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損金に算入できる税金と不算入になる税金~租税公課の処理について~

企業が事業を営む過程で発生するさまざまな税金・公的負担に関して、どれが損金として計上でき、どれができないのか、判断を誤らないようにしましょう。租税公課の処理にミスがあると正しく法人税を算出できません。

損金算入できる税金と不算入となる税金について、ここで具体例を取り上げながら紹介していますので会計処理に関わる方はぜひ参考にしてください。

租税公課の損金算入の基本ルール

租税公課の損金算入に対しては、「法人の事業活動に関連して課される税金や公課は損金算入を認めるが、法人の所得そのものに課される税金や罰則的性格を持つものは損金算入が認められない」と考えます。

この区分の根拠は、損金の概念にあります。そもそも損金とは、法人の所得金額の計算上、収益から控除される費用や損失のことを指します。そのため事業活動に必要な費用として支払うお金であれば損金となりますが、その際所得に対して課される税金を損金としてしまうと税金で税金を控除することになり、税制の趣旨に反してしまうのです。

また、違反行為に対する制裁として課される罰金や加算税に関しては、社会政策的な観点から損金算入を認めないこととされています。これにより、違反に対する抑制効果もはたらくと考えられています。

損金算入できる税金

事業活動に関連して課される税金の多くは、損金算入が認められます。損金として認められる税金各種の具体例を見ていきましょう。

事業に直接関連する税金

「法人事業税」は、損金算入可能な税金の代表例です。これは法人が行う事業そのものに対して課される税金であり、事業活動の対価として支払う性格を持つため、全額の算入が可能です。

※個人事業主の場合も同様で、「個人事業税」は必要経費として控除できる。

「自動車税」や「軽自動車税」についても、事業用車両に係るものは損金算入の対象となります。営業活動や商品配送など、事業目的で使用する車両の税金は当然に事業費用として認められます。
ただし、役員や従業員の通勤専用車両など、私的利用の要素が強い場合には、その使用実態に応じて算入額を按分しなくてはなりません。

※走行距離や利用時間、利用頻度など、合理的な基準を用いて按分し、事業利用分のみを算入する。

資産や取引に関連する税金

「固定資産税」も、それが法人の所有する土地や建物、償却資産に対して課される税金であれば、全額損金算入します。事業用不動産であれば固定資産税も事業活動に必要な費用ですし、賃貸用不動産に関しても収益を得るための必要費用として算入が認められています。

また、土地や建物を購入する際に課される「不動産取得税」も同様です。この税金は取得した不動産の取得価額に含めて処理することも可能ですが、支払時に損金として処理することも認められています。実務では会計処理を統一することが重要ですので、その都度選択するのではなく、いずれか一方の方法を継続的に適用しなくてはなりません。

「印紙税」も、事業活動に関連して発生したのであればすべて算入できます。これは契約書や領収書などの書面(紙)に対し課される税金で、たとえば売買契約書・業務委託契約書・金銭消費貸借契約書など、さまざまな書面を作成したときに課されます。

※あくまで書面である場合に課される税金であり、電子データとして作成する領収書や契約書であればそもそも非課税。

「登録免許税」についても、事業に関連する登記手続きに要したのであれば算入可能です。たとえば会社設立時の登記、本店移転登記、役員変更登記など、企業の運営に必要な登記で支払った登録免許税は、事業のためにかかった費用として処理します。

消費税の取扱いに注意

「消費税」については、採用している経理方式(税抜経理方式と税込経理方式)によって取扱いが異なるため注意してください。

  • 税込経理方式・・・仕入や売上などの取引を、消費税を含めた税込金額で記帳する方式。日々の経理処理はシンプルになるが、消費税分も費用や収益として計上される。
  • 税抜経理方式・・・取引ごとで本体価格と消費税額を分けて記帳する方式。経理処理は少し複雑になるが、実際の損益は明確になる。

※いずれの方式を選ぶことも可能で、最終的な消費税の納付額も変わらない。

税込経理方式では納付すべき消費税を租税公課として損金に算入しますが、税抜経理方式の場合、日々の取引で消費税相当額を除外して処理しているため、消費税自体を損金に計上しません。自社の経理方式に応じて、適切に消費税の処理を行いましょう。

損金算入できない税金

上記の各種税金とは異なり、「法人の所得に直接課される税金」や「制裁的性格を持つ税金」に関しては損金算入が認められません。その例を紹介します。

法人の所得に課される税金

法人の所得に直接課される税金といえば「法人税」です。
これは損金不算入となる税金の代表例といえるでしょうこの取扱いは法人税法で明記されています。

内国法人が納付する法人税(延滞税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税を除く。以下この項において同じ。)の額及び地方法人税(延滞税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税を除く。以下この項において同じ。)の額は、第一号から第三号までに掲げる法人税の額及び第四号から第六号までに掲げる地方法人税の額を除き、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

引用:e-Gov法令検索 法人税法第38条第1項
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034

そこで法人税の申告を行う際は、会計上費用計上された法人税額を法人税申告書の別表4にて加算調整します。

「法人住民税」も同様に不算入とされています。法人住民税には、法人税額を基準として計算される税額割と資本金等の額や従業員数を基準とする均等割がありますが、そのいずれも算入は認められません。税額割については法人税と同じ性格を持ち、均等割についても法人の存在そのものに課される税金として、損金不算入の扱いとされているのです。

罰則的性格を持つ税金

損金不算入となる罰則的性格を持つ税金とは、「延滞税」や「加算税」のことです。

延滞税は、法定納期限までに税金を納付しなかった場合に課される利息的性格を持つ税金で、同時に納期限遵守を促す制裁的意味合いも含みます。

加算税にはさらに「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」があり、いずれも算入は認められません。これらの税金は税務申告の適正性を確保するための制裁措置であり、社会政策的観点から不算入の扱いになっています。

税金以外で損金不算入とされる公課には、たとえば刑罰として科される「罰金」や「科料」、行政罰として科される「過料」などがあります。罰金や科料は罪を犯したときに科されるペナルティで、事業遂行の過程で道路交通法違反、独占禁止法違反などを犯してしまうこともありますが、いくら事業に関わるといってもこれらを損金算入することはできません。支払いを行ったとしても、税務申告においては加算調整を行いましょう。

日本政策金融公庫で融資を受けるメリットとは

小規模事業者、それも創業からそれほど経っていない事業者だと、資金調達をするのも簡単ではありません。代表的なのは「銀行から融資を受ける」という手法ですが、これもある程度の実績がなければ審査に通らない可能性が高いため、そんなときは「日本政策金融公庫から融資を受ける」ことも検討してみましょう。

当記事で中小企業が日本政策金融公庫を利用するメリットを取り上げていますので、検討にあたっての参考にしていただければと思います。

「融資の受けやすさ」が一番のメリット

金融機関も日本全国多数存在しますが、日本政策金融公庫には「中小企業でも融資が受けやすい」という大きなメリットがあります。その理由として以下4つのポイントを挙げることができます。

  1. 創業融資にも積極的
  2. 低金利で借入できる
  3. 豊富な融資制度がある
  4. 無担保・無保証人の融資制度がある

各ポイントについて見ていきましょう。

創業融資にも積極的

日本政策金融公庫は創業期の企業に対する融資にも積極的な姿勢を持っているため、立ち上げ直後の企業向けの融資制度も用意されています。

創業期の企業への融資はリスクも大きいと評価されやすいため、通常だと審査も厳しくなり、なかなか資金調達を成功させられません。もし、他の金融機関からの融資が難しいと思われるときは日本政策金融公庫への申し込みを考えてみましょう。

低金利で借入できる

金利が比較的低く設定されているのも日本政策金融公庫を利用する大きなメリットです。同じ金額を借りられたとしても、金利が低ければその分企業にとってのリスクは小さくなり、経済的な負担も抑えることができます。

また、変動金利のみならず固定金利を選択できるケースがあるのも利点です。

一般的には融資の際変動金利が設定されていることが多いのですが、固定金利が選択できることで「返済額が変動してしまう」というリスクを回避することができるのです。固定金利が変動金利より常に優れているわけではなく、それぞれに良し悪しがありますが、選択肢が用意されていることでより自社に合った融資を実現しやすくなるでしょう。

豊富な融資制度がある

創業融資のこともそうですが、日本政策金融公庫には多種多様な融資制度が用意されています。そのため事業の状況や目的、業種などを問わず、幅広い企業が利用しやすくなっています。

大きな区分としては次の3つが挙げられます。

融資制度の区分特徴
国民生活事業・個人事業主や小規模事業者が主な対象
・融資残高は平均約900万円
・短期の運転資金についても取り扱いあり
中小企業事業・中小企業が主な対象
・融資残高は平均約1.3億円
農林水産事業・農林漁業やその加工流通分野の事業者が主な対象
・長期事業資金についての融資

さらに細かく融資制度が設けられていますので、一度公式のWebサイトから調べてみると良いでしょう。

日本政策金融公庫:「融資制度を探す」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index.html

無担保・無保証人の融資制度がある

多くの場合、特に創業期でリスクの大きな企業の場合、融資を受ける際に担保あるいは保証人を求められます。

他方、日本政策金融公庫であれば、一定条件を満たし無担保・無保証人にて融資を受けることも可能です。
よく会社代表者が保証人となるケースがあるのですが、そうするとプレッシャーが大きすぎて攻めた経営ができなくなるなどの問題が起こってしまうのです。しかし保証人等が不要となればより積極的に事業を展開しやすくなります。

次の融資に繋がる間接的なメリットもある

日本政策金融公庫からの融資に成功し、その後計画通りに返済することができれば、それを実績として次の資金調達に活かすことができます。

初めての融資だと、相手方も「本当に完済してくれるのだろうか」「信用していい企業なのだろうか」と不安に思うかもしれません。
一方で、「前に日本政策金融公庫からお金を借りて、その後計画通りに返しました」とアピールができれば別の金融機関も少し安心でき、審査においても良い印象を与えることができるでしょう。

その他のメリットについて

ほかにも日本政策金融公庫ならではのメリットが下記の通りいくつか挙げられます。

返済期間を長く設定できる

日本政策金融公庫の場合、返済期間を比較的長く設定することもできます。

「運転資金10年以内」「設備資金20年以内」などと設定できるケースがあるのですが、民間の金融機関だと数年程度短い返済期間でしか組めないことが多いです。また、元金返済に関して据置期間を設けられる(「5年以内」など)のも大きなメリットといえます。

融資実行までがスピーディ

資金ショートを起こしそうな場合、できるだけ早く融資を実行してもらう必要があります。事業がピンチではなくても、手続きがスピーディに進められる方が企業にとって望ましいでしょう。

この点、日本政策金融公庫を利用した融資であれば審査期間が短いことが多く、一般的な銀行などと比べて1,2ヶ月ほど早く資金を得られるケースもあります。

企業経営に関する相談ができる

日本政策金融公庫では融資制度の提供のみならず、経営に関する相談や事業者に役立つ情報の提供なども行っています。融資に伴い事業活動についての相談・質問ができるのも日本政策金融公庫のメリットといえます。

緊急時の資金調達で頼れる

日本政策金融公庫では、災害被害を受けた企業が利用しやすい融資制度も用意しています。そのため緊急で資金調達をしたいときにも適しています。

例えば、地震や台風、火災などで事業の復旧を要する事業者に対して、「災害復旧貸付」を提供することで復興を支援しています。

参考:「災害復旧貸付」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/saigai.html

日本政策金融公庫からの融資でも入念な準備が欠かせない

日本政策金融公庫は小規模事業者にとって心強い味方となります。しかしながら「簡単に資金調達ができる」ということではありません。

日本政策金融公庫からの融資であっても審査に通るため、入念に準備を進めておく必要があり、とりわけ事業計画書の策定は重要度が高いです。

綿密な、実現可能性の高い計画を立て、「返済できそうだ」と思わせることが大事です。計画の策定について不安がある場合は専門家の力も借りながら、より質の高い計画を練り上げましょう。

受取配当等の益金不算入制度をわかりやすく解説

法人税を計算するときは「受取配当等の益金不算入制度」について知っておく必要があります。この制度は、企業がほかの会社から受け取った配当金に関して、法人税の負担を軽減する仕組みになっています。

当記事では、この制度の基本的な考え方から具体的な計算方法まで、わかりやすく解説していきます。

受取配当金とは何か

受取配当等の益金不算入制度について考えるには、まず「受取配当金」とは何かを理解しなくてはなりません。

受取配当金とは、企業がほかの会社の株式を保有していることで受け取る配当金のことです。たとえば、X社がY社の株式を持っている場合、Y社が利益を上げて株主に配当金を支払うと、X社はその配当金を受け取ることになります。

《 他社の株式を持つ典型例 》

  • 長期的な付き合いや取引関係を強化したいとき
    → 長年の取引関係があって、今後も安定した関係を続けたいと考えているとき、X社がY社の株を買ったり、Y社がX社の株を買ったりすることがある。これにより両社の結びつきが強くなり、取引や協力関係の安定が期待される。
  • 経営を安定させたい
    → 外部からの急な買収や、経営方針を揺るがすような動きを防ぎたいときに、信頼できる会社同士で互いに株を持ち合うことがある。
  • 新しい事業や技術を得たい
    → 将来的に一緒に新しい事業を始めたり、相手方の会社の技術やノウハウを活用したりしたい場合に、その会社の株を買うことがある。
  • 資金を有効活用したい
    → 会社が余った資金を預金などに預けるだけでなく、将来性のある会社に投資することで、配当金や株価の値上がりによる利益を得ようとする場合がある。

また、株式の配当に加え投資信託の収益分配金や、投資法人からの金銭分配なども受取配当金に含みます。

企業の会計処理では、この受取配当金は「営業外収益」として損益計算書に計上されます。つまり、会計上は収益として扱われ、企業の利益を構成する要素としてカウントすることが認められます。

益金不算入は何を意味するか

「益金不算入」とは、簡単にいうと「法人税の計算において収益として数えない」という意味になります。益金不算入のものは、会計上は収益で計上したとしても、法人税の計算上の「益金」(法人税計算上の収益のこと)には含めないということです。

たとえば、100万円の受取配当金があった場合、会計上は当該会社が100万円の収益を得たものとして処理できますが、法人税について考えるときは益金不算入の適用を受けますのでその一部または全額が益金から除外されます。
結果として、その分だけ法人税課税の対象になる所得が減少し、納めるべき法人税額も少なくなります。

益金不算入となる金額は、株式の保有割合や保有目的によって異なります。すべての受取配当金が一律に益金不算入となるわけではないため注意してください。

なぜ受取配当金は益金不算入なのか

受取配当金が益金不算入になる理由は、「二重課税の排除」にあります。

配当金というものは、そもそも配当を支払う会社が法人税を支払った後に残った利益から株主へと分配されるものです。

たとえばY社が1,000万円の利益を上げ、300万円の法人税を支払ったとしましょう。残った700万円の中から株主であるX社に100万円の配当を渡し、X社がこの100万円の配当金に対してさらに法人税を支払わなければならないとすると、同じ利益に対して2度も法人税金が課されることになります。

この問題を解決するために、益金不算入の制度が設けられています。払い過ぎた法人税の還付金なども同様に扱います。

ただし、すべての配当に関して完全に益金への算入を排除する必要があるかというと、そうではありません。「企業支配を目的とした株式保有」と「単純な投資目的の株式保有」とでは、二重課税排除の必要性が異なることから、保有割合に応じて益金不算入の割合も設定されています。

受取配当等の益金不算入の方法

受取配当金の処理を行うときは、次のように株式の保有割合に応じて4つの区分に分け、それぞれで異なる不算入割合を適用します。

受取配当等の区分とそれぞれの不算入割合
完全子法人株式等 (100%の保有)・配当を支払う会社の株式を100%保有しているケース。親会社が子会社を完全にコントロールしたい場合などでこの形になる。
・受取配当金の全額が益金不算入
・完全に支配している子会社からの配当であり、実質的に同一組織内の資金移動と考えられるため
関連法人株式等 (1/3超~100%未満の保有)・株式保有割合が1/3を超えているケース。完全親会社ほどではないが、特定の会社に対して特に大きな影響力を行使したい場面でこの形になる。複数の会社で協力して新たな事業を立ち上げた場合など。
・この区分でも基本的には受取配当金の全額が益金不算入であるが「負債利子控除」という調整計算が行われる
※負債利子控除:株式取得のための借入金の利息相当額を配当金から差し引いて益金不算入額を計算する仕組みのこと。
その他の株式等 (5%超~1/3以下の保有)・株式保有割合が5%を超え1/3以下のケース。将来的に子会社化を検討している、将来的により取引関係を深めていきたいと考えている、などさまざまなニーズが考えられる。
・受取配当金の「50%」が益金不算入
・この区分は、ある程度の関係はあるものの、完全な支配関係にはない投資を想定している
非支配目的株式等 (5%以下の保有)・株式保有割合が5%以下のケース。配当金や株価上昇による利益を求めて、上場企業などに投資するときこの形になる。経営への関与などは考えておらず、単なる資産運用の一環。
・受取配当金の「20%」のみが益金不算入
・投資目的での株式保有と考えられるため、二重課税排除の必要性も限定的に考えられている

実務上の注意点

受取配当金等について益金不算入とする場合、正しい区分判定をするよう注意してください。たとえば「非支配目的株式等」であるにも関わらず「その他株式等」として計算してしまうなどのミスが起こらないようにしましょう。本来20%の不算入割合であるべきものを50%の割合で適用してしまうと、税額に大きな差が生じてしまいます。
そのため、保有割合を確認するだけでなく、完全子法人株式等→関連法人株式等→非支配目的株式等、とそれぞれの該当性をまずは判定していき、いずれにも該当しない場合にのみその他の株式等の区分に該当するものと判定すべきです。

また、関連法人株式等の区分にあたるときは「負債利子控除」に注意してください。この控除制度の趣旨は、株式から生じた配当金は益金に不算入とするのに対し、株式取得のための借入金の支払利息が損金に算入されることとのバランスを取ることにあります。
借金をして株式を買えば、その配当金が全額非課税になるという不合理を防ぐための仕組みです。負債利子控除の計算は複雑ですのでミスしないよう注意し、できれば税理士に対応を任せましょう。

インボイス制度とは何か|仕組みの大枠や事業者への影響についてわかりやすく解説

インボイスに関して、取引先から「登録しているか」と聞かれたり、請求書の書き方を変えるよう求められたりして、戸惑った方も多いのではないでしょうか。
「消費税やインボイスの制度についてよくわかっていない」という方に向けて、この記事では大枠が掴めるよう、わかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてください。

インボイスとは所定の形式を備えた請求書のこと

消費税は商品やサービスを購入した消費者が負担するものですが、実際に納付をするのは事業者です。その際事業者は、売上に含まれた消費税から仕入れや経費に含まれる消費税を差し引いた金額を納めます。

この差し引く処理を「仕入税額控除」といいます。

ただ、この仕入税額控除を行うには、原則としてインボイスの保存が欠かせません。このルールがインボイス制度(適格請求書等保存方式)として、2023年10月に導入されたのです。

そしてインボイスとは「売り手が買い手に対して、適用税率や消費税額などを正確に伝えるための請求書」であり、定められた一定の情報が明記されていなければなりません。
インボイスのない(請求書がインボイスとしての形式を持たない場合も含む)仕入れや経費については、一定の経過措置や例外的な取引を除き、仕入税額控除を受けることができません。

インボイスに記載しなければならない項目

インボイスとして成立するには、以下の事項が記載されていなければなりません。

  • 事業者の名称(または氏名)および登録番号
  • 取引があった年月日
  • 取引の内容(軽減税率の対象についてはその旨も)
  • 税率別で合計した対価の額や適用税率
  • 税率別の消費税の額
  • 書類の交付を受ける事業者の名称(または氏名)

※小売業・タクシー業など不特定多数への販売を行う事業では、宛名の記載などを省略した「簡易インボイス」を交付することも認められている。

「登録番号」とは、税務署長の登録を受けた事業者だけに付与される番号のことです。つまり、この登録なしにインボイスを発行することはできません。

インボイスの発行に必要な登録について

インボイスの発行を行うには、事前に税務署長に対し「インボイス発行事業者」としての登録申請を行わなければなりません。

その手続き後、登録を受けると税務署から登録番号が通知されます。その番号を請求書に記載することで、取引先が仕入税額控除を適用できるようになります。

登録するかどうかは事業者の任意です。ただし、登録することで消費税の課税事業者となり、申告および納付の義務が生じます。これまで消費税が免除されてきた事業者(課税売上高1,000万円以下など)も、登録後は消費税の申告が必要になることを覚えておきましょう。

また、免税事業者が登録すると、登録日から2年を経過する日が属する課税期間の末日までは、原則として免税の状態へと戻すことはできません。この点にもご注意ください。

課税事業者と免税事業者で変わる対応

同制度への対応や影響に関しては、課税・免税の違いによって次のように異なります。

課税事業者免税事業者
インボイスの発行登録すれば発行できる登録しない限り発行できない
取引先への影響原則として影響なし取引先が仕入税額控除を受けられない可能性がある
登録後の変化消費税の申告・納付義務については変わらない新たに課税事業者となり、消費税の負担が発生する

免税事業者が登録をしないままでいると、取引先は原則としてその取引について仕入税額控除を受けられなくなります。

そのため自身に直接的な影響はなくても、結果として、取引先から価格の見直しを求められたり取引終了を求められたりする可能性は出てきてしまいます。

一方で、売上先が消費者のケース・免税事業者のケースなどでは、相手方がインボイスを必要としないため、取引への実害も生じにくいでしょう。

登録の要否は、取引先の状況も確認しながら判断することが大切です。

負担を和らげる経過措置や特例もチェック

制度への急激な移行に配慮し、複数の経過措置と特例が設けられています。

一つに、免税事業者からの仕入れで「インボイスがなくても一定の割合で仕入税額控除ができる」という経過措置が設けられています。
※制度開始後8年間にわたって段階的に控除割合が引き下げられ、令和13年10月1日以降は控除が受けられなくなる予定。

また、免税されていた事業者が新たに登録をした場合、「納税額を売上に係る消費税の2割に抑える」という特例もあります。
※令和8年9月30日の属する課税期間まで適用可能。

さらに、課税売上高5,000万円以下なら「実際の仕入金額に関係なく業種ごとの一定の割合で消費税を計算できる」という制度の選択も可能となっています。
※事前の届出が必要。

税理士に確認してもらいながら、どの仕組みが利用できるのか、どう対応すると良いのか慎重に判断を進めましょう。

減価償却費について|定額法・定率法による計算や償却方法の選定手続きとは

減価償却費の適切な計算・計上は、企業の税負担軽減や正確な利益を把握するために重要な処理です。耐用年数に応じて取得価額を分割し、償却していきますが、そのときの計算方法には定額法と定率法の2つがあり、所定の手続きにより選択をすることができます。
これら減価償却費に関する基本をここで解説していますので、ぜひご一読ください。

減価償却費計算のポイントは「耐用年数」

減価償却費を計算するときにポイントとなるのは、当該減価償却資産の「耐用年数」の長さです。
まずはどのような資産が減価償却の対象となるのか、そしてその資産についてあらかじめ設定されている耐用年数を確認しておきましょう。

減価償却の対象となる資産

減価償却の対象になる資産は、以下の条件を満たすものです。

  • 業務で利用をする
  • 時間が経過することで価値が減少していく性質のもの
  • 1年以上の使用が可能であるもの
  • 取得価額が10万円以上のもの

また、減価償却資産は大きく「有形減価償却資産」と「無形減価償却資産」の2つに分類することができます。

  1. 有形減価償却資産(物理的な形態を持つもの)
    ・建物
    ・工場
    ・設備
    ・車両
    ・ブロック塀などの構築物
    ・機械装置
    ・パソコン など
  2. 無形減価償却資産(物理的な形態を持たないもの)
    ・ソフトウェア
    ・特許権
    ・意匠権
    ・商標権 など

一方で、土地については経年による劣化はありませんし、建設中の資産、書画や骨董などについても非減価償却資産として扱われます。

財産の種類別の耐用年数

減価償却資産のうち「建物」については、耐用年数20年~40年で設定されているものが比較的多いです。

《 建物の耐用年数の例 》

  • 木造の場合
    • 事業所・・・24年
    • 店舗や住宅・・・22年
    • 飲食店・・・20年
    • 工場や倉庫・・・15年
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の場合
    • 事業所・・・50年
    • 店舗・・・39年
    • 住宅・・・47年
    • 工場や倉庫・・・38年

建物のほか、工具や器具・備品、車両・運搬具、機械・装置なども、構造や用途に応じて細かく耐用年数が設定されています。国税庁が主な減価償却資産について耐用年数を公表していますので、こちらの資料を参考にすると良いでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

減価償却費の2つの計算方法

減価償却費を計算する方法には「定額法」と「定率法」があります。この2つの計算方法を紹介します。

定額法:毎年定額の計上

定額法は、減価償却資産の「取得価額」に、その償却費の額が毎年同じとなるように当該資産の耐用年数に応じた「償却率」を乗じて計算した金額を、各年分の償却費の額として償却します。
算式は次のとおりです。

なお、耐用年数経過時点において1円まで償却することとされています。

(定額法)
償却費の額 = 取得価額×定額法の償却率

※年の中途から事業用に使い始めた場合は、[本年中に事業に使用していた月数/12]を乗じて算出する。

「定額法の償却率」についてはこちらの償却率等表から確認が取れます。耐用年数5年なら0.200、10年なら0.100、30年なら0.034、50年なら0.020です。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

定率法:初年度に近いほど大きく計上

定率法は、減価償却資産の「取得価額(2年目以後の年分については、取得価額から償却費の累積額を控除した金額を指す未償却残高)」に、その償却費の額が毎年一定割合で逓減するよう耐用年数に対応する「償却率」を乗じて算出した額(調整前償却額)を、各年分の償却費の額として償却します。
算式は次のとおりです。

(定率法 1/2)
償却費の額 = 期首未償却残高×定率法の償却率

※年の中途から事業用に使い始めた場合は、[本年中に事業に使用していた月数/12]を乗じて算出する。

ただし、①調整前償却額(上の算式を用いて算出される償却額)と②償却保証額(取得価額に保証率を乗じて算出される金額)を比較し、①<②となってからは計算方法が変わり、次の算式を用いることとされています。
※①の金額は年々減少していくため、いずれ②の金額を下回る。
※保証率についても償却率と同じくこちらの表から確認可能。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

(定率法 2/2)
償却費の額 = 改定取得価額×改定償却率

※改定取得価額とは、最初に①<②となった年の期首未償却残高。
※改定償却率とは、改定取得価額に対し、償却費の額がその後毎年同じとなるよう耐用年数に対応した割合。保証率や償却率同様のこちらの表から確認可能。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

定額法と定率法どちらで計算すべきか

基本的に建物や建物附属設備、構築物に関しては定額法により計算を行いますが、法人に関してはその他の減価償却資産も含め償却方法を選択することができます。

償却方法の選定にあたっては、こちらの「減価償却資産の償却方法の届出書」を作成して所轄の税務署に提出しましょう。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/083-1.pdf

そして、いったん選定した償却方法を変更するのなら、こちらの「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を作成して所轄の税務署に提出します。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/tt087.pdf

どの償却方法を選択するべきか、また届出に関しての疑問があるときは税理士にご相談ください。

法人にできる基本的な節税対策をチェック

法人税の負担を適切に抑えることは、企業の資金繰り改善につながり、間接的には事業の成長にもつながります。しかし税制の仕組みは複雑で、何をすればいいのか、何をしてはいけないのかがわからない方も多いのではないでしょうか。当記事では税の専門知識がない方でも理解できるよう、わかりやすく節税対策の基本を紹介していきます。

経費として認められる支出を見直す

節税について考えるときはまず、事業に必要な支出を適切に経費として計上することを意識しましょう。経費が増えれば利益が減り、結果として法人税の負担も軽くなります。

ただし、何でも経費にできるわけではありません。税務上、経費として認められるには「事業を行うために必要な支出」であることが前提です。

判断が難しいものもありますが、たとえば以下の支出については経費計上も可能であるため要チェックです。

  • 業務で使用する車両の維持費やガソリン代
  • 取引先への手土産や贈答品
  • 従業員の福利厚生にかかる費用
  • 事業に関連するセミナーや書籍の購入費 など

適切に経費計上することで、無駄な税負担を避けることができます。ただし、プライベートと事業の両方で使用するものは、事業用途の割合だけを経費にする按分の考え方が必要です。

※按分の割合については、合理的な基準によること。そして記録(面積・使用時間・走行距離など)の裏付けが必要。

減価償却を活用した資産購入のタイミングを検討

設備投資や車両購入などの高額な資産を取得した際、その代金は一度に経費になるわけではありません。数年に分けて経費化していく「減価償却」が必要です。

この仕組みも踏まえて、戦略的に節税対策に取り組むことが大切です。

ただ「中小企業が30万円未満の資産を購入した場合」であれば、一気に全額経費にすることも可能です。同制度を使えば、PCや小型の機械設備などを購入した際、通常なら数年かけて経費化するところを、その年のうちに全額を経費として処理できます。年間の上限は300万円までですが、利益が出そうな年に設備投資を行うことで、効果的な節税につながります。

※中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm

また、予想以上に利益が出ることがわかったとき、決算前に必要な設備を前倒しで購入するというやり方もあります。不要なものを無理に買うのは本末転倒ですが、購入するタイミングを調整するだけで節税効果を高められることもあると知っておきましょう。

役員報酬の設定を工夫

役員報酬は会社の経費になる一方で、受け取る個人には所得税がかかります。そこで会社と個人のトータルでの税負担を考えながら、適切な金額を設定するよう工夫しましょう。

ただし、役員報酬を経費として認めてもらうには原則として毎月同じ金額を支払う「定期同額給与」にする必要があります。期中に変更すると、変更部分が経費として認められなくなる可能性があるため注意してください。

役員に対する賞与に関しても、事前に税務署へ届け出た場合のみ経費になります。届出をせずに支払った賞与は経費にならず、会社側の税負担が増えてしまいますのでこの点も注意しましょう。

退職金制度等の活用

将来の退職金や将来資金の準備に役立つ制度を利用することで、毎年の掛金を経費にしながら節税することもできます。ある年の節税だけでなく、従業員の福利厚生の充実や経営者自身の将来設計にも役立つでしょう。

代表的なものに、従業員向けの「中小企業退職金共済(中退共)」、経営者個人の退職金準備に使える「小規模企業共済」などがあります。

また、取引先倒産に備える制度として「経営セーフティ共済」もあり、こちらも掛金が損金算入できるため節税対策の選択肢として検討する価値はあります。

欠損金の繰越控除

赤字が出た年があるなら、その損失を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺することが可能です。

青色申告書を提出している法人であれば原則として最長10年間繰り越すことができ、中小企業(資本金1億円以下の法人など)なら、その年度の所得金額の100%まで欠損金で相殺できます。

税額控除を受けられる投資の検討

投資につながる一定の支出(設備購入や雇用など)に関して、法人税額から直接差し引ける税額控除の仕組みもあります。

経費として利益を減らす方法とは異なり、算出された税額そのものを減らすことができ、高い節税効果を得やすくなっています。

例として「賃上げ促進税制」が挙げられます。従業員の給与をアップした企業に対する税制優遇の制度で、給与の増加率に応じて一定割合を税額控除できます。人材獲得、従業員の士気向上と同時に節税を実現という利点があります。

また、機械装置などの設備投資について取得価額の一定割合を法人税額から控除できる「中小企業投資促進税制」もあります。

このように、節税効果は特定の制度を知っているかどうか・利用するかどうかで変わってきます。税負担に大きな差が生まれることもあるため、税制への広い知識を持つこと、または税理士に相談して対策を検討してもらうことをおすすめします。

赤字を無駄にしない「繰越欠損金」の制度をわかりやすく解説

赤字の計上は本来好ましくない状況ですが、その損失は無駄になるわけではありません。税務上、赤字となった年度の欠損金は繰り越すことが認められています。この制度で翌年度以降に出た黒字と相殺し、税負担を軽減するため、適用方法や適用条件をチェックしていきましょう。

欠損金を繰り越して黒字と相殺できる

ある事業年度で発生した税務上の赤字(欠損金)は、将来の黒字年度に繰り越して課税所得から差し引くことができます。この制度に基づいて繰り越す赤字のことを「繰越欠損金」と呼んでいます。

たとえば、立ち上げの初年度に400万円の赤字を計上した会社があるとしましょう。その翌年には150万円の黒字を出したとします。通常であれば150万円に対して法人税が課税されるのですが、初年度の繰越欠損金の活用で前年の赤字400万円のうち150万円分を相殺でき、課税所得をゼロとできるのです。その結果、法人税の支払いも不要になります。

原則として会社に生じる税は年度ごとで精算されるのですが、同制度があることにより、業績の好不調の波も考慮した長期的な視点で税負担を平滑化できるようになっています。

繰越欠損金の適用ルール

繰越欠損金を正しく活用するには、①適用期間、②控除限度額の2つの重要なルールを理解する必要があります。

適用可能な期間について

欠損金を繰り越すことができる期間には制限があり、次のように欠損金が発生した時期によって異なることに注意してください。

欠損金が発生年度繰越可能な期間
2018年3月31日以前の年度9年間
2018年4月1日以降の年度10年間

もし、2017年4月~翌年3月までを事業年度としており赤字が生じた場合、当該年度における欠損金は9年先までが繰り越しの限度となります。これに対し2018年4月以降、たとえば2025年に発生した赤字については10年先まで繰り越すことが可能です。

なお、複数年度で赤字になったときは古い事業年度の欠損金から優先的に消化します。近い順に消化する仕組みにはなっていないため、古い方の欠損金が無駄になってしまうリスクを心配する必要はないでしょう。

控除限度額について

繰越欠損金をどの程度適用できるか、限度額については事業者の規模によって異なります。

  • 中小法人等の場合  :その年度の所得金額の100%まで控除可能
  • 中小法人等以外の場合:その年度の所得金額の50%まで控除可能
    ※平成30年4月1日以降の年度の場合に50%。それ以前については最大80%まで段階的に限度が設定されている。

同制度上の「中小法人等」に該当するかどうかは、主に資本金に着目して判定します。

当期末において資本金または出資金が1億円以下であるなら、基本的には中小法人等に該当します。ただし、資本金等が5億円を超える大法人と完全支配関係にある場合などには自社も中小法人等に該当しなくなり、限度額に制限がかかります。

繰越控除では青色申告が必須条件

繰越欠損金制度を活用するには、欠損金が生じた年度における「青色申告による確定申告書の提出」が欠かせません。白色申告だと同制度は利用できません。

そこで、繰越控除の適用に先立って青色申告の承認を受ける必要があります。「青色申告の承認申請書」を税務署へ提出する手続きを済ませておきましょう。

※新設法人なら設立から3ヶ月以内、既存法人なら事業年度開始日の前日までに提出。

また、青色申告の承認を前提として、その後継続的に税務申告を行っていなくてはなりません。少なくとも欠損金が発生した年度以降、継続して申告書を提出していることが確認できなければ、当該年度における欠損金を繰り越すことは認められません。業績不振で法人税額がゼロであっても、必ず期限内に申告書を提出しましょう。

個人事業主ができる節税対策とは?3つの手法と注意点を解説

個人事業主として事業を営む方にとって税金対策は、利益を少しでも多く手元に残すための戦略として大きな意味を持ちます。適切な節税対策を実践すれば納税額は合法的に抑えることができ、事業の安定・成長に必要な資金を確保することができるでしょう。

当記事ではそんな節税対策に取り組む際の大きな柱3つと、それぞれで注意すべき点について解説していますので、ぜひ参考にしてください。

手法①青色申告の選択を検討

確定申告は原則的方法にあたる「白色申告」と、任意で選択可能な「青色申告」の2パターンがあります。

白色申告の方が手続きは簡素ですが、青色申告の方が税制上の優遇措置を多く受けられるようになっています。

青色申告者が使える主な制度節税効果
青色申告特別控除最大65万円(e-Taxで提出または電子帳簿保存を行う場合)の所得控除が可能。
家族に対する給与の経費計上青色事業専従者給与として適正な給与を支払うことで経費計上が可能。ただし業務内容と給与額が見合ったものでなければならない。
赤字の繰越控除事業で発生した赤字を最長3年間繰り越して、翌年以降の黒字から相殺することが可能。

本格的な事業活動に取り組んでいる方は、青色申告の選択をおすすめします。

経理業務の負担が増すことに注意

青色申告を選択すると複式簿記による記帳が必要となるなど、経理業務の負担が増えることを覚悟しなければなりません。

日々の取引を正確に記録し、帳簿を作成・保存する義務があるため、経理知識がない方にとってははじめ大きな負担に感じるかもしれません。また、青色申告を行うためには事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があり、新規開業の場合は開業から2ヶ月以内、すでに事業を行っている場合は適用したい年の3月15日までに提出しなければならないため、期限にも注意が必要です。

とはいえ経理業務をすべて事業主自身で対応する必要はありませんので、経理担当者を雇うか記帳業務をアウトソーシングする、あるいは顧問税理士に記帳から申告までを依頼することでこの問題も解決することができるでしょう。

手法②控除制度の有効活用

節税効果を高めるため、税所得を小さくするための所得控除、納税額を小さくするための税額控除の仕組みも有効活用しましょう。

所得控除については、次のように多くの仕組みが用意されています。

所得控除の種類控除が認められるケース
雑損控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族が損害を受けた場合に適用できる。
医療費控除または
セルフメディケーション税制
・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族にかかる医療費を一定額以上、本人が支払った場合に適用できる。
・医療費控除ではなく、健康の維持や疾病予防のための取り組みに対して適用できる「セルフメディケーション税制」へ任意で切り替えることもできる。
社会保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族にかかる健康保険料や年金保険料などの金額を控除する。
小規模企業共済等掛金控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・個人型年金(iDeCo)の掛金などについて、その全額を所得から差し引く。
生命保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族が受取人となる生命保険料や個人年金保険料、介護医療保険料などの一部を所得から差し引く。
地震保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族の資産に対する地震保険料を一部所得から差し引く。
寄附金控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・国や自治体、一定の公益法人に対する寄附金の一部を所得から差し引く。
基礎控除・支出とは関係なく人的要件による。
・本人の所得が2,500万円以下なら、16万円から最大48万円を所得から差し引くことができる。
配偶者控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者の所得が48万円以下なら、13万円から最大38万円を所得から差し引くことができる。
配偶者特別控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者の所得が133万円以下なら、最大38万円を所得から差し引くことができる。
扶養控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者以外の親族(16歳以上)がいるとき、基本的には38万円、最大で58万円を所得から差し引くことができる。
障害者控除・支出とは関係なく人的要件による。 ・本人や配偶者、親族が障害者、または特別障害者であるとき、1人あたり27万円(特別障害者は1人あたり40万円)を所得から差し引くことができる。
寡婦控除・支出とは関係なく人的要件による。
・夫と死別している、または夫と離婚をしており扶養親族がいる場合であって所得が500万円以下なら、27万円を所得から差し引くことができる。
ひとり親控除・支出とは関係なく人的要件による。
・事実上の婚姻関係にもなく、所得500万円以下のひとり親に該当するとき、35万円を所得から差し引くことができる。
勤労学生控除・支出とは関係なく人的要件による。
・児童や学校の生徒、職業訓練生などであって所得が75万円以下の勤労学生であれば、27万円を所得から差し引くことができる。

さらに、税額控除にも「配当控除」「住宅ローン控除」「外国税額控除」などさまざまな制度が用意されています。使えそうな控除制度があるなら有効活用して課税所得または所得税額を下げると良いでしょう。

控除上限額や適用条件に注意

これらの控除制度を活用する際には、それぞれに設定されている控除上限額や適用条件を正確に把握しておく必要があります。

たとえば所得控除において支出に対応する控除が認められる場合でも、その全額が控除できるとは限りません。iDeCoを使った場合でも控除可能な額の上限が設けられていますし、医療費控除についても年間10万円を超えなければ控除ができません。

このように各種制度で独自のルールが設けられているため、税理士にも相談しながら上手く適用させていかないといけません。

手法③経費計上による節税

売上が大きくても、経費の占める割合が大きければ課税所得は小さくなり、所得税の負担は小さくなります。そのため個人事業主として活動するなら支出した経費一つひとつについて証憑を残しておくなど、きちんと管理し、適切に経費計上をしていきましょう。

仕入にかかった費用などはわかりやすい支出ですが、ほかにも家賃や通信費、交通費、消耗品費など、さまざまな支出を経費として計上できます。もし自宅を事業所としても兼用している場合、その家賃についても家事按分して「事業のために使った部分」については経費計上可能です。自宅で発生している通信費についても同様に考えることができます。

プライベートの支出を計上しないよう注意

個人事業主の場合、事業での支出とプライベートでの支出の線引きがあいまいになるケースがあります。たとえば自宅兼事業所として使っている場合の家賃や通信費については「どこまでを経費にしていいのか」という問題が生じます。

このときは事業で使っている部屋の面積に応じて按分するなど、税務署から質問を受けたときに、正当性があることを説得的に説明できる形で計上すべきです。純粋にプライベートで生じた支出を経費として計上することは脱税行為となるため絶対に避けなければなりません。

初めて従業者を雇用するときに必要な手続きとその留意点

従業員を雇用するときはさまざまな手続きが必要になるとともに、労働法にも留意しなくてはなりません。

ここでは従業員を雇ったことがない事業者の方に向けて簡単に全体像を紹介しておりますので、初めての雇用を検討している方はぜひチェックしておいてください。

雇用までの手続き

従業員を雇用するならまずは従業員の募集をかけ、応募をしてきた方との面談等を通して選考を行いましょう。採用することが決まればその方と雇用契約を締結することになりますが、その際「労働条件通知書の交付」は法令上欠かすことができません。

労働条件通知書とは、その名のとおり所定の労働条件について通知するための文書です。雇用契約書とは別物ですが、雇用契約書と労働条件通知書は兼ねて作成することができますのであえて別個に作成する必要がないのなら兼用すると良いでしょう。

労働条件通知書の交付にあたっては記載内容に注意してください。法令上絶対に記載しないといけない事項がありますので、漏れがないことを入念にチェックしてから交付しましょう。記載しないといけないのは以下の事項です。

  • 労働契約の期間
    ※有期労働契約の場合は更新基準、更新上限の有無、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件についても言及。
  • 就業場所と従事すべき業務
    ※それらの変更の範囲も。
  • 始業・終業の時刻
    ※所定労働時間を超える労働の有無や休憩時間、休日、休暇も含む。
  • 賃金の決定、計算、支払方法、昇給の有無
    ※退職手当、臨時に支払われる賃金は除く。
  • 退職に関する事項
    ※解雇の事由含む。
※労働条件通知書に関するトラブル
・労働条件通知書交付の義務を怠った場合は、罰金30万円が科されるおそれがある。 ・事実と異なる労働条件を記載していた場合、従業員は雇用契約成立後でも即座に契約を終了することができる。転居が必要になる場合はそのための費用も使用者側の負担となる。

社会保険加入の手続き

従業員を雇用するとなれば社会保険の加入手続きも欠かせません。

そして社会保険には、①労災保険と②雇用保険、③健康保険と④厚生年金の4種類があります。

※①と②をまとめたものを労働保険、③と④をまとめたものを(狭義の)社会保険と呼ぶ。

各社会保険の概要と必要な手続き等を以下に整理しましたのでご確認ください。

①労災保険について
概要・業務上の怪我や死亡に関する補償を目的とする。 ・保険料は全額使用者が負担する。 ・雇用形態などに関係なく全従業員に適用する。
必要な手続き・事業場を管轄する労働基準監督署で行う。 ・「労働保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を提出。 ・期限は保険関係成立の翌日から10日以内。
②雇用保険について
概要・従業員の失業や育児介護休業における生活保障を目的とする。 ・保険料は使用者と従業員で負担する。 ・週20時間以上の労働時間で、季節雇用ではなく継続的な雇用をする場合の従業員に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で行う。 ・雇用から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」、入社月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出。
③健康保険と④厚生年金について
概要・健康保険は業務外での傷病等に対する保険。 ・厚生年金は会社員向けの年金。 ・保険料は使用者と従業員で折半する。 ・フルタイムで働く従業員、または労働時間等について所定の要件を満たす短時間労働者に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する年金事務所で行う。 ・「新規適用届」と「資格取得届」、必要に応じて「被扶養者異動届」を提出。 ・期限は雇用または従業員が適用対象者となってから5日以内

会社負担も発生する

各種保険料については会社が負担すべき部分もありますので、その負担も考慮したうえで計画的に雇用を行うようにしてください。

目安は従業員に支払う給与の約15%といわれており、そのうち大きな割合を占めているのが厚生年金保険料と健康保険料です。厚生年金保険料は給与の10%弱、健康保険料は給与の5%弱が会社負担とされており、これに労災保険料や雇用保険料等の負担も合計されます。

そこで金額のイメージは、ざっくりと次のようにまとめることができます。

  • 給与20万円の従業員を雇用・・・会社負担額は3万円程度
  • 給与30万円の従業員を雇用・・・会社負担額は5万円程度
  • 給与40万円の従業員を雇用・・・会社負担額は6万円程度

※従業員の年齢、事業の種類によって負担割合は若干変動することに注意。

いったん雇用したあとで給与を下げることは法的に難しいですし、雇用時に相手方の同意があっても最低賃金を下回ることはできません。

雇用後も継続的に事務手続きが必要

従業員に関する税務も発生します。所得税に関して毎月の給与支払時に源泉徴収の必要が生じるとともに、毎年年末調整の作業も発生します。また、源泉徴収を行うことになるため、「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」を従業員から提出してもらい、その内容に沿って給与から控除すべき所得税額を算出します。

また、法定三帳簿と呼ばれる「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」の作成および保存の義務も課されます。賃金台帳とは給与の支払いを記録したもの、労働者名簿とは従業員の個人情報や入退社の日付などを記録したもの、出勤簿とは勤務時間や日数などを記録したものを指します。
さらに従業員へ付与される有給休暇を管理するための「有給休暇管理簿」も作成しないといけませんし、雇用に関するその他さまざまな書類も作成後は一定期間保管しないといけないなど、法律によりさまざまなルールが課されているのです。 従業員を雇いはじめた当初の手続き以外に、継続的な事務の負担が発生することも認識しておかないといけません。「労働力を獲得して給与を支払う」という単純な問題と捉えず、労働者を保護するための各種ルールが強制的に適用されること、事務的な負担も多く発生することを認識のうえ、雇用すべきかどうかを決断すべきです。

事務手続きは煩雑ですが、事業をスケールするには従業員の働きも必要です。初めての雇用にあたっては弁護士や社会保険労務士等の専門家にもご相談の上で進めていただければと思います。

売上の帰属時期について分かりやすく解説

取引先から入金があった日に売上として計上するのか、それとも商品を納品した日に計上するのか、適切な会計処理を行うには売上の帰属時期についてのルールを知っておく必要があります。ここでは、売上の帰属時期の具体的な判定基準について分かりやすく解説します。

売上の帰属時期とは

売上の帰属時期、取引による収益(売上)を会計上いつ生じたものとして計上するのかは、会計上・税務上大きな意味を持ちます。これは、簡単にいうと「いつの時点でお金を稼いだと見なすか」というタイミングの問題です。

企業活動に伴いさまざまな取引が日々発生しますが、それらの売上をいつの時点で企業の収益として認識するかが財務諸表の作成や税金の計算にも影響するのです。そのためこのタイミングが適切に扱えていないと、会社の経営状態を正確に把握できなくなったり、税務上の問題が生じたりする可能性があるのです。

発生主義・現金主義・実現主義について

売上や費用の帰属時期を考えるうえで重要な考え方、「発生主義」と「現金主義」、そして「実現主義」があります。

発生主義とは、実際にお金の受け取りがあったかどうかに関わらず、サービスや商品を提供した時点や費用の発生する取引が「発生した時点」で計上する考え方です。費用を計上するときの原則的な考え方で、たとえば、3月に商品を購入し、代金の支払いが4月だった場合でも、3月の費用として計上します。

※個人事業主や小規模な企業では一定の条件下で現金主義による処理も認められる。

一方、現金主義とは実際にお金を受け取った時点で収益等を計上する考え方のことです。先ほどの例では、代金を支払った4月で費用を計上することになります。

これに対し実現主義は売上を計上するときの原則的な考え方で、商品やサービスの提供が完了して対価を受け取る「権利が確定した時点」を基準に収益を計上します。

売上を計上する時期の判断基準

会計上、売上を計上する時期は実現主義に従います。

ポイントは「いつ権利が確定したか」にあるため、実際にお金を受け取った時点ではないことに注意が必要です。資産の譲渡をした場合と役務の影響をした場合とで取り扱いが異なりますので、各パターンを見てみましょう。

資産の譲渡(物品販売等)の場合

資産の譲渡とは、簡単にいえば「モノを売ること」を指します。店舗で商品を売る、自社製品を納品する、会社の不動産を売却する、など形ある物を相手方へ渡して対価を得るタイプの取引が該当します。

そして資産の譲渡にあたる場合の売上の計上時期は、基本的に「モノを相手方へ渡した時点」となり、その考え方を「引渡基準」と呼んだりもします。

《 資産の譲渡が行われた場合の例 》

  • 店頭販売の場合・・・商品を顧客に手渡したとき(レジで精算した日)
  • ネット販売の場合・・・商品が顧客に届いたとき(配達完了日)
  • 工場から直送する場合・・・顧客の指定場所に納品された日
  • 固定資産の売却の場合・・・所有権移転登記が完了した日
  • 有価証券の売却の場合・・・約定日(取引が成立した日)

ただし、大型設備など、設置や調整等を要するモノに関してはその作業を行ったうえで相手方による検収が通常は行われます。製品や設備が正常に動作することを確認し、承認した時点で取引が完了したと評価します。この「検収基準」が採用されるケースもあることは留意しておきましょう。

役務の提供(サービス提供等)の場合

役務の提供とは、「サービスを提供すること」と言い換えることもできます。アドバイスをする、情報を提供する、荷物を運ぶ、など形のないサービスを提供して対価を得る取引が役務の提供に該当します。

この場合の売上の計上時期は、基本的に「サービスの提供が完了した時点」です。

《 役務の提供が行われた場合の例 》

  • コンサルティングの場合・・・報告書を提出して業務が完了した時点
  • 宿泊サービスの場合・・・宿泊が終了した時点
  • 運送サービスの場合・・・荷物が目的地に到着した時点
  • 修理サービスの場合・・・修理が完了して顧客が確認を済ませた時点

役務の提供においては、いつ履行義務が果たされたかがポイントになります。つまり、契約で約束したサービスがいつ完全に提供されたのかに着目します。

ただ、長期間にわたるプロジェクトの場合だとそのすべてが終わってからではなく、進捗度合いに応じて段階的に売上を計上することもあります。また、複数回にわたる役務提供においては、都度の提供を完了した時点で売上を計上したり、契約期間に応じて均等に計上したりする方法もあります。

売上計上に関する実務上の注意点

売上の計上に関しては、証憑類や帳簿を適切に管理すること、取引に関する契約書を作成しておくことに注意しましょう。

注文書、納品書、検収書、請求書などの書類を保管しておいて、後日でも商品の受け渡し日や相手方が商品等について承認をした日などが証明できるようにしておくべきです。また、契約書に納品条件や支払条件、サービス提供の範囲等を明記しておくことで売上時期の判断について客観的に示しやすくなります。

特に期末に近い取引では計上時期が決算の内容に影響するうえ、意図的に売上を前倒ししたり先送りしたりしていると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。計上時期について悩む場合は税理士に相談あるいは業務の代行を依頼することもご検討ください。