. 調整後の所得に税率を乗じて「法人税額」を算出

会計上の利益と税務上の所得のずれについて

企業の利益計算は、企業経営を前提にしています。そして簿記・会計の処理方法は、あらゆる企業で常に一致しているわけではありません。
これに対し法人税の所得計算は、納税の平等の立場に基づいて規定されています。納税義務者間に不平等が起こらないように配慮してルールが策定されているのです。

例えば減価償却費は、会計上固定資産の耐用年数を合理的に見積もって損益計算書の費用として処理しますが、法人税法上はあらかじめ固定資産の耐用年数を定めており、法定の耐用年数にて償却計算することが決まっています。

そのため、会計上の耐用年数と税務上の耐用年数が同じであれば問題ないですが、耐用年数が異なっている場合は利益をそのまま法人税における所得として扱ってしまうと、企業間の納税状況に不平等が生じるおそれがあるのです。

税務調整の4つのパターンについて

利益と所得のずれを調整する作業は「税務調整」とも呼ばれ、4つのパターンに大別することができます。

税務調整の種類
益金算入・所得に加算する調整のこと
・「無償譲渡」など、企業会計上の収益に計上されないものの法人税法上は益金にするものを算入する
益金不算入・所得から減算する調整のこと
・「受取配当金」など、企業会計上の収益に計上されるものの法人税法上は益金にしないものを不算入とする
損金算入・所得から減算する調整のこと
・「繰越欠損金」など、企業会計上の費用には計上されないものの法人税法上は損金にするものを算入する
損金不算入・所得に加算する調整のこと
・「減価償却資産の償却限度超過額」など、企業会計上の費用に計上されないものの法人税法上は損金にしないものを不算入とする

適用する税率について

税務調整を経て所得金額を求めることができれば、これに税率を乗じて法人税額を算出することができます。

適用する税率は、2024年時点で原則「23.2%」ですが、所得の大きさや法人の区分によって「19%」や「15%」が適用されることもあります。

※15%の税率は、特例による措置であり、中小事業者等に適用される。

区分所得金額のうちの区分原則特例
中小法人 (資本金1億円以下など)年800万円以下の部分19%15%
年800万円超の部分23.2%23.2%
中小法人以外の普通法人23.2%

出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

つまり、所得が800万円とすれば、原則通りに計算すると「152万円(800万円×19%)」。特例が適用されると「120万円(800万円×15%)」という値が算出されます。

法人税以外の税目として、地方法人税や地方税(法人住民税や事業税など)なども課されますが、本項では省略いたします。

申告は事業年度終了から2ヶ月以内に行う

税務申告は、原則として新事業年度開始日から2ヶ月以内にしないといけません。

この2ヶ月間に株主総会での承認の手続を行う必要があり、企業によっては取締役会等での「計算書類の承認」、監査役による「監査報告書の提出」も必要となります。この期間中、経理業務は忙しくなることでしょう。

そのうえ法人税や消費税の手続は複雑で、毎年のように改正が行われており、正しく計算・申告するのは簡単ではありません。経理担当、経営者としては法人税計算のあらかたを理解しておくことが望ましいですが、実際の計算や申告書の作成などは税理士に任せることをおすすめします。

役員報酬を決めるときに知っておきたい税金(法人税・所得税)との関係

役員報酬を決めるときは、法人税と所得税のバランスを考慮すること、そして適切な手続きによりこれを定めることを意識してください。

会社役員のする仕事への対価については、従業員に対する給与とは異なる取り扱いが必要ですので、問題が起こらないよう当記事にて大事なポイントを押さえておいてください。

役員報酬の大きさと税金の関係

まずは役員報酬の大きさが法人税や所得税にどう影響するのか、税負担について言及していきます。

役員報酬で法人税の負担は減らせる

会社が支払う法人税の大きさは、会社の利益の大きさに対応します。そしてこの利益の大きさは、売上と経費のバランスで定まり、同じ売上高に対して多くの経費を使っているときはその分利益は小さくなります。

役員報酬に関しては、一定の要件を満たす場合は、従業員に支払う賃金と同じように会社の税務上の経費として処理することが可能でこれを「損金算入」といいます。

損金算入された役員報酬はその他経費と同じく利益から差し引くことができますので、結果として会社の利益は減少し、法人税の負担も小さくなるのです。

しかし、節税ばかり意識していると会社の利益を圧迫してしまい、資金繰りが悪化する可能性もあります。

役員個人の所得税等がかかる

役員報酬を増やすことで会社の法人税を減らせる反面、役員個人にかかる所得税や社会保険料は大きくなってしまいます。

役員報酬は従業員が給与を受け取ったときと同じように「給与所得」として処理されますので、原則通り累進課税制度に従い所得が大きいほど大きな税率が適用されます。

そのため、会社の経営状況や役員個人の状況などを総合的に考慮し、法人税の節税効果と所得税や社会保険料の増加のバランスを考えながら適切な役員報酬を設定することが重要といえます。税金を意識するときは税理士に相談し、最適な報酬の額を検討しましょう。

金額を決めるときのポイント

役員報酬の額を決めるときはさまざまな要素を考慮すべきです。特に意識しておきたいポイントを下表にまとめました。

役員報酬の額を決めるときのポイント
毎月の利益や固定費の予測を立てておく毎月の売上予測、経費(人件費、家賃、光熱費など)を算出し、そこから得られる利益を把握。この利益に見合った金額に設定することが重要。また、固定費を差し引いた上で、会社に残る資金も考慮する。
法人税と所得税等のバランスを考慮する上記の通り、役員報酬を増やすと会社の法人税は軽減されるが、役員個人の所得税等が増加する。 法人と個人、それぞれが許容できる税負担やバランスを考慮して金額を定める。
業務内容に見合った金額にする役員の職務内容、責任、貢献度に見合った金額であるべき。同業他社や事業内容が類似する企業の役員報酬を参考にしながら、適切な金額を考えると良い。また、実態に見合わない不当に高額な役員報酬だと税務署が認めない可能性もあるため注意が必要。
従業員との格差への配慮役員や従業員、それぞれの仕事内容に見合った金額とすることは大事であるが、あまりに役員報酬との差が大きいと従業員の働くモチベーションが下がってしまう。従業員の昇給やボーナスがない状況下で役員報酬だけ増額されていると特に反感を買いやすいため要注意。

会社の状況は常に変化するため、一度定めた役員報酬も定期的に見直しましょう。その際、会社の将来的な成長を見据えること、役員のモチベーションを維持することに着目すると良いでしょう。

※ただし、原則として役員報酬の増減は事業年度開始後3か月以内の改定に限って認められますので、やむを得ない事情があり期中の変更を行わざるを得ない場合は事前に税理士に相談しましょう。

なお、役員のモチベーションを上げる方法には、役員報酬以外にも「ストックオプション制度」などのインセンティブ報酬を取り入れるというやり方もあります。

役員報酬を定める手続きが必要

株式会社においては、株主総会で役員報酬を決める必要があります。所有と経営が分かれている株式会社において役員が報酬を取り過ぎると会社所有者である株主の利益が侵害されるおそれがあるためです。

とはいえ多くの中小企業では経営者である取締役が株主を兼ねていることが多いでしょうし、取締役兼株主が1人というケースも珍しくありません。その場合は法人とはいっても自分1人ですべて決めることができます。

原則は株主総会での決議

役員とは別に株主がいるとき、役員報酬を決める原則的方法は「株主総会での決議」であることを知っておいてください。

経営陣だけで勝手に決めることは許されず、株主総会を開いてそこで承認を受けなくてはなりません。まずは役員報酬に関する議案を提出し、そこで“普通決議”にて可決されれば、その金額を支給することができます。

定款を使ったやり方もある

役員報酬を変更するたびに議決を取るのが面倒だという場合、「定款」という会社の根本原則を使って少し簡略化させましょう。

例えば定款に「すべての取締役に関する報酬総額の限度額」を定めておけば、その範囲内に限り、取締役会で具体的な金額を定めることができます。取締役会とは経営陣だけでの会議ですので、迅速・柔軟に報酬について話し合うことができるでしょう。

ただしこの限度額を変更するときは「定款変更」を要しますので、株主総会の“特別決議”が必要です。“普通決議”に比べて要件が厳しくなりますのでこの点も留意のうえ、定款を活用しましょう。

創業計画書について|記載事項や押さえておきたいポイントなど作成方法を紹介

創業計画書は、会社や事業の立ち上げの際に作る事業計画書のことです。事業の見通しを立てるため、金融機関から創業融資を受けるため、などを目的に作成します。特に創業段階では実績がなく不確定要素も多いことから、創業計画書は重要な存在といえます。

当記事では「創業計画書を作成するにあたって知っておきたいこと」をまとめましたので、始めての会社設立を検討している方、あるいは会社を立ち上げたばかりの方などは参考にしてください。

創業計画書とは

創業計画書とは、これから始める事業の内容、目標、戦略などを具体的にまとめた書類です。「ビジネスの設計図」とも言える存在です。

計画書には、事業のアイデアだけでなく、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、財務計画など、多岐にわたる情報を盛り込みます。客観性・具体性のある内容とすることで、金融機関など外部の方にも当該事業の将来性や実現可能性を評価してもらいやすくなります。

どんなときに作成するのか

創業計画書は事業の見通しを立てるために作られます。今始めようとしている事業にはどのような課題があるのか、どれほどの売上高が見込まれて、どれだけの経費が発生し、どれだけの利益が出せるのか、こういった情報を整理していきこれからの予測を立てるのです。

事業がスタートしていませんのでどうしても想像に頼る部分も出てきてしまいますが、客観性のある数値・相場も参照して解像度を上げていくことで実現可能性の高い見通しを立てることもできます。そうすると当該事業で見直すべきポイントや注力すべきポイントなども明らかとなり、事業の失敗も少しは避けやすくなります。

また、事業の見通しがわかりやすく整理されることによって、創業計画書を自社の評価材料として使うこともできます。活用が想定される一番のシーンは「創業融資」です。融資を行う金融機関は、相手方の返済能力を審査してからでなければお金を貸すことはできません。返済したお金が約束通りに返ってこないリスクがあるからです。

特に創業段階だと安定して利益が出せない危険性が高いですし、今後どうなるのか、過去の実績がなく評価しづらいです。そこで創業計画書が役立ちます。不安要素が多いものの、創業計画書がしっかりと作りこまれていれば「この計画通りにいけば返済してもらえそうだ」という判断もすることができます。

創業計画書の作成方法

決まったフォーマットはありませんが、創業計画書を作成するときは次の事項を盛り込むよう意識しておきましょう。

  • 創業の背景や目的
  • 市場分析や戦略の内容
  • 必要な資金の内訳
  • 売上高や利益の根拠

創業の背景や目的を記載する

創業を検討している方についての職歴や具体的な実績、なぜ創業を決意したのか(動機)、そしてその事業が目的としていること、などを簡潔に記載しましょう。

特に審査の観点からは、長々と動機について記載する必要はありません。計画書に説得力を持たせられるような背景等があればその点をアピールしておきましょう。

市場分析や戦略の内容を記載する

これから始める事業ではどんな商品やサービスを取り扱うのかをわかりやすく示しましょう。そしてターゲットとする顧客、顧客にリーチする手段、競合他社との競争に勝つための戦略、などを具体的にまとめます。

その際は自社のことだけに目を向けたのでは不十分です。周りに意識を向け、他社がどのような活動をしているのか、昨今の市場動向はどうなのか、消費者の意識はどのように変化しているのか、これらの調査結果を反映させると説得力も増します。

必要な資金の内訳を記載する

資金調達を行う場合はただ単に「2,000万円が必要」と伝えるのではなく、その金額が必要な理由についても示す必要があります。

そこで内訳についても具体的に記載し、必要資金の過不足が生じないように留意してください。またその際は「設備資金」と「運転資金」に分けて考えることが大事です。融資の審査の観点からは、スモールスタートでまずは運転資金から備えて実績を積んでおくのが有効といえます。

売上高や利益の根拠を記載する

売上高の大きさ、経費の大きさ、利益の大きさについて明記しましょう。またその数字の根拠も示す必要があります。

これらの情報は、事業の見通しを判断するうえで特に重要といえます。

希望的観測で「毎月100万円くらいの売上は出るだろう」と考えるのではなく、なぜその金額になるのかを具体的に考えておく必要があります。立地の良さ、当該エリアにおける人口の多さや市民の属性、競合他社の状況なども踏まえて計算を行いましょう。

そうやって一つひとつの数字を考えていくと、一定以上の利益を出すために「日々どれだけの顧客が来店しないといけないのか」「客単価はいくら以上であるべきか」「人件費はいくらまで出せそうか」「家賃はいくら以下にしないといけないか」などが見えてきます。

創業計画書を策定するときのポイント

最後に、創業計画書の内容を考えるときに大事なポイントを整理します。以下の点を押さえて作成を進めていくと良いでしょう。

  • 具体的に書くこと
    (ぼんやりとした抽象的な表現は避け、具体的な数字や根拠を提示する。)
  • 分かりやすく書く
    (専門用語の多用は避けて誰にでも理解しやすい表現を使うこと、また、見やすさを意識した構成とすることも大事。)
  • 実現可能な計画を立てる
    (無理な計画、希望的観測に基づく計画は避け、実現可能性を意識して目標を設定する。)