取引先から入金があった日に売上として計上するのか、それとも商品を納品した日に計上するのか、適切な会計処理を行うには売上の帰属時期についてのルールを知っておく必要があります。ここでは、売上の帰属時期の具体的な判定基準について分かりやすく解説します。
売上の帰属時期とは
売上の帰属時期、取引による収益(売上)を会計上いつ生じたものとして計上するのかは、会計上・税務上大きな意味を持ちます。これは、簡単にいうと「いつの時点でお金を稼いだと見なすか」というタイミングの問題です。
企業活動に伴いさまざまな取引が日々発生しますが、それらの売上をいつの時点で企業の収益として認識するかが財務諸表の作成や税金の計算にも影響するのです。そのためこのタイミングが適切に扱えていないと、会社の経営状態を正確に把握できなくなったり、税務上の問題が生じたりする可能性があるのです。
発生主義・現金主義・実現主義について
売上や費用の帰属時期を考えるうえで重要な考え方、「発生主義」と「現金主義」、そして「実現主義」があります。
発生主義とは、実際にお金の受け取りがあったかどうかに関わらず、サービスや商品を提供した時点や費用の発生する取引が「発生した時点」で計上する考え方です。費用を計上するときの原則的な考え方で、たとえば、3月に商品を購入し、代金の支払いが4月だった場合でも、3月の費用として計上します。
※個人事業主や小規模な企業では一定の条件下で現金主義による処理も認められる。
一方、現金主義とは実際にお金を受け取った時点で収益等を計上する考え方のことです。先ほどの例では、代金を支払った4月で費用を計上することになります。
これに対し実現主義は売上を計上するときの原則的な考え方で、商品やサービスの提供が完了して対価を受け取る「権利が確定した時点」を基準に収益を計上します。
売上を計上する時期の判断基準
会計上、売上を計上する時期は実現主義に従います。
ポイントは「いつ権利が確定したか」にあるため、実際にお金を受け取った時点ではないことに注意が必要です。資産の譲渡をした場合と役務の影響をした場合とで取り扱いが異なりますので、各パターンを見てみましょう。
資産の譲渡(物品販売等)の場合
資産の譲渡とは、簡単にいえば「モノを売ること」を指します。店舗で商品を売る、自社製品を納品する、会社の不動産を売却する、など形ある物を相手方へ渡して対価を得るタイプの取引が該当します。
そして資産の譲渡にあたる場合の売上の計上時期は、基本的に「モノを相手方へ渡した時点」となり、その考え方を「引渡基準」と呼んだりもします。
《 資産の譲渡が行われた場合の例 》
- 店頭販売の場合・・・商品を顧客に手渡したとき(レジで精算した日)
- ネット販売の場合・・・商品が顧客に届いたとき(配達完了日)
- 工場から直送する場合・・・顧客の指定場所に納品された日
- 固定資産の売却の場合・・・所有権移転登記が完了した日
- 有価証券の売却の場合・・・約定日(取引が成立した日)
ただし、大型設備など、設置や調整等を要するモノに関してはその作業を行ったうえで相手方による検収が通常は行われます。製品や設備が正常に動作することを確認し、承認した時点で取引が完了したと評価します。この「検収基準」が採用されるケースもあることは留意しておきましょう。
役務の提供(サービス提供等)の場合
役務の提供とは、「サービスを提供すること」と言い換えることもできます。アドバイスをする、情報を提供する、荷物を運ぶ、など形のないサービスを提供して対価を得る取引が役務の提供に該当します。
この場合の売上の計上時期は、基本的に「サービスの提供が完了した時点」です。
《 役務の提供が行われた場合の例 》
- コンサルティングの場合・・・報告書を提出して業務が完了した時点
- 宿泊サービスの場合・・・宿泊が終了した時点
- 運送サービスの場合・・・荷物が目的地に到着した時点
- 修理サービスの場合・・・修理が完了して顧客が確認を済ませた時点
役務の提供においては、いつ履行義務が果たされたかがポイントになります。つまり、契約で約束したサービスがいつ完全に提供されたのかに着目します。
ただ、長期間にわたるプロジェクトの場合だとそのすべてが終わってからではなく、進捗度合いに応じて段階的に売上を計上することもあります。また、複数回にわたる役務提供においては、都度の提供を完了した時点で売上を計上したり、契約期間に応じて均等に計上したりする方法もあります。
売上計上に関する実務上の注意点
売上の計上に関しては、証憑類や帳簿を適切に管理すること、取引に関する契約書を作成しておくことに注意しましょう。
注文書、納品書、検収書、請求書などの書類を保管しておいて、後日でも商品の受け渡し日や相手方が商品等について承認をした日などが証明できるようにしておくべきです。また、契約書に納品条件や支払条件、サービス提供の範囲等を明記しておくことで売上時期の判断について客観的に示しやすくなります。
特に期末に近い取引では計上時期が決算の内容に影響するうえ、意図的に売上を前倒ししたり先送りしたりしていると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。計上時期について悩む場合は税理士に相談あるいは業務の代行を依頼することもご検討ください。














