法人のする事業活動により儲けが出たときは、法人税の負担も発生します。個人における所得税に対応するものですが、税負担の大きさや計算方法は異なります。
細かいことは税理士にお任せいただければと思いますが、おおよその負担や課税のされ方については知っておいた方が良いでしょう。
法人への課税の基本
税金を納める方法には①申告納税方式と②賦課課税方式の2つの方式が挙げられます。
- 申告納税方式:納税義務者自身が税額の計算を行い、申告期限までに申告書を提出し、納付を行う方式
- 賦課課税方式:課税庁が納付税額を具体的に納税義務者へ賦課する方式
法人税や消費税が①に該当し、固定資産税や不動産取得税等が②に該当します。
法人税に関しては「ある事業年度における会社の儲け(所得)に対して課される税金」であると説明ができます。そこで法人税の大きさを調べるには、まず儲けの大きさを正確に把握するところから始めなくてはなりません。
これはつまり「所得」の計算を意味します。会社が決算業務を通して作成した損益計算書の「当期利益」がベースとなりますが、この利益の大きさをそのまま使うことはできません。というのも、損益計算書においては“収益-費用=利益”という考え方をするのですが、税務上は“益金-損金=所得”という考え方をするためです。
収益と益金、費用と損金はそれぞれ共通する部分がとても多いですが、必ずしも一致するわけではありません。異なる部分が含まれていることもあるため、その分を調べて調整しないといけないのです。
法人税を計算する流れ
法人税については、会社の利益計算に加減の調整を行った上で、算出された法人の所得に対し税率を乗じ、納付額を把握することができます。そこで次のような流れに沿って計算を進めていきます。
- 企業会計に基づく利益を調べる
- 税務会計に基づく所得となるよう税務調整を行う
- 調整後の所得に税率を乗じて「法人税額」を算出
会計上の利益と税務上の所得のずれについて
企業の利益計算は、企業経営を前提にしています。そして簿記・会計の処理方法は、あらゆる企業で常に一致しているわけではありません。
これに対し法人税の所得計算は、納税の平等の立場に基づいて規定されています。納税義務者間に不平等が起こらないように配慮してルールが策定されているのです。
例えば減価償却費は、会計上固定資産の耐用年数を合理的に見積もって損益計算書の費用として処理しますが、法人税法上はあらかじめ固定資産の耐用年数を定めており、法定の耐用年数にて償却計算することが決まっています。
そのため、会計上の耐用年数と税務上の耐用年数が同じであれば問題ないですが、耐用年数が異なっている場合は利益をそのまま法人税における所得として扱ってしまうと、企業間の納税状況に不平等が生じるおそれがあるのです。
税務調整の4つのパターンについて
利益と所得のずれを調整する作業は「税務調整」とも呼ばれ、4つのパターンに大別することができます。
税務調整の種類 | |
益金算入 | ・所得に加算する調整のこと ・「無償譲渡」など、企業会計上の収益に計上されないものの法人税法上は益金にするものを算入する |
益金不算入 | ・所得から減算する調整のこと ・「受取配当金」など、企業会計上の収益に計上されるものの法人税法上は益金にしないものを不算入とする |
損金算入 | ・所得から減算する調整のこと ・「繰越欠損金」など、企業会計上の費用には計上されないものの法人税法上は損金にするものを算入する |
損金不算入 | ・所得に加算する調整のこと ・「減価償却資産の償却限度超過額」など、企業会計上の費用に計上されないものの法人税法上は損金にしないものを不算入とする |
適用する税率について
税務調整を経て所得金額を求めることができれば、これに税率を乗じて法人税額を算出することができます。
適用する税率は、2024年時点で原則「23.2%」ですが、所得の大きさや法人の区分によって「19%」や「15%」が適用されることもあります。
※15%の税率は、特例による措置であり、中小事業者等に適用される。
区分 | 所得金額のうちの区分 | 原則 | 特例 |
中小法人 (資本金1億円以下など) | 年800万円以下の部分 | 19% | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% | 23.2% | |
中小法人以外の普通法人 | 23.2% | ― |
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
つまり、所得が800万円とすれば、原則通りに計算すると「152万円(800万円×19%)」。特例が適用されると「120万円(800万円×15%)」という値が算出されます。
法人税以外の税目として、地方法人税や地方税(法人住民税や事業税など)なども課されますが、本項では省略いたします。
申告は事業年度終了から2ヶ月以内に行う
税務申告は、原則として新事業年度開始日から2ヶ月以内にしないといけません。
この2ヶ月間に株主総会での承認の手続を行う必要があり、企業によっては取締役会等での「計算書類の承認」、監査役による「監査報告書の提出」も必要となります。この期間中、経理業務は忙しくなることでしょう。
そのうえ法人税や消費税の手続は複雑で、毎年のように改正が行われており、正しく計算・申告するのは簡単ではありません。経理担当、経営者としては法人税計算のあらかたを理解しておくことが望ましいですが、実際の計算や申告書の作成などは税理士に任せることをおすすめします。