M&A、スタートアップ税務に強い税理士なら池袋の鷲津裕税理士事務所

投稿者アーカイブ 鷲津裕税理士事務所

売上の帰属時期について分かりやすく解説

取引先から入金があった日に売上として計上するのか、それとも商品を納品した日に計上するのか、適切な会計処理を行うには売上の帰属時期についてのルールを知っておく必要があります。ここでは、売上の帰属時期の具体的な判定基準について分かりやすく解説します。

売上の帰属時期とは

売上の帰属時期、取引による収益(売上)を会計上いつ生じたものとして計上するのかは、会計上・税務上大きな意味を持ちます。これは、簡単にいうと「いつの時点でお金を稼いだと見なすか」というタイミングの問題です。

企業活動に伴いさまざまな取引が日々発生しますが、それらの売上をいつの時点で企業の収益として認識するかが財務諸表の作成や税金の計算にも影響するのです。そのためこのタイミングが適切に扱えていないと、会社の経営状態を正確に把握できなくなったり、税務上の問題が生じたりする可能性があるのです。

発生主義・現金主義・実現主義について

売上や費用の帰属時期を考えるうえで重要な考え方、「発生主義」と「現金主義」、そして「実現主義」があります。

発生主義とは、実際にお金の受け取りがあったかどうかに関わらず、サービスや商品を提供した時点や費用の発生する取引が「発生した時点」で計上する考え方です。費用を計上するときの原則的な考え方で、たとえば、3月に商品を購入し、代金の支払いが4月だった場合でも、3月の費用として計上します。

※個人事業主や小規模な企業では一定の条件下で現金主義による処理も認められる。

一方、現金主義とは実際にお金を受け取った時点で収益等を計上する考え方のことです。先ほどの例では、代金を支払った4月で費用を計上することになります。

これに対し実現主義は売上を計上するときの原則的な考え方で、商品やサービスの提供が完了して対価を受け取る「権利が確定した時点」を基準に収益を計上します。

売上を計上する時期の判断基準

会計上、売上を計上する時期は実現主義に従います。

ポイントは「いつ権利が確定したか」にあるため、実際にお金を受け取った時点ではないことに注意が必要です。資産の譲渡をした場合と役務の影響をした場合とで取り扱いが異なりますので、各パターンを見てみましょう。

資産の譲渡(物品販売等)の場合

資産の譲渡とは、簡単にいえば「モノを売ること」を指します。店舗で商品を売る、自社製品を納品する、会社の不動産を売却する、など形ある物を相手方へ渡して対価を得るタイプの取引が該当します。

そして資産の譲渡にあたる場合の売上の計上時期は、基本的に「モノを相手方へ渡した時点」となり、その考え方を「引渡基準」と呼んだりもします。

《 資産の譲渡が行われた場合の例 》

  • 店頭販売の場合・・・商品を顧客に手渡したとき(レジで精算した日)
  • ネット販売の場合・・・商品が顧客に届いたとき(配達完了日)
  • 工場から直送する場合・・・顧客の指定場所に納品された日
  • 固定資産の売却の場合・・・所有権移転登記が完了した日
  • 有価証券の売却の場合・・・約定日(取引が成立した日)

ただし、大型設備など、設置や調整等を要するモノに関してはその作業を行ったうえで相手方による検収が通常は行われます。製品や設備が正常に動作することを確認し、承認した時点で取引が完了したと評価します。この「検収基準」が採用されるケースもあることは留意しておきましょう。

役務の提供(サービス提供等)の場合

役務の提供とは、「サービスを提供すること」と言い換えることもできます。アドバイスをする、情報を提供する、荷物を運ぶ、など形のないサービスを提供して対価を得る取引が役務の提供に該当します。

この場合の売上の計上時期は、基本的に「サービスの提供が完了した時点」です。

《 役務の提供が行われた場合の例 》

  • コンサルティングの場合・・・報告書を提出して業務が完了した時点
  • 宿泊サービスの場合・・・宿泊が終了した時点
  • 運送サービスの場合・・・荷物が目的地に到着した時点
  • 修理サービスの場合・・・修理が完了して顧客が確認を済ませた時点

役務の提供においては、いつ履行義務が果たされたかがポイントになります。つまり、契約で約束したサービスがいつ完全に提供されたのかに着目します。

ただ、長期間にわたるプロジェクトの場合だとそのすべてが終わってからではなく、進捗度合いに応じて段階的に売上を計上することもあります。また、複数回にわたる役務提供においては、都度の提供を完了した時点で売上を計上したり、契約期間に応じて均等に計上したりする方法もあります。

売上計上に関する実務上の注意点

売上の計上に関しては、証憑類や帳簿を適切に管理すること、取引に関する契約書を作成しておくことに注意しましょう。

注文書、納品書、検収書、請求書などの書類を保管しておいて、後日でも商品の受け渡し日や相手方が商品等について承認をした日などが証明できるようにしておくべきです。また、契約書に納品条件や支払条件、サービス提供の範囲等を明記しておくことで売上時期の判断について客観的に示しやすくなります。

特に期末に近い取引では計上時期が決算の内容に影響するうえ、意図的に売上を前倒ししたり先送りしたりしていると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。計上時期について悩む場合は税理士に相談あるいは業務の代行を依頼することもご検討ください。

消費税の課税対象と非課税対象について具体例を挙げて紹介

事業に取り組んでいる方にとって、消費税は無視できない重要な税目の1つです。よく理解しないまま処理していると正確な税額を把握できず、ご自身にとってもリスクがありますのでご注意ください。

まずは、何が課税対象で何が非課税なのかを把握しておきましょう。

消費税課税の基本的なルール

消費税は、すべての取引に発生するわけではありません。以下の4つが課税の条件です。

  • 日本国内で行う取引であること
    ※日本国外で行う取引は対象外。
  • 事業者が事業として行う取引であること
    ※個人事業者・法人が事業の一環として行う取引が対象で、個人的な譲渡や贈与は対象外。
  • 対価(代金)をもらって行う取引であること
    ※お金や何かの見返りをもらう取引が対象で、無料のサービス提供などは対象外。
  • 資産の売却、貸し出し、またはサービス提供のいずれかであること
    ※商品を売る、建物を貸す、サービスを提供するなどの取引が対象。

これらの条件を満たす取引のことを「課税取引」と呼びます。

課税対象と非課税対象の大きな違い

「消費税がかからない」という表現することもありますが、これを細かく見ると、「課税取引に該当しない取引(不課税取引)」と「課税取引に該当するが法律上課税しないと定められている取引(非課税取引)」が存在しています。

課税取引・売上に消費税がかかり、事業者が納税義務を負う
・ほとんどの商品やサービスの販売が対象
非課税取引・法律で「課税しない」と決められた取引で、消費税はかからない
・土地の売却や賃貸、医療、教育関連の取引など
不課税取引・そもそも消費税の対象にならない取引
・国外での販売、無料サービスなど

このような分類があることも知っておくと良いでしょう。

課税される取引例について

多くの取引には消費税が課税され、次のように例示できます。

  • 物品の販売
    (食料品、衣類、機械、建築材料など、商品を売った場合)
  • サービスの提供
    (美容院、運送業、飲食店、Webサイト制作など、サービスを提供した場合)
  • 建物・設備の賃貸
    (オフィスビル、工場などの建物や設備を貸した場合)
  • 建築・請負業
    (建物の建設や工事を請け負った場合)

なお、建物の賃貸のうち貸し出しの目的が「居住」のものについては課税対象の取引から除外されます。

課税されない取引例について

次に掲げる取引が、法律により「課税しない」と定められている非課税取引です。

  • 土地の売却・賃貸、居住用建物の賃貸などの不動産関連取引
  • 社会保険医療に基づく診療、介護保険サービス、社会福祉事業による福祉サービスなど
  • 学校の授業料、入学金、学校が行う教科書の譲渡など
  • 株式などの有価証券の譲渡や受取利息など

なお、取引内容が非課税かどうかは契約内容や実際の提供状況によって判断されます。

たとえば建物を貸すときに「住宅用」と契約していても、実際に事務所として使用されている場合は、消費税がかかる可能性があります。そのため契約書は実情を的確に反映して作成することも重要です。

これら非課税取引に対し、そもそも消費税の対象にならない不課税取引がこちらです。

  • 寄附金、無償でのサービス提供など対価性がない取引
  • 給与、配当金、保険金の受け取りなど事業取引ではないもの
  • 国外での商品販売、国外の会社への役務提供など

このほか、登記や許可など法律に基づく手数料についても不課税です。

課税事業者と免税事業者の違いも重要

消費税の負担に関しては、事業者のカテゴリも重要です。同じ取引を行っても、事業者によって負担が生じたり、反対に負担が生じなかったりします。

免税事業者「消費税の申告・納付義務が免除されている事業者」のこと。 前々年の課税売上高が1,000万円以下、かつ特定期間(個人は前年上半期、法人は前事業年度開始日から6ヶ月間)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円以下であれば免税される。 ※新設法人で資本金1,000万円以上などの場合は除く。 免税事業者は、消費税の申告手続きが不要。
課税事業者「消費税の申告・納付義務がある事業者」のこと。 上記免税事業者の条件を満たさない、もしくは適格請求書(インボイス)発行事業者として登録した場合に課税事業者となる。 課税事業者は、消費税の計算・申告・納付に対応しなければならない。

すべての取引、すべての事業者に消費税が課税されるわけではありません。ルールが複雑で税務処理に困ることもあるかと思いますが、事業者の義務として適切に対応していかなくてはなりません。

また、消費税は利益に対して課税される税金ではないため、赤字であっても納税が発生する可能性があり、スタートアップ企業においても注意が必要です。

消費税は注目度が高いため政治における争点になりやすく、今後も継続的に税制改正により変更される可能性が有りますので都度正しい情報を反映していく必要があります。

しかしながら、経理・税務業務にばかり時間を割くのは得策ではなく、専門的な内容については税理士に対応をお任せいただければと思います。正しい処理の方法、計算や申告に関するアドバイスや代行が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

税務上の優遇措置が受けられる「中小法人」や「中小企業者」とは?

法人税法や租税特別措置法では法人税に関するルールが規律されており、原則的なルールに加え、特定の会社に対する優遇措置についても定められています。措置の内容によって「中小法人」や「中小企業者」などと定義されており、それぞれ若干の違いがあります。

優遇措置の有無が会社の税負担を大きく左右することになるかもしれませんので、定義されている会社の区分を確認しておきましょう。

法人税課税の原則と例外

法人税に関する基本的なルールは法人税法という法律で定められています。そして法人税とは、会社などの法人が事業活動から得た利益に課される税金であり、一般的な税と同じく公平な課税を原則としています。
各社の状況、業績などに関わらず同じ基準で課税され、現在の基本税率は「23.20%」となっています。

しかし、現実の経済では企業の規模や経営状況によって担税力に大きな差があり、特に中小企業は大企業と比べて資金調達力が限られている、経営基盤が比較的脆弱である、景気変動の影響を受けやすい、などの特徴があります。

そこで例外的措置として中小企業を課税上優遇する制度がいくつか設けられているのです。この点において租税特別措置法が重要な役割を担っています。この法律は特定の政策目的の実現を果たすため各税の例外を定めており、たとえば「中小企業の支援」「特定産業の振興」「地域振興」などを目的にさまざまな特例的ルールを置いていて、これに伴い法人税に関する規定も置いてあります。

「資本金1億円以下」が基本的な条件

法人税法および租税特別措置法において税務上の優遇措置を受けるには、「中小法人」や「中小企業者」などの定義に当てはまらないといけません。

また、これらの定義も措置の内容に応じて差異があるため、各措置で定められている定義を確認していかないといけません。

ただ、多くの措置において共通する条件があり、それが「資本金1億円以下」という内容です。資本金の大きさに着目することでまずは会社を区分することができます。

法人税率の軽減措置に関わる「中小法人」

法人税の基本税率は「23.2%」ですが、「中小法人」に該当する会社に関しては2025年4月1日から2027年3月31日まで、年800万円以下の所得金額に対して「15%」の軽減税率を適用することが認められます(本則19%)。
※所得10億円超の中小法人については当該期間中、「17%」が適用されることに注意。

中小法人の定義は比較的シンプルで、以下を満たせば税務上の優遇措置が受けられます。

  • 資本金1億円以下の普通法人であること
  • 資本金5億円以上の法人と完全支配関係がないこと

なお、前3年間の平均所得が15億円を超える法人については適用除外事業者として「15%」ではなく「19%」が適用されます。

そこで中小法人に適用される税率を簡単に整理すると、下表のように区分することができます。

適用対象区分①区分②中小法人に適用される税率
~2027年3月2027年4月以降
年800万円超の部分23.20%
年800万円以下の部分適用除外事業者19%
上記に該当しない単年所得10億円超17%19%
上記に該当しない15%

欠損金の控除限度額に関わる「中小法人等」

欠損金の控除は、過去の赤字(欠損金)を将来の黒字から差し引くことを認める制度です。控除できる金額は当期所得の一定割合に制限されるのですが、「中小法人等」に該当する会社では控除前所得金額が控除限度額となります。

中小法人等と定義されていますが、「等」が付くのは前項で紹介した中小法人に加えて以下の組織も加わるためです。

  • 公益法人等
  • 協同組合等
  • 人格のない社団等

なお、これらの組織は資本金にかかわらず制限のない欠損金の控除が認められます。

貸倒引当金の損金算入に関わる「中小企業者等」

貸倒引当金は将来の貸倒れに備えて計上する引当金のことです。原則として貸倒引当金の損金算入は制限されていますが、「中小企業者等」に該当する会社に関しては一定の損金算入が認められています。

中小企業者等の基本的な要件は中小法人等とおおむね同じですが、公益法人等や人格のない社団等、協同組合等を除く中小法人から適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)を対象外としています。また、法定繰入率の適用において、相互会社と外国相互会社は対象外とするなど細かな規定があります。

交際費等の損金算入限度額に関わる「中小法人等」

交際費は原則として損金不算入ですが、「中小法人等」に該当する会社に関しては、年800万円までの損金算入が認められています。

この優遇措置における中小法人等の特色は、外国法人も対象となり得るという点にあり、より広い範囲の法人を対象としています。また、いくつかの措置では対象外とされている適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)でもこの措置に関しては適用を受けられます。

その他租税特別措置に関わる「中小企業者」

研究開発税制や設備投資促進税制など、さまざまな政策目的に基づく優遇措置がほかにもあります。これらの措置における「中小企業者」の定義はより厳格で、以下の点を考慮して判定する必要があります。

  • 資本金1億円以下
  • 従業員数1,000人以下
  • 大規模法人からの株式保有割合の制限

また、適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)に関してはこれらの措置が受けられません。

なお、税制は毎年のように改正が繰り返されていますので、詳細についてはその都度専門家も頼りながら確認することをお勧めします。

法人化のメリットとデメリット|個人事業主が知っておくべき判断基準

事業の成長に伴い、個人事業主から法人への移行、いわゆる「法人成り」の検討を始める方も少なくありません。

ただし法人化には多くのメリットがありますがデメリットも存在するため、慎重な判断が必要となります。当記事で法人化のメリット・デメリットを詳しく解説し、法人化を検討する際の判断基準を示していきますのでぜひ参考にしてください。

法人化のメリット

個人事業主から法人化することのメリットは次のようにまとめることができます。

  • 節税効果
  • 従業員に対する処遇
  • 信用力の強化
  • スムーズな事業承継

それぞれの詳細を確認していきます。

節税効果

法人化によるもっとも大きなメリットの1つが「節税効果」です。

まず個人事業主の場合、事業所得に対して所得税(最高45%)と住民税(約10%)が課されます。
一方の法人は、法人税(15%~23.2%)と住民税(約7%)が基本となります。

個々の状況により異なるため一概にはいえませんが、年収が1,000万円を超えるような場合だと法人化による節税効果が期待できるでしょう。

また、法人では以下のような税務上のメリットも得られます。

  • 役員報酬を経費として計上できる(ただし個人側で給与所得となります)
  • 赤字を最大10年間繰り越して控除できる
  • 多くの租税特別措置が活用できる
  • 経費計上の幅が広がる など

従業員に対する処遇

法人化により、従業員の福利厚生をより充実させることができます。このことは、優秀な人材の確保や定着率の向上につながるでしょう。

たとえば、国民年金に代えて厚生年金が適用されることにより従業員の将来の年金受給額は多くなりますし、障害年金や遺族年金に関しても国民年金に比べると手厚くなります。

また、経営者自身の社会保険もより充実される可能性がありますが、事業主負担の社会保険料が新たに発生することから、1人オーナー会社の場合等は総合的な検討が必要となります。

信用力の強化

法人化により対外的な信用力も向上します。

取引先に対する信用力が向上することで「大手企業との取引がしやすくなる」「契約締結時の優位性が向上する」「支払条件がより良くなる」などの可能性が上がるでしょう。

金融機関からの融資も受けやすくなったり融資条件が有利になったりすることも期待できます。

スムーズな事業承継

法人化は、事業承継をより円滑に進めるうえでも重要な意味を持ちます。

まず、株式会社化することで株式の移転が容易になります。事業の一部または全部を段階的に承継することが可能となり、後継者が徐々に経営に参画すること、経験を積みながら責任を増やしていくことが実現できるでしょう。
たとえば、初めは少数の株式を譲渡し、後継者を取締役に就任させるところから始め、段々と持株比率を増やしていくといったやり方が考えられます。

また、法人化は相続対策としても有効です。
自社株の評価方法を適切に選択することで、相続税の負担を軽減できる可能性がありますし、種類株式を活用することでより柔軟な権利設計が可能となります。これにより、経営権の確保と相続税対策を両立させることができるでしょう。

加えて、法人化により事業承継税制の適用も受けやすくなるというメリットも挙げられます。この制度を活用すれば、一定条件下で相続税・贈与税の納税が猶予または免除してもらえます。

法人化のデメリット・注意点

法人化により、経営者が負担しなければならない義務や責任も増加します。以下では、法人化に伴う主なデメリットと注意点について解説していきます。

コストの増加

個人事業主が法人化する際に直面する主要なデメリットの1つが「コストの増加」です。この増加は主に以下3つの側面から生じます。

  • 設立時のコスト
    • 法人を設立する際、個人事業主として開業する場合と比べて多くの費用が必要となる。
    • 株式会社の場合、登録免許税や定款認証費用などで、約22万円から25万円程度の費用が発生。
    • 合同会社の場合でも、約10万円から11万円の費用がかかる。
  • 運営にかかる継続的なコスト
    • 法人化後は個人事業主だと不要であったさまざまな継続的コストが発生する。
    • 特に従業員を雇用する場合、社会保険への加入が義務付けられ事業主負担分の支払いが必要となる。
  • 税金関連のコスト
    • 法人化により、税金面でも新たな負担が生じる可能性がある。
    • 法人住民税の均等割は、赤字決算の場合でも資本金や従業員数に応じて発生する。

これらのコスト増加は、事業の成長や収益性に大きな影響を与える可能性があります。法人化を検討する際は、これらのコストについても十分に考慮し、長期的な事業計画を立てることが重要です。また、法人化のメリットがこれらのコスト増加を上回るかどうかを慎重に検討する必要があります。

事務負担の増加

法人となることで、法人特有の手続きや義務が加わり、事務負担が増大することもあります。

たとえば「役員変更の登記」は法律上の義務として遂行しなければなりません。株式会社なら取締役や監査役の就任・退任・再任などの際にはその都度法務局で登記申請を行わないといけません。

さらに定期的な株主総会の開催も必要ですし、そのときの議事録の作成、また、決算公告も行う必要があります。

合同会社として設立すれば事務負担も株式会社より軽くすることができるものの、それでも個人事業主に比べるとより厳格な事務作業に対応しないといけません。

法人化の判断基準

法人化の決断は、事業の現状と将来の展望を総合的に考慮して行う必要があります。特に着目したいポイントはこちらです。

判断基準法人化を検討すべき状況
売上の規模年間利益が1,000万円を超える。 ※この金額はあくまで目安であり、業種や経費の構造によって最適な基準は異なる。
事業形態取引先が法人を好む業界、従業員雇用の予定がある、事業にリスクが伴う場合。 ※一方で、個人の専門性や技能に依存する業種では法人化のメリットは小さい。
将来の展望事業拡大を目指す、資金調達の必要性がある、事業承継を考えている場合。 ※広く資金や人材を集めようとしていない、現状維持で良いという場合には法人化のメリットは小さい。

これらの基準を参考にしつつ、自社の状況や業界の特性、長期的な事業計画を踏まえて法人化の判断を行うことが重要です。税理士などの専門家に相談してシミュレーションを行い、より適切な判断をサポートしてもらいましょう

改正のあった「交際費の損金不算入制度」について解説

会社の経営をしている方、経理業務に携わる方は、交際費の取り扱いにご注意ください。損金として算入できる範囲が限られていますし、また、法改正によってその運用方法が変わることもあります。

2024年度の税制改正でもルール変更があったため、その変更点も踏まえてここで「交際費の損金不算入制度」を解説します。

交際費の損金不算入制度改正の概要

「交際費の損金不算入制度」に関して令和6年度の税制改正で変わったのは、次に掲げる点です。

  • 「損金不算入の対象となる交際費」から除かれる飲食費の金額基準が「1人あたり5,000円以下」から「1人あたり10,000円以下」へと引き上げられた
    ※2024年4月1日以後の支出分から適用される。
  • 「飲食費の50%を損金算入できる特例」および「中小法人が年800万円まで交際費を損金算入できる特例」の適用期限が3年間延長された
    ※2027年3月31日まで適用可能。

交際費についての基本ルール

特例等について詳細を説明する前に、交際費の基本ルールを把握しておきましょう。

まず「交際費」についてですが、これは得意先などの取引先との接待にかかる費用やその際にかかる飲食費(接待飲食費と呼んだりもする。)、さらには接待後のタクシー費用。そして贈答にかかる中元歳暮代なども含んだ費用のことをいいます。

取引を成功させ、継続していくためなどに支出する重要な費用ですが、無制限に損金への参入を認めてしまうと納税額を下げるため不正に交際費が使われてしまうおそれがあります。そこで交際費に関しては「損金不算入制度」が設けられ、基本的には損金として計上することが認められていません。

飲食費は一定額交際費から除くことができる

交際費は損金に算入できないのが原則ですが、次に掲げる費用については「損金不算入の対象である交際費」から除かれます(つまり損金算入ができる)。

交際費から除かれるもの備考
社外の人との飲食にかかった費用であって「1人あたり1万円以下」の飲食費※改正あり
従業員の慰安目的で行う旅行や運動会などにかかる費用福利厚生費として処理
カレンダーなどの物品を贈与するための費用広告宣伝費として処理
会議に際して用意する弁当や茶菓、飲み物などにかかる費用会議費として処理
雑誌や新聞、放送番組のために開かれる座談会等の費用取材費として処理

飲食費については従来「1人あたり5,000円まで」を損金算入できる運用だったのですが、法改正によりこの基準額が「1人あたり1万円まで」に増額されています。

ただし、以下の情報が記載された証憑などを保存しておかないといけません。

  • 飲食があった年月日
  • 参加者の氏名や関係性、数
  • 飲食費の額
  • 飲食店の名前と所在地
  • その他飲食費であることがわかる書類

一定限度のもと損金算入は認められる

交際費の損金不算入制度では、法人の区分に応じて異なる措置が設けられています。資本金の大きさで区分されており、措置の内容については法改正の影響を受けていますのでご注意ください。

中小法人(資本金1億円以下)の場合

資本金の額が1億円以下の「中小法人」は、他の法人区分よりも次のように優遇されています。

中小法人の交際費の取り扱い
以下のAとBいずれかの金額から「損金不算入額」を選択できる。
  A:ある年度において発生した交際費の額-飲食費の50%
※この飲食費は「1人あたり1万円」の基準を超えた分の合計額を指す。
B:ある年度において発生した交際費の額-年800万円

上のAを選択する場合、まず飲食費について「1人あたり1万円以下」の部分を除き(損金算入)、この基準を超えた飲食費を合計します。さらにその合計額の50%は損金算入。残りの50%と飲食費以外の交際費が損金不算入となります。

Bを選ぶ場合もまずは飲食費について「1人あたり1万円以下」の部分を除きます(損金算入)。そして残りの飲食費を含む交際費をすべて合計したうえで、800万円を控除し(損金算入)、800万円超の部分が損金不算入となります。
Bの方は計算がシンプルで、また、中小法人のみが選択できる方法でもあります。

大法人(資本金100億円以下)の場合

資本金が1億円を超える大法人(ただし100億円は超えないこと)の場合でも特例措置は受けられますが、中小法人のように損金不算入額を選択することはできなくなります。

大法人(資本金の額1億円超、100億円以下)の交際費の取り扱い
以下の金額が「損金不算入額」。
  ある年度において発生した交際費の額-飲食費の50%
※この飲食費は「1人あたり1万円」の基準を超えた分の合計額を指す。

年800万円までの交際費を損金算入することはできず、飲食費の50%を差し引いて損金不算入額を計算します。

大法人(資本金100億円超)の場合

上で紹介したどの法人にも該当しない大法人では特例措置が使えず、その年度で支出した交際費のすべてが損金不算入額となります。

大法人(資本金の額100億円超)の交際費の取り扱い
ある年度において発生した交際費全額を損金不算入
※飲食費のうち「1人あたり1万円まで」の部分は除く。

ただし、飲食費「1人あたり1万円まで」は損金算入できますので、それを除いたすべての部分が損金不算入です。

法人税の計算方法|会計上の利益に対する税務調整や税率の適用について

法人のする事業活動により儲けが出たときは、法人税の負担も発生します。個人における所得税に対応するものですが、税負担の大きさや計算方法は異なります。

細かいことは税理士にお任せいただければと思いますが、おおよその負担や課税のされ方については知っておいた方が良いでしょう。

法人への課税の基本

税金を納める方法には①申告納税方式と②賦課課税方式の2つの方式が挙げられます。

  • 申告納税方式:納税義務者自身が税額の計算を行い、申告期限までに申告書を提出し、納付を行う方式
  • 賦課課税方式:課税庁が納付税額を具体的に納税義務者へ賦課する方式

法人税や消費税が①に該当し、固定資産税や不動産取得税等が②に該当します。

法人税に関しては「ある事業年度における会社の儲け(所得)に対して課される税金」であると説明ができます。そこで法人税の大きさを調べるには、まず儲けの大きさを正確に把握するところから始めなくてはなりません。

これはつまり「所得」の計算を意味します。会社が決算業務を通して作成した損益計算書の「当期利益」がベースとなりますが、この利益の大きさをそのまま使うことはできません。というのも、損益計算書においては“収益-費用=利益”という考え方をするのですが、税務上は“益金-損金=所得”という考え方をするためです。

収益と益金、費用と損金はそれぞれ共通する部分がとても多いですが、必ずしも一致するわけではありません。異なる部分が含まれていることもあるため、その分を調べて調整しないといけないのです。

法人税を計算する流れ

法人税については、会社の利益計算に加減の調整を行った上で、算出された法人の所得に対し税率を乗じ、納付額を把握することができます。そこで次のような流れに沿って計算を進めていきます。

  1. 企業会計に基づく利益を調べる
  2. 税務会計に基づく所得となるよう税務調整を行う
  3. 調整後の所得に税率を乗じて「法人税額」を算出

会計上の利益と税務上の所得のずれについて

企業の利益計算は、企業経営を前提にしています。そして簿記・会計の処理方法は、あらゆる企業で常に一致しているわけではありません。
これに対し法人税の所得計算は、納税の平等の立場に基づいて規定されています。納税義務者間に不平等が起こらないように配慮してルールが策定されているのです。

例えば減価償却費は、会計上固定資産の耐用年数を合理的に見積もって損益計算書の費用として処理しますが、法人税法上はあらかじめ固定資産の耐用年数を定めており、法定の耐用年数にて償却計算することが決まっています。

そのため、会計上の耐用年数と税務上の耐用年数が同じであれば問題ないですが、耐用年数が異なっている場合は利益をそのまま法人税における所得として扱ってしまうと、企業間の納税状況に不平等が生じるおそれがあるのです。

税務調整の4つのパターンについて

利益と所得のずれを調整する作業は「税務調整」とも呼ばれ、4つのパターンに大別することができます。

税務調整の種類
益金算入・所得に加算する調整のこと
・「無償譲渡」など、企業会計上の収益に計上されないものの法人税法上は益金にするものを算入する
益金不算入・所得から減算する調整のこと
・「受取配当金」など、企業会計上の収益に計上されるものの法人税法上は益金にしないものを不算入とする
損金算入・所得から減算する調整のこと
・「繰越欠損金」など、企業会計上の費用には計上されないものの法人税法上は損金にするものを算入する
損金不算入・所得に加算する調整のこと
・「減価償却資産の償却限度超過額」など、企業会計上の費用に計上されないものの法人税法上は損金にしないものを不算入とする

適用する税率について

税務調整を経て所得金額を求めることができれば、これに税率を乗じて法人税額を算出することができます。

適用する税率は、2024年時点で原則「23.2%」ですが、所得の大きさや法人の区分によって「19%」や「15%」が適用されることもあります。

※15%の税率は、特例による措置であり、中小事業者等に適用される。

区分所得金額のうちの区分原則特例
中小法人 (資本金1億円以下など)年800万円以下の部分19%15%
年800万円超の部分23.2%23.2%
中小法人以外の普通法人23.2%

出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

つまり、所得が800万円とすれば、原則通りに計算すると「152万円(800万円×19%)」。特例が適用されると「120万円(800万円×15%)」という値が算出されます。

法人税以外の税目として、地方法人税や地方税(法人住民税や事業税など)なども課されますが、本項では省略いたします。

申告は事業年度終了から2ヶ月以内に行う

税務申告は、原則として新事業年度開始日から2ヶ月以内にしないといけません。

この2ヶ月間に株主総会での承認の手続を行う必要があり、企業によっては取締役会等での「計算書類の承認」、監査役による「監査報告書の提出」も必要となります。この期間中、経理業務は忙しくなることでしょう。

そのうえ法人税や消費税の手続は複雑で、毎年のように改正が行われており、正しく計算・申告するのは簡単ではありません。経理担当、経営者としては法人税計算のあらかたを理解しておくことが望ましいですが、実際の計算や申告書の作成などは税理士に任せることをおすすめします。

役員報酬を決めるときに知っておきたい税金(法人税・所得税)との関係

役員報酬を決めるときは、法人税と所得税のバランスを考慮すること、そして適切な手続きによりこれを定めることを意識してください。

会社役員のする仕事への対価については、従業員に対する給与とは異なる取り扱いが必要ですので、問題が起こらないよう当記事にて大事なポイントを押さえておいてください。

役員報酬の大きさと税金の関係

まずは役員報酬の大きさが法人税や所得税にどう影響するのか、税負担について言及していきます。

役員報酬で法人税の負担は減らせる

会社が支払う法人税の大きさは、会社の利益の大きさに対応します。そしてこの利益の大きさは、売上と経費のバランスで定まり、同じ売上高に対して多くの経費を使っているときはその分利益は小さくなります。

役員報酬に関しては、一定の要件を満たす場合は、従業員に支払う賃金と同じように会社の税務上の経費として処理することが可能でこれを「損金算入」といいます。

損金算入された役員報酬はその他経費と同じく利益から差し引くことができますので、結果として会社の利益は減少し、法人税の負担も小さくなるのです。

しかし、節税ばかり意識していると会社の利益を圧迫してしまい、資金繰りが悪化する可能性もあります。

役員個人の所得税等がかかる

役員報酬を増やすことで会社の法人税を減らせる反面、役員個人にかかる所得税や社会保険料は大きくなってしまいます。

役員報酬は従業員が給与を受け取ったときと同じように「給与所得」として処理されますので、原則通り累進課税制度に従い所得が大きいほど大きな税率が適用されます。

そのため、会社の経営状況や役員個人の状況などを総合的に考慮し、法人税の節税効果と所得税や社会保険料の増加のバランスを考えながら適切な役員報酬を設定することが重要といえます。税金を意識するときは税理士に相談し、最適な報酬の額を検討しましょう。

金額を決めるときのポイント

役員報酬の額を決めるときはさまざまな要素を考慮すべきです。特に意識しておきたいポイントを下表にまとめました。

役員報酬の額を決めるときのポイント
毎月の利益や固定費の予測を立てておく毎月の売上予測、経費(人件費、家賃、光熱費など)を算出し、そこから得られる利益を把握。この利益に見合った金額に設定することが重要。また、固定費を差し引いた上で、会社に残る資金も考慮する。
法人税と所得税等のバランスを考慮する上記の通り、役員報酬を増やすと会社の法人税は軽減されるが、役員個人の所得税等が増加する。 法人と個人、それぞれが許容できる税負担やバランスを考慮して金額を定める。
業務内容に見合った金額にする役員の職務内容、責任、貢献度に見合った金額であるべき。同業他社や事業内容が類似する企業の役員報酬を参考にしながら、適切な金額を考えると良い。また、実態に見合わない不当に高額な役員報酬だと税務署が認めない可能性もあるため注意が必要。
従業員との格差への配慮役員や従業員、それぞれの仕事内容に見合った金額とすることは大事であるが、あまりに役員報酬との差が大きいと従業員の働くモチベーションが下がってしまう。従業員の昇給やボーナスがない状況下で役員報酬だけ増額されていると特に反感を買いやすいため要注意。

会社の状況は常に変化するため、一度定めた役員報酬も定期的に見直しましょう。その際、会社の将来的な成長を見据えること、役員のモチベーションを維持することに着目すると良いでしょう。

※ただし、原則として役員報酬の増減は事業年度開始後3か月以内の改定に限って認められますので、やむを得ない事情があり期中の変更を行わざるを得ない場合は事前に税理士に相談しましょう。

なお、役員のモチベーションを上げる方法には、役員報酬以外にも「ストックオプション制度」などのインセンティブ報酬を取り入れるというやり方もあります。

役員報酬を定める手続きが必要

株式会社においては、株主総会で役員報酬を決める必要があります。所有と経営が分かれている株式会社において役員が報酬を取り過ぎると会社所有者である株主の利益が侵害されるおそれがあるためです。

とはいえ多くの中小企業では経営者である取締役が株主を兼ねていることが多いでしょうし、取締役兼株主が1人というケースも珍しくありません。その場合は法人とはいっても自分1人ですべて決めることができます。

原則は株主総会での決議

役員とは別に株主がいるとき、役員報酬を決める原則的方法は「株主総会での決議」であることを知っておいてください。

経営陣だけで勝手に決めることは許されず、株主総会を開いてそこで承認を受けなくてはなりません。まずは役員報酬に関する議案を提出し、そこで“普通決議”にて可決されれば、その金額を支給することができます。

定款を使ったやり方もある

役員報酬を変更するたびに議決を取るのが面倒だという場合、「定款」という会社の根本原則を使って少し簡略化させましょう。

例えば定款に「すべての取締役に関する報酬総額の限度額」を定めておけば、その範囲内に限り、取締役会で具体的な金額を定めることができます。取締役会とは経営陣だけでの会議ですので、迅速・柔軟に報酬について話し合うことができるでしょう。

ただしこの限度額を変更するときは「定款変更」を要しますので、株主総会の“特別決議”が必要です。“普通決議”に比べて要件が厳しくなりますのでこの点も留意のうえ、定款を活用しましょう。

創業計画書について|記載事項や押さえておきたいポイントなど作成方法を紹介

創業計画書は、会社や事業の立ち上げの際に作る事業計画書のことです。事業の見通しを立てるため、金融機関から創業融資を受けるため、などを目的に作成します。特に創業段階では実績がなく不確定要素も多いことから、創業計画書は重要な存在といえます。

当記事では「創業計画書を作成するにあたって知っておきたいこと」をまとめましたので、始めての会社設立を検討している方、あるいは会社を立ち上げたばかりの方などは参考にしてください。

創業計画書とは

創業計画書とは、これから始める事業の内容、目標、戦略などを具体的にまとめた書類です。「ビジネスの設計図」とも言える存在です。

計画書には、事業のアイデアだけでなく、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、財務計画など、多岐にわたる情報を盛り込みます。客観性・具体性のある内容とすることで、金融機関など外部の方にも当該事業の将来性や実現可能性を評価してもらいやすくなります。

どんなときに作成するのか

創業計画書は事業の見通しを立てるために作られます。今始めようとしている事業にはどのような課題があるのか、どれほどの売上高が見込まれて、どれだけの経費が発生し、どれだけの利益が出せるのか、こういった情報を整理していきこれからの予測を立てるのです。

事業がスタートしていませんのでどうしても想像に頼る部分も出てきてしまいますが、客観性のある数値・相場も参照して解像度を上げていくことで実現可能性の高い見通しを立てることもできます。そうすると当該事業で見直すべきポイントや注力すべきポイントなども明らかとなり、事業の失敗も少しは避けやすくなります。

また、事業の見通しがわかりやすく整理されることによって、創業計画書を自社の評価材料として使うこともできます。活用が想定される一番のシーンは「創業融資」です。融資を行う金融機関は、相手方の返済能力を審査してからでなければお金を貸すことはできません。返済したお金が約束通りに返ってこないリスクがあるからです。

特に創業段階だと安定して利益が出せない危険性が高いですし、今後どうなるのか、過去の実績がなく評価しづらいです。そこで創業計画書が役立ちます。不安要素が多いものの、創業計画書がしっかりと作りこまれていれば「この計画通りにいけば返済してもらえそうだ」という判断もすることができます。

創業計画書の作成方法

決まったフォーマットはありませんが、創業計画書を作成するときは次の事項を盛り込むよう意識しておきましょう。

  • 創業の背景や目的
  • 市場分析や戦略の内容
  • 必要な資金の内訳
  • 売上高や利益の根拠

創業の背景や目的を記載する

創業を検討している方についての職歴や具体的な実績、なぜ創業を決意したのか(動機)、そしてその事業が目的としていること、などを簡潔に記載しましょう。

特に審査の観点からは、長々と動機について記載する必要はありません。計画書に説得力を持たせられるような背景等があればその点をアピールしておきましょう。

市場分析や戦略の内容を記載する

これから始める事業ではどんな商品やサービスを取り扱うのかをわかりやすく示しましょう。そしてターゲットとする顧客、顧客にリーチする手段、競合他社との競争に勝つための戦略、などを具体的にまとめます。

その際は自社のことだけに目を向けたのでは不十分です。周りに意識を向け、他社がどのような活動をしているのか、昨今の市場動向はどうなのか、消費者の意識はどのように変化しているのか、これらの調査結果を反映させると説得力も増します。

必要な資金の内訳を記載する

資金調達を行う場合はただ単に「2,000万円が必要」と伝えるのではなく、その金額が必要な理由についても示す必要があります。

そこで内訳についても具体的に記載し、必要資金の過不足が生じないように留意してください。またその際は「設備資金」と「運転資金」に分けて考えることが大事です。融資の審査の観点からは、スモールスタートでまずは運転資金から備えて実績を積んでおくのが有効といえます。

売上高や利益の根拠を記載する

売上高の大きさ、経費の大きさ、利益の大きさについて明記しましょう。またその数字の根拠も示す必要があります。

これらの情報は、事業の見通しを判断するうえで特に重要といえます。

希望的観測で「毎月100万円くらいの売上は出るだろう」と考えるのではなく、なぜその金額になるのかを具体的に考えておく必要があります。立地の良さ、当該エリアにおける人口の多さや市民の属性、競合他社の状況なども踏まえて計算を行いましょう。

そうやって一つひとつの数字を考えていくと、一定以上の利益を出すために「日々どれだけの顧客が来店しないといけないのか」「客単価はいくら以上であるべきか」「人件費はいくらまで出せそうか」「家賃はいくら以下にしないといけないか」などが見えてきます。

創業計画書を策定するときのポイント

最後に、創業計画書の内容を考えるときに大事なポイントを整理します。以下の点を押さえて作成を進めていくと良いでしょう。

  • 具体的に書くこと
    (ぼんやりとした抽象的な表現は避け、具体的な数字や根拠を提示する。)
  • 分かりやすく書く
    (専門用語の多用は避けて誰にでも理解しやすい表現を使うこと、また、見やすさを意識した構成とすることも大事。)
  • 実現可能な計画を立てる
    (無理な計画、希望的観測に基づく計画は避け、実現可能性を意識して目標を設定する。)

1年間の税務手続きのスケジュール|3月決算法人を例に全体の流れを紹介

法人の経営をしていくには、売上・利益を出すための業務を遂行するだけでなく、税務にも向き合わなくてはなりません。そして税務手続きにおいては1年という期間で大きな区切りがつけられており、期限が定められている手続きもありますので全体のスケジュールを確認しておくことが大事です。ここでその流れを押さえておきましょう。

年間スケジュールの例

税務手続きに関して法人がしないといけない作業はたくさんあります。3月決算法人を例に、1年間のスケジュールを簡単にまとめたのが下表です。

1月 ・12月分給与の源泉所得税、住民税の納付
※特例適用者の場合:7月~12月分の源泉所得税を納付
・償却資産税申告書の提出と納付
・法定調書の作成、給与支払報告書の提出
2月 ・1月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・償却資産税第4期分の納付
3月 ・2月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・実地棚卸
・翌期の税務ポジションや事前申請有無の確認
4月 ・3月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・償却資産税第1期分の納付
5月 ・4月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・法人税、消費税、地方税の確定申告と納付
6月 ・5月分給与の源泉所得税、住民税の納付
7月 ・6月分給与の源泉所得税、住民税の納付
※特例適用者の場合:1月~6月分の源泉所得税を納付
・償却資産税第2期分の納付
8月 ・7月分給与の源泉所得税、住民税の納付
9月 ・8月分給与の源泉所得税、住民税の納付
10月 ・9月分給与の源泉所得税、住民税の納付
11月 ・10月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・法人税、消費税、地方税の中間申告と納付
12月 ・11月分給与の源泉所得税、住民税の納付
・償却資産税第3期分の納付
・年末調整

※前期消費税額48万円超~400万円以下で、中間申告は年1回と想定。

上場会社等の法人は四半期決算を行うこともありますし、毎月月次決算を行うこともあります。その他、特例の利用や課税の規模によってスケジュールが変動することもありますので注意してください。また、こちらは3月決算法人を例にしていますので、決算月が変われば全体のスケジュールも変わってきます。

決算までの日々の業務

決算に関する仕事は決算月付近でのみ発生するわけではありません。忙しい時期とそうでない時期の差はあるかもしれませんが、年間を通して会計手続きを積み上げていかないと決算はできません。

そこで次の流れに沿って日々の業務を進めていきます。

  1. 仕訳業務
    決算対象となる年度分すべての仕訳を決算までに済ませておく必要があるため、日々の取引は日常的に記帳しておく。

クラウド型会計ソフトでは領収書データ等から仕訳を自動で登録するものもありますので、従来に比べて事務負担は軽減されています。

  • 試算表を作成
    日々の仕訳記録から総勘定元帳、仕訳帳が作られ、それらの情報と連動する形で試算表を作成。専用の会計ソフトを使えば仕訳記録が自動的に反映されていく。
  • 決算整理仕訳
    決算のために必要な、年度単位で行うべき仕訳(年払いとしてる費用などの処理)を行う。
  • 決算書を作成
    貸借対照表、損益計算書などを作成する。これら決算書をもとに確定申告および納付も行う。

記帳業務を溜め込まずに対応していけば、決算にかかる負担も軽くすることができます。顧問税理士に記帳代行を頼むこともできますが、自社で記帳を行うメリットは適宜自社の財務状況を把握し経営の意思決定に使用することができるという点になります。

弊所では、顧問税理士には適宜会計のチェックや税務アドバイスを求めつつ、自社の取引については自社で整理することが好ましいと考えております。

納税が必要な税金について

法人のする活動にはさまざまな税金が絡んできます。適切に申告や納付の義務を果たさなければならず、期限にも注意が必要です。

法人税・全法人に申告義務がありますが、利益が出ている法人に納税が生じます。
・期限は原則として事業年度の終了日の翌日から2ヶ月後
源泉所得税・給与や報酬等を支払う事業者が対象
・期限は給与の支払月の翌月10日、
消費税・一定以上の国内売上高がある事業者、インボイス発行事業者になった事業者が対象
・期限は原則として事業年度の終了日の翌日から2ヶ月後

また、地方税にも留意する必要があり、「法人住民税」や「法人事業税」、「償却資産税」などが発生します。

多くの税金は「事業年度の終了から2ヶ月以内」という期限にかかるため、決算月から2ヶ月以内に確定申告や税金の納付に対応できるよう備えましょう。申告期限の延長申請を行うことで延長することもできますが、期限に間に合わないときは延滞税や加算税等のペナルティの負担も加わってしまいます。

資金調達の種類と成功するためのポイント

土地や建物、機械、備品、車両など、事業を立ち上げるときや規模を拡大していくときには大きな設備資金が必要となります。また材料や商品の仕入れ、従業員への人件費などの運転資金も確保しておくことが重要です。

自己資金でカバーできた方が事業も安定させやすいですが、外部から資金を調達することで事業の成長を加速させることも可能です。この資金調達の方法にはどんな種類があるのか、当記事で紹介します。

主な資金調達の種類

あらかじめ蓄えておいた預貯金などの自己資金を使う方法や、金融機関からの借入、補助金や助成金の活用、出資、などの資金調達方法もあります。

それぞれの特徴は次のように整理できます。

資金調達の方法特徴
自己資金を蓄える・返済不要で資金使途の制限もない。
・立ち上げ当初の、経営が不安定な時期に返済による圧迫がない。
・銀行借入をするときの審査でも自己資金割合の大きさがかかわってくるため、必要な資金のうち3割ほどは用意できていると良い。
金融機関からの借入・毎月返済が必要。
・事業実績がないと審査に通るのが難しくなるが、創業時期に適した制度が用意されていることもあって、資金調達の手法としてはメジャー。
・日々の取引における決済でも利用することになるため、金融機関とは良い関係性を築いておくことが大切。
補助金や助成金の受給・開業や事業承継、新たな取り組み、就労環境改善など、特定の取り組みに対して一定額を受け取ることができる。
・返済は不要であるが、後払いが基本。
・原則として申請手続きのため、手間も大きい。
第三者から出資を受ける・投資家、ベンチャーキャピタルから出資を受ける。
・クラウドファンディングにより不特定多数から出資を受けることもできる。
・知名度や将来性があれば、現時点の純資産価値と比較すると多額の資金調達をすることができる場合もある。
・条件についても協議により自由に定められる。
・出資を受けることで創業者の保有持分が減少するため、出資を受ける際には慎重な検討が必要。
知人や親族からの借入・借り入れは金融機関との取引が一般的であるが、対応してくれる人物が身近にいればその方からお金を借りることもできる。
・金融機関ほど厳格な手続や審査が必要なく、返済計画などのも柔軟に受け入れてもらいやすい。
・約束通りの返済がなされない場合、関係性が悪化して私生活にも影響してしまう。

共通するポイント

資金調達をする方法には、上述の通りさまざまな種類があります。それぞれ必要な手続の内容や難易度、調達できる規模などに違いがあるものの、事前準備として「綿密な事業計画を立てておくこと」が共通する重要なポイントといえます。

「だいたいこれくらいあれば足りるだろう」「しばらく経てば売上も伸びてくるだろう」などとあいまいな予測しか立てていない場合、まず、いくら調達すべきかが明確にできません。

また、売上高や利益の大きさが根拠ある数字で計算できていないと、返済やリターンの見込みが評価されません。

特に他人の資金を当てにするのであれば、自社がどんな事業をして、何のためにいくら必要なのか、売上や利益はどれくらい出るのか、を明確にしておく必要があります。一般的にはこれらの情報を事業計画書としてまとめていきます。
わかりやすく説得的な事業計画書が作れていると、相手方からの信用も得やすくなります。経営者自身も今後の見通しが立てやすくなりますので事前に計画を策定しておくことの利点は大きいです。

自己資金を準備するときのポイント

必要資金のうちできるだけ大きな割合を自己資金で確保できている必要があります。資金が使いやすいだけでなく、将来借入など他の資金調達をするときの審査にも影響があるためです。

そこで業種にもよりますが、借入時には基本的に「必要資金の3割以上」を自己資金で確保しておきましょう。可能なら5割を確保します。

返済スケジュールが現実的であるかという点を事業計画書の作成時に検討した上で、余裕を持った預金状況になるように設定すべきです。

金融機関からの借入のポイント

「金融機関からの借入」は資金調達として一般的な手法です。借入にあたっては、事前に必要資金を把握しておくことはもちろん、金融機関の選択も審査に影響があるためよく考えて選ぶようにしましょう。金融機関により方針が違いますので、同じ事業内容・同じ事業計画書の準備をしたとしても、審査の通過率は異なります。

例えばメガバンクだと開業時点での少額融資に前向きでないケースも多いです。その反面、全国に支店があり利便性が高いことから預金取引の相手方としては適しています。

地方銀行は相手方によってサービス内容や借入に対する考え方の差が大きく異なります。活動拠点となるエリアの地方銀行をいくつか当たって、融資に積極的なところを探してみると良いでしょう。
また、一般にあまり馴染みはないかもしれませんが信用金庫や信用組合との取引も視野に入れてみましょう。地域の事業者に対する支援が充実しており、比較的規模の小さな事業に対する融資にも積極的であるケースが多いです。

創業融資なら日本政策金融公庫も検討

日本政策金融公庫は政府が株式を保有する政府系金融機関です。民間の金融機関とは異なる特徴を持っていて、創業期、創業して間もない事業者でも利用しやすい融資制度を多く展開しています。

一般的な借入だと3割程度を自己資金でカバーすることが求められていますが、日本政策金融公庫であれば「必要資金の1割」を要件としている融資制度もあります。

補助金や助成金を活用するポイント

補助金や助成金の支給を受けようとするのであれば、形式的な要件を確実にクリアすることが重要です。

借入や出資は相手方との交渉により成り立ちますので、ある程度自由度があります。しかし補助金や助成金は行政が相手方であり、所定の要件を漏れなくクリアすること、決まった期間内に申請を行うことなどに注意しないと調達ができません。

ただ審査基準は明確ですので、各種制度に詳しい専門家の協力も得ながら手続を進めていけば成功をさせやすくなります。

出資を受けるポイント

個人投資家やベンチャーキャピタル(出資を業務とする組織)に出資を求める場合、「企業の成長性」「事業の新規性や将来性」をアピールすることが重要です。

事業計画書にもその点をアピールする内容を組み入れましょう。

例えば借入だと「返済の確実性」が注視されるため、事業が安定して長く活動できること、着実に利益が出せることをアピールするように作成します。
一方、出資だと「自分たちが得られるメリット」に出資者たちは注目していますので、これからの展開や期待感のあるリターンを示す必要があります。借入をするとき以上に事業計画書を作り込む必要があるでしょう。