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月別アーカイブ 2026年3月23日

初めて従業者を雇用するときに必要な手続きとその留意点

従業員を雇用するときはさまざまな手続きが必要になるとともに、労働法にも留意しなくてはなりません。

ここでは従業員を雇ったことがない事業者の方に向けて簡単に全体像を紹介しておりますので、初めての雇用を検討している方はぜひチェックしておいてください。

雇用までの手続き

従業員を雇用するならまずは従業員の募集をかけ、応募をしてきた方との面談等を通して選考を行いましょう。採用することが決まればその方と雇用契約を締結することになりますが、その際「労働条件通知書の交付」は法令上欠かすことができません。

労働条件通知書とは、その名のとおり所定の労働条件について通知するための文書です。雇用契約書とは別物ですが、雇用契約書と労働条件通知書は兼ねて作成することができますのであえて別個に作成する必要がないのなら兼用すると良いでしょう。

労働条件通知書の交付にあたっては記載内容に注意してください。法令上絶対に記載しないといけない事項がありますので、漏れがないことを入念にチェックしてから交付しましょう。記載しないといけないのは以下の事項です。

  • 労働契約の期間
    ※有期労働契約の場合は更新基準、更新上限の有無、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件についても言及。
  • 就業場所と従事すべき業務
    ※それらの変更の範囲も。
  • 始業・終業の時刻
    ※所定労働時間を超える労働の有無や休憩時間、休日、休暇も含む。
  • 賃金の決定、計算、支払方法、昇給の有無
    ※退職手当、臨時に支払われる賃金は除く。
  • 退職に関する事項
    ※解雇の事由含む。
※労働条件通知書に関するトラブル
・労働条件通知書交付の義務を怠った場合は、罰金30万円が科されるおそれがある。 ・事実と異なる労働条件を記載していた場合、従業員は雇用契約成立後でも即座に契約を終了することができる。転居が必要になる場合はそのための費用も使用者側の負担となる。

社会保険加入の手続き

従業員を雇用するとなれば社会保険の加入手続きも欠かせません。

そして社会保険には、①労災保険と②雇用保険、③健康保険と④厚生年金の4種類があります。

※①と②をまとめたものを労働保険、③と④をまとめたものを(狭義の)社会保険と呼ぶ。

各社会保険の概要と必要な手続き等を以下に整理しましたのでご確認ください。

①労災保険について
概要・業務上の怪我や死亡に関する補償を目的とする。 ・保険料は全額使用者が負担する。 ・雇用形態などに関係なく全従業員に適用する。
必要な手続き・事業場を管轄する労働基準監督署で行う。 ・「労働保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を提出。 ・期限は保険関係成立の翌日から10日以内。
②雇用保険について
概要・従業員の失業や育児介護休業における生活保障を目的とする。 ・保険料は使用者と従業員で負担する。 ・週20時間以上の労働時間で、季節雇用ではなく継続的な雇用をする場合の従業員に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で行う。 ・雇用から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」、入社月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出。
③健康保険と④厚生年金について
概要・健康保険は業務外での傷病等に対する保険。 ・厚生年金は会社員向けの年金。 ・保険料は使用者と従業員で折半する。 ・フルタイムで働く従業員、または労働時間等について所定の要件を満たす短時間労働者に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する年金事務所で行う。 ・「新規適用届」と「資格取得届」、必要に応じて「被扶養者異動届」を提出。 ・期限は雇用または従業員が適用対象者となってから5日以内

会社負担も発生する

各種保険料については会社が負担すべき部分もありますので、その負担も考慮したうえで計画的に雇用を行うようにしてください。

目安は従業員に支払う給与の約15%といわれており、そのうち大きな割合を占めているのが厚生年金保険料と健康保険料です。厚生年金保険料は給与の10%弱、健康保険料は給与の5%弱が会社負担とされており、これに労災保険料や雇用保険料等の負担も合計されます。

そこで金額のイメージは、ざっくりと次のようにまとめることができます。

  • 給与20万円の従業員を雇用・・・会社負担額は3万円程度
  • 給与30万円の従業員を雇用・・・会社負担額は5万円程度
  • 給与40万円の従業員を雇用・・・会社負担額は6万円程度

※従業員の年齢、事業の種類によって負担割合は若干変動することに注意。

いったん雇用したあとで給与を下げることは法的に難しいですし、雇用時に相手方の同意があっても最低賃金を下回ることはできません。

雇用後も継続的に事務手続きが必要

従業員に関する税務も発生します。所得税に関して毎月の給与支払時に源泉徴収の必要が生じるとともに、毎年年末調整の作業も発生します。また、源泉徴収を行うことになるため、「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」を従業員から提出してもらい、その内容に沿って給与から控除すべき所得税額を算出します。

また、法定三帳簿と呼ばれる「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」の作成および保存の義務も課されます。賃金台帳とは給与の支払いを記録したもの、労働者名簿とは従業員の個人情報や入退社の日付などを記録したもの、出勤簿とは勤務時間や日数などを記録したものを指します。
さらに従業員へ付与される有給休暇を管理するための「有給休暇管理簿」も作成しないといけませんし、雇用に関するその他さまざまな書類も作成後は一定期間保管しないといけないなど、法律によりさまざまなルールが課されているのです。 従業員を雇いはじめた当初の手続き以外に、継続的な事務の負担が発生することも認識しておかないといけません。「労働力を獲得して給与を支払う」という単純な問題と捉えず、労働者を保護するための各種ルールが強制的に適用されること、事務的な負担も多く発生することを認識のうえ、雇用すべきかどうかを決断すべきです。

事務手続きは煩雑ですが、事業をスケールするには従業員の働きも必要です。初めての雇用にあたっては弁護士や社会保険労務士等の専門家にもご相談の上で進めていただければと思います。

売上の帰属時期について分かりやすく解説

取引先から入金があった日に売上として計上するのか、それとも商品を納品した日に計上するのか、適切な会計処理を行うには売上の帰属時期についてのルールを知っておく必要があります。ここでは、売上の帰属時期の具体的な判定基準について分かりやすく解説します。

売上の帰属時期とは

売上の帰属時期、取引による収益(売上)を会計上いつ生じたものとして計上するのかは、会計上・税務上大きな意味を持ちます。これは、簡単にいうと「いつの時点でお金を稼いだと見なすか」というタイミングの問題です。

企業活動に伴いさまざまな取引が日々発生しますが、それらの売上をいつの時点で企業の収益として認識するかが財務諸表の作成や税金の計算にも影響するのです。そのためこのタイミングが適切に扱えていないと、会社の経営状態を正確に把握できなくなったり、税務上の問題が生じたりする可能性があるのです。

発生主義・現金主義・実現主義について

売上や費用の帰属時期を考えるうえで重要な考え方、「発生主義」と「現金主義」、そして「実現主義」があります。

発生主義とは、実際にお金の受け取りがあったかどうかに関わらず、サービスや商品を提供した時点や費用の発生する取引が「発生した時点」で計上する考え方です。費用を計上するときの原則的な考え方で、たとえば、3月に商品を購入し、代金の支払いが4月だった場合でも、3月の費用として計上します。

※個人事業主や小規模な企業では一定の条件下で現金主義による処理も認められる。

一方、現金主義とは実際にお金を受け取った時点で収益等を計上する考え方のことです。先ほどの例では、代金を支払った4月で費用を計上することになります。

これに対し実現主義は売上を計上するときの原則的な考え方で、商品やサービスの提供が完了して対価を受け取る「権利が確定した時点」を基準に収益を計上します。

売上を計上する時期の判断基準

会計上、売上を計上する時期は実現主義に従います。

ポイントは「いつ権利が確定したか」にあるため、実際にお金を受け取った時点ではないことに注意が必要です。資産の譲渡をした場合と役務の影響をした場合とで取り扱いが異なりますので、各パターンを見てみましょう。

資産の譲渡(物品販売等)の場合

資産の譲渡とは、簡単にいえば「モノを売ること」を指します。店舗で商品を売る、自社製品を納品する、会社の不動産を売却する、など形ある物を相手方へ渡して対価を得るタイプの取引が該当します。

そして資産の譲渡にあたる場合の売上の計上時期は、基本的に「モノを相手方へ渡した時点」となり、その考え方を「引渡基準」と呼んだりもします。

《 資産の譲渡が行われた場合の例 》

  • 店頭販売の場合・・・商品を顧客に手渡したとき(レジで精算した日)
  • ネット販売の場合・・・商品が顧客に届いたとき(配達完了日)
  • 工場から直送する場合・・・顧客の指定場所に納品された日
  • 固定資産の売却の場合・・・所有権移転登記が完了した日
  • 有価証券の売却の場合・・・約定日(取引が成立した日)

ただし、大型設備など、設置や調整等を要するモノに関してはその作業を行ったうえで相手方による検収が通常は行われます。製品や設備が正常に動作することを確認し、承認した時点で取引が完了したと評価します。この「検収基準」が採用されるケースもあることは留意しておきましょう。

役務の提供(サービス提供等)の場合

役務の提供とは、「サービスを提供すること」と言い換えることもできます。アドバイスをする、情報を提供する、荷物を運ぶ、など形のないサービスを提供して対価を得る取引が役務の提供に該当します。

この場合の売上の計上時期は、基本的に「サービスの提供が完了した時点」です。

《 役務の提供が行われた場合の例 》

  • コンサルティングの場合・・・報告書を提出して業務が完了した時点
  • 宿泊サービスの場合・・・宿泊が終了した時点
  • 運送サービスの場合・・・荷物が目的地に到着した時点
  • 修理サービスの場合・・・修理が完了して顧客が確認を済ませた時点

役務の提供においては、いつ履行義務が果たされたかがポイントになります。つまり、契約で約束したサービスがいつ完全に提供されたのかに着目します。

ただ、長期間にわたるプロジェクトの場合だとそのすべてが終わってからではなく、進捗度合いに応じて段階的に売上を計上することもあります。また、複数回にわたる役務提供においては、都度の提供を完了した時点で売上を計上したり、契約期間に応じて均等に計上したりする方法もあります。

売上計上に関する実務上の注意点

売上の計上に関しては、証憑類や帳簿を適切に管理すること、取引に関する契約書を作成しておくことに注意しましょう。

注文書、納品書、検収書、請求書などの書類を保管しておいて、後日でも商品の受け渡し日や相手方が商品等について承認をした日などが証明できるようにしておくべきです。また、契約書に納品条件や支払条件、サービス提供の範囲等を明記しておくことで売上時期の判断について客観的に示しやすくなります。

特に期末に近い取引では計上時期が決算の内容に影響するうえ、意図的に売上を前倒ししたり先送りしたりしていると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。計上時期について悩む場合は税理士に相談あるいは業務の代行を依頼することもご検討ください。