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月別アーカイブ 2024年10月17日

改正のあった「交際費の損金不算入制度」について解説

会社の経営をしている方、経理業務に携わる方は、交際費の取り扱いにご注意ください。損金として算入できる範囲が限られていますし、また、法改正によってその運用方法が変わることもあります。

2024年度の税制改正でもルール変更があったため、その変更点も踏まえてここで「交際費の損金不算入制度」を解説します。

交際費の損金不算入制度改正の概要

「交際費の損金不算入制度」に関して令和6年度の税制改正で変わったのは、次に掲げる点です。

  • 「損金不算入の対象となる交際費」から除かれる飲食費の金額基準が「1人あたり5,000円以下」から「1人あたり10,000円以下」へと引き上げられた
    ※2024年4月1日以後の支出分から適用される。
  • 「飲食費の50%を損金算入できる特例」および「中小法人が年800万円まで交際費を損金算入できる特例」の適用期限が3年間延長された
    ※2027年3月31日まで適用可能。

交際費についての基本ルール

特例等について詳細を説明する前に、交際費の基本ルールを把握しておきましょう。

まず「交際費」についてですが、これは得意先などの取引先との接待にかかる費用やその際にかかる飲食費(接待飲食費と呼んだりもする。)、さらには接待後のタクシー費用。そして贈答にかかる中元歳暮代なども含んだ費用のことをいいます。

取引を成功させ、継続していくためなどに支出する重要な費用ですが、無制限に損金への参入を認めてしまうと納税額を下げるため不正に交際費が使われてしまうおそれがあります。そこで交際費に関しては「損金不算入制度」が設けられ、基本的には損金として計上することが認められていません。

飲食費は一定額交際費から除くことができる

交際費は損金に算入できないのが原則ですが、次に掲げる費用については「損金不算入の対象である交際費」から除かれます(つまり損金算入ができる)。

交際費から除かれるもの備考
社外の人との飲食にかかった費用であって「1人あたり1万円以下」の飲食費※改正あり
従業員の慰安目的で行う旅行や運動会などにかかる費用福利厚生費として処理
カレンダーなどの物品を贈与するための費用広告宣伝費として処理
会議に際して用意する弁当や茶菓、飲み物などにかかる費用会議費として処理
雑誌や新聞、放送番組のために開かれる座談会等の費用取材費として処理

飲食費については従来「1人あたり5,000円まで」を損金算入できる運用だったのですが、法改正によりこの基準額が「1人あたり1万円まで」に増額されています。

ただし、以下の情報が記載された証憑などを保存しておかないといけません。

  • 飲食があった年月日
  • 参加者の氏名や関係性、数
  • 飲食費の額
  • 飲食店の名前と所在地
  • その他飲食費であることがわかる書類

一定限度のもと損金算入は認められる

交際費の損金不算入制度では、法人の区分に応じて異なる措置が設けられています。資本金の大きさで区分されており、措置の内容については法改正の影響を受けていますのでご注意ください。

中小法人(資本金1億円以下)の場合

資本金の額が1億円以下の「中小法人」は、他の法人区分よりも次のように優遇されています。

中小法人の交際費の取り扱い
以下のAとBいずれかの金額から「損金不算入額」を選択できる。
  A:ある年度において発生した交際費の額-飲食費の50%
※この飲食費は「1人あたり1万円」の基準を超えた分の合計額を指す。
B:ある年度において発生した交際費の額-年800万円

上のAを選択する場合、まず飲食費について「1人あたり1万円以下」の部分を除き(損金算入)、この基準を超えた飲食費を合計します。さらにその合計額の50%は損金算入。残りの50%と飲食費以外の交際費が損金不算入となります。

Bを選ぶ場合もまずは飲食費について「1人あたり1万円以下」の部分を除きます(損金算入)。そして残りの飲食費を含む交際費をすべて合計したうえで、800万円を控除し(損金算入)、800万円超の部分が損金不算入となります。
Bの方は計算がシンプルで、また、中小法人のみが選択できる方法でもあります。

大法人(資本金100億円以下)の場合

資本金が1億円を超える大法人(ただし100億円は超えないこと)の場合でも特例措置は受けられますが、中小法人のように損金不算入額を選択することはできなくなります。

大法人(資本金の額1億円超、100億円以下)の交際費の取り扱い
以下の金額が「損金不算入額」。
  ある年度において発生した交際費の額-飲食費の50%
※この飲食費は「1人あたり1万円」の基準を超えた分の合計額を指す。

年800万円までの交際費を損金算入することはできず、飲食費の50%を差し引いて損金不算入額を計算します。

大法人(資本金100億円超)の場合

上で紹介したどの法人にも該当しない大法人では特例措置が使えず、その年度で支出した交際費のすべてが損金不算入額となります。

大法人(資本金の額100億円超)の交際費の取り扱い
ある年度において発生した交際費全額を損金不算入
※飲食費のうち「1人あたり1万円まで」の部分は除く。

ただし、飲食費「1人あたり1万円まで」は損金算入できますので、それを除いたすべての部分が損金不算入です。