M&A、スタートアップ税務に強い税理士なら池袋の鷲津裕税理士事務所

年別アーカイブ 2026年4月28日

法人にできる基本的な節税対策をチェック

法人税の負担を適切に抑えることは、企業の資金繰り改善につながり、間接的には事業の成長にもつながります。しかし税制の仕組みは複雑で、何をすればいいのか、何をしてはいけないのかがわからない方も多いのではないでしょうか。当記事では税の専門知識がない方でも理解できるよう、わかりやすく節税対策の基本を紹介していきます。

経費として認められる支出を見直す

節税について考えるときはまず、事業に必要な支出を適切に経費として計上することを意識しましょう。経費が増えれば利益が減り、結果として法人税の負担も軽くなります。

ただし、何でも経費にできるわけではありません。税務上、経費として認められるには「事業を行うために必要な支出」であることが前提です。

判断が難しいものもありますが、たとえば以下の支出については経費計上も可能であるため要チェックです。

  • 業務で使用する車両の維持費やガソリン代
  • 取引先への手土産や贈答品
  • 従業員の福利厚生にかかる費用
  • 事業に関連するセミナーや書籍の購入費 など

適切に経費計上することで、無駄な税負担を避けることができます。ただし、プライベートと事業の両方で使用するものは、事業用途の割合だけを経費にする按分の考え方が必要です。

※按分の割合については、合理的な基準によること。そして記録(面積・使用時間・走行距離など)の裏付けが必要。

減価償却を活用した資産購入のタイミングを検討

設備投資や車両購入などの高額な資産を取得した際、その代金は一度に経費になるわけではありません。数年に分けて経費化していく「減価償却」が必要です。

この仕組みも踏まえて、戦略的に節税対策に取り組むことが大切です。

ただ「中小企業が30万円未満の資産を購入した場合」であれば、一気に全額経費にすることも可能です。同制度を使えば、PCや小型の機械設備などを購入した際、通常なら数年かけて経費化するところを、その年のうちに全額を経費として処理できます。年間の上限は300万円までですが、利益が出そうな年に設備投資を行うことで、効果的な節税につながります。

※中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm

また、予想以上に利益が出ることがわかったとき、決算前に必要な設備を前倒しで購入するというやり方もあります。不要なものを無理に買うのは本末転倒ですが、購入するタイミングを調整するだけで節税効果を高められることもあると知っておきましょう。

役員報酬の設定を工夫

役員報酬は会社の経費になる一方で、受け取る個人には所得税がかかります。そこで会社と個人のトータルでの税負担を考えながら、適切な金額を設定するよう工夫しましょう。

ただし、役員報酬を経費として認めてもらうには原則として毎月同じ金額を支払う「定期同額給与」にする必要があります。期中に変更すると、変更部分が経費として認められなくなる可能性があるため注意してください。

役員に対する賞与に関しても、事前に税務署へ届け出た場合のみ経費になります。届出をせずに支払った賞与は経費にならず、会社側の税負担が増えてしまいますのでこの点も注意しましょう。

退職金制度等の活用

将来の退職金や将来資金の準備に役立つ制度を利用することで、毎年の掛金を経費にしながら節税することもできます。ある年の節税だけでなく、従業員の福利厚生の充実や経営者自身の将来設計にも役立つでしょう。

代表的なものに、従業員向けの「中小企業退職金共済(中退共)」、経営者個人の退職金準備に使える「小規模企業共済」などがあります。

また、取引先倒産に備える制度として「経営セーフティ共済」もあり、こちらも掛金が損金算入できるため節税対策の選択肢として検討する価値はあります。

欠損金の繰越控除

赤字が出た年があるなら、その損失を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺することが可能です。

青色申告書を提出している法人であれば原則として最長10年間繰り越すことができ、中小企業(資本金1億円以下の法人など)なら、その年度の所得金額の100%まで欠損金で相殺できます。

税額控除を受けられる投資の検討

投資につながる一定の支出(設備購入や雇用など)に関して、法人税額から直接差し引ける税額控除の仕組みもあります。

経費として利益を減らす方法とは異なり、算出された税額そのものを減らすことができ、高い節税効果を得やすくなっています。

例として「賃上げ促進税制」が挙げられます。従業員の給与をアップした企業に対する税制優遇の制度で、給与の増加率に応じて一定割合を税額控除できます。人材獲得、従業員の士気向上と同時に節税を実現という利点があります。

また、機械装置などの設備投資について取得価額の一定割合を法人税額から控除できる「中小企業投資促進税制」もあります。

このように、節税効果は特定の制度を知っているかどうか・利用するかどうかで変わってきます。税負担に大きな差が生まれることもあるため、税制への広い知識を持つこと、または税理士に相談して対策を検討してもらうことをおすすめします。

赤字を無駄にしない「繰越欠損金」の制度をわかりやすく解説

赤字の計上は本来好ましくない状況ですが、その損失は無駄になるわけではありません。税務上、赤字となった年度の欠損金は繰り越すことが認められています。この制度で翌年度以降に出た黒字と相殺し、税負担を軽減するため、適用方法や適用条件をチェックしていきましょう。

欠損金を繰り越して黒字と相殺できる

ある事業年度で発生した税務上の赤字(欠損金)は、将来の黒字年度に繰り越して課税所得から差し引くことができます。この制度に基づいて繰り越す赤字のことを「繰越欠損金」と呼んでいます。

たとえば、立ち上げの初年度に400万円の赤字を計上した会社があるとしましょう。その翌年には150万円の黒字を出したとします。通常であれば150万円に対して法人税が課税されるのですが、初年度の繰越欠損金の活用で前年の赤字400万円のうち150万円分を相殺でき、課税所得をゼロとできるのです。その結果、法人税の支払いも不要になります。

原則として会社に生じる税は年度ごとで精算されるのですが、同制度があることにより、業績の好不調の波も考慮した長期的な視点で税負担を平滑化できるようになっています。

繰越欠損金の適用ルール

繰越欠損金を正しく活用するには、①適用期間、②控除限度額の2つの重要なルールを理解する必要があります。

適用可能な期間について

欠損金を繰り越すことができる期間には制限があり、次のように欠損金が発生した時期によって異なることに注意してください。

欠損金が発生年度繰越可能な期間
2018年3月31日以前の年度9年間
2018年4月1日以降の年度10年間

もし、2017年4月~翌年3月までを事業年度としており赤字が生じた場合、当該年度における欠損金は9年先までが繰り越しの限度となります。これに対し2018年4月以降、たとえば2025年に発生した赤字については10年先まで繰り越すことが可能です。

なお、複数年度で赤字になったときは古い事業年度の欠損金から優先的に消化します。近い順に消化する仕組みにはなっていないため、古い方の欠損金が無駄になってしまうリスクを心配する必要はないでしょう。

控除限度額について

繰越欠損金をどの程度適用できるか、限度額については事業者の規模によって異なります。

  • 中小法人等の場合  :その年度の所得金額の100%まで控除可能
  • 中小法人等以外の場合:その年度の所得金額の50%まで控除可能
    ※平成30年4月1日以降の年度の場合に50%。それ以前については最大80%まで段階的に限度が設定されている。

同制度上の「中小法人等」に該当するかどうかは、主に資本金に着目して判定します。

当期末において資本金または出資金が1億円以下であるなら、基本的には中小法人等に該当します。ただし、資本金等が5億円を超える大法人と完全支配関係にある場合などには自社も中小法人等に該当しなくなり、限度額に制限がかかります。

繰越控除では青色申告が必須条件

繰越欠損金制度を活用するには、欠損金が生じた年度における「青色申告による確定申告書の提出」が欠かせません。白色申告だと同制度は利用できません。

そこで、繰越控除の適用に先立って青色申告の承認を受ける必要があります。「青色申告の承認申請書」を税務署へ提出する手続きを済ませておきましょう。

※新設法人なら設立から3ヶ月以内、既存法人なら事業年度開始日の前日までに提出。

また、青色申告の承認を前提として、その後継続的に税務申告を行っていなくてはなりません。少なくとも欠損金が発生した年度以降、継続して申告書を提出していることが確認できなければ、当該年度における欠損金を繰り越すことは認められません。業績不振で法人税額がゼロであっても、必ず期限内に申告書を提出しましょう。

個人事業主ができる節税対策とは?3つの手法と注意点を解説

個人事業主として事業を営む方にとって税金対策は、利益を少しでも多く手元に残すための戦略として大きな意味を持ちます。適切な節税対策を実践すれば納税額は合法的に抑えることができ、事業の安定・成長に必要な資金を確保することができるでしょう。

当記事ではそんな節税対策に取り組む際の大きな柱3つと、それぞれで注意すべき点について解説していますので、ぜひ参考にしてください。

手法①青色申告の選択を検討

確定申告は原則的方法にあたる「白色申告」と、任意で選択可能な「青色申告」の2パターンがあります。

白色申告の方が手続きは簡素ですが、青色申告の方が税制上の優遇措置を多く受けられるようになっています。

青色申告者が使える主な制度節税効果
青色申告特別控除最大65万円(e-Taxで提出または電子帳簿保存を行う場合)の所得控除が可能。
家族に対する給与の経費計上青色事業専従者給与として適正な給与を支払うことで経費計上が可能。ただし業務内容と給与額が見合ったものでなければならない。
赤字の繰越控除事業で発生した赤字を最長3年間繰り越して、翌年以降の黒字から相殺することが可能。

本格的な事業活動に取り組んでいる方は、青色申告の選択をおすすめします。

経理業務の負担が増すことに注意

青色申告を選択すると複式簿記による記帳が必要となるなど、経理業務の負担が増えることを覚悟しなければなりません。

日々の取引を正確に記録し、帳簿を作成・保存する義務があるため、経理知識がない方にとってははじめ大きな負担に感じるかもしれません。また、青色申告を行うためには事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があり、新規開業の場合は開業から2ヶ月以内、すでに事業を行っている場合は適用したい年の3月15日までに提出しなければならないため、期限にも注意が必要です。

とはいえ経理業務をすべて事業主自身で対応する必要はありませんので、経理担当者を雇うか記帳業務をアウトソーシングする、あるいは顧問税理士に記帳から申告までを依頼することでこの問題も解決することができるでしょう。

手法②控除制度の有効活用

節税効果を高めるため、税所得を小さくするための所得控除、納税額を小さくするための税額控除の仕組みも有効活用しましょう。

所得控除については、次のように多くの仕組みが用意されています。

所得控除の種類控除が認められるケース
雑損控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族が損害を受けた場合に適用できる。
医療費控除または
セルフメディケーション税制
・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族にかかる医療費を一定額以上、本人が支払った場合に適用できる。
・医療費控除ではなく、健康の維持や疾病予防のための取り組みに対して適用できる「セルフメディケーション税制」へ任意で切り替えることもできる。
社会保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族にかかる健康保険料や年金保険料などの金額を控除する。
小規模企業共済等掛金控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・個人型年金(iDeCo)の掛金などについて、その全額を所得から差し引く。
生命保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族が受取人となる生命保険料や個人年金保険料、介護医療保険料などの一部を所得から差し引く。
地震保険料控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・本人や配偶者、親族の資産に対する地震保険料を一部所得から差し引く。
寄附金控除・支出額に応じた額を所得から差し引くことができる
・国や自治体、一定の公益法人に対する寄附金の一部を所得から差し引く。
基礎控除・支出とは関係なく人的要件による。
・本人の所得が2,500万円以下なら、16万円から最大48万円を所得から差し引くことができる。
配偶者控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者の所得が48万円以下なら、13万円から最大38万円を所得から差し引くことができる。
配偶者特別控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者の所得が133万円以下なら、最大38万円を所得から差し引くことができる。
扶養控除・支出とは関係なく人的要件による。
・配偶者以外の親族(16歳以上)がいるとき、基本的には38万円、最大で58万円を所得から差し引くことができる。
障害者控除・支出とは関係なく人的要件による。 ・本人や配偶者、親族が障害者、または特別障害者であるとき、1人あたり27万円(特別障害者は1人あたり40万円)を所得から差し引くことができる。
寡婦控除・支出とは関係なく人的要件による。
・夫と死別している、または夫と離婚をしており扶養親族がいる場合であって所得が500万円以下なら、27万円を所得から差し引くことができる。
ひとり親控除・支出とは関係なく人的要件による。
・事実上の婚姻関係にもなく、所得500万円以下のひとり親に該当するとき、35万円を所得から差し引くことができる。
勤労学生控除・支出とは関係なく人的要件による。
・児童や学校の生徒、職業訓練生などであって所得が75万円以下の勤労学生であれば、27万円を所得から差し引くことができる。

さらに、税額控除にも「配当控除」「住宅ローン控除」「外国税額控除」などさまざまな制度が用意されています。使えそうな控除制度があるなら有効活用して課税所得または所得税額を下げると良いでしょう。

控除上限額や適用条件に注意

これらの控除制度を活用する際には、それぞれに設定されている控除上限額や適用条件を正確に把握しておく必要があります。

たとえば所得控除において支出に対応する控除が認められる場合でも、その全額が控除できるとは限りません。iDeCoを使った場合でも控除可能な額の上限が設けられていますし、医療費控除についても年間10万円を超えなければ控除ができません。

このように各種制度で独自のルールが設けられているため、税理士にも相談しながら上手く適用させていかないといけません。

手法③経費計上による節税

売上が大きくても、経費の占める割合が大きければ課税所得は小さくなり、所得税の負担は小さくなります。そのため個人事業主として活動するなら支出した経費一つひとつについて証憑を残しておくなど、きちんと管理し、適切に経費計上をしていきましょう。

仕入にかかった費用などはわかりやすい支出ですが、ほかにも家賃や通信費、交通費、消耗品費など、さまざまな支出を経費として計上できます。もし自宅を事業所としても兼用している場合、その家賃についても家事按分して「事業のために使った部分」については経費計上可能です。自宅で発生している通信費についても同様に考えることができます。

プライベートの支出を計上しないよう注意

個人事業主の場合、事業での支出とプライベートでの支出の線引きがあいまいになるケースがあります。たとえば自宅兼事業所として使っている場合の家賃や通信費については「どこまでを経費にしていいのか」という問題が生じます。

このときは事業で使っている部屋の面積に応じて按分するなど、税務署から質問を受けたときに、正当性があることを説得的に説明できる形で計上すべきです。純粋にプライベートで生じた支出を経費として計上することは脱税行為となるため絶対に避けなければなりません。

初めて従業者を雇用するときに必要な手続きとその留意点

従業員を雇用するときはさまざまな手続きが必要になるとともに、労働法にも留意しなくてはなりません。

ここでは従業員を雇ったことがない事業者の方に向けて簡単に全体像を紹介しておりますので、初めての雇用を検討している方はぜひチェックしておいてください。

雇用までの手続き

従業員を雇用するならまずは従業員の募集をかけ、応募をしてきた方との面談等を通して選考を行いましょう。採用することが決まればその方と雇用契約を締結することになりますが、その際「労働条件通知書の交付」は法令上欠かすことができません。

労働条件通知書とは、その名のとおり所定の労働条件について通知するための文書です。雇用契約書とは別物ですが、雇用契約書と労働条件通知書は兼ねて作成することができますのであえて別個に作成する必要がないのなら兼用すると良いでしょう。

労働条件通知書の交付にあたっては記載内容に注意してください。法令上絶対に記載しないといけない事項がありますので、漏れがないことを入念にチェックしてから交付しましょう。記載しないといけないのは以下の事項です。

  • 労働契約の期間
    ※有期労働契約の場合は更新基準、更新上限の有無、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件についても言及。
  • 就業場所と従事すべき業務
    ※それらの変更の範囲も。
  • 始業・終業の時刻
    ※所定労働時間を超える労働の有無や休憩時間、休日、休暇も含む。
  • 賃金の決定、計算、支払方法、昇給の有無
    ※退職手当、臨時に支払われる賃金は除く。
  • 退職に関する事項
    ※解雇の事由含む。
※労働条件通知書に関するトラブル
・労働条件通知書交付の義務を怠った場合は、罰金30万円が科されるおそれがある。 ・事実と異なる労働条件を記載していた場合、従業員は雇用契約成立後でも即座に契約を終了することができる。転居が必要になる場合はそのための費用も使用者側の負担となる。

社会保険加入の手続き

従業員を雇用するとなれば社会保険の加入手続きも欠かせません。

そして社会保険には、①労災保険と②雇用保険、③健康保険と④厚生年金の4種類があります。

※①と②をまとめたものを労働保険、③と④をまとめたものを(狭義の)社会保険と呼ぶ。

各社会保険の概要と必要な手続き等を以下に整理しましたのでご確認ください。

①労災保険について
概要・業務上の怪我や死亡に関する補償を目的とする。 ・保険料は全額使用者が負担する。 ・雇用形態などに関係なく全従業員に適用する。
必要な手続き・事業場を管轄する労働基準監督署で行う。 ・「労働保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を提出。 ・期限は保険関係成立の翌日から10日以内。
②雇用保険について
概要・従業員の失業や育児介護休業における生活保障を目的とする。 ・保険料は使用者と従業員で負担する。 ・週20時間以上の労働時間で、季節雇用ではなく継続的な雇用をする場合の従業員に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で行う。 ・雇用から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」、入社月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出。
③健康保険と④厚生年金について
概要・健康保険は業務外での傷病等に対する保険。 ・厚生年金は会社員向けの年金。 ・保険料は使用者と従業員で折半する。 ・フルタイムで働く従業員、または労働時間等について所定の要件を満たす短時間労働者に適用される。
必要な手続き・事業場を管轄する年金事務所で行う。 ・「新規適用届」と「資格取得届」、必要に応じて「被扶養者異動届」を提出。 ・期限は雇用または従業員が適用対象者となってから5日以内

会社負担も発生する

各種保険料については会社が負担すべき部分もありますので、その負担も考慮したうえで計画的に雇用を行うようにしてください。

目安は従業員に支払う給与の約15%といわれており、そのうち大きな割合を占めているのが厚生年金保険料と健康保険料です。厚生年金保険料は給与の10%弱、健康保険料は給与の5%弱が会社負担とされており、これに労災保険料や雇用保険料等の負担も合計されます。

そこで金額のイメージは、ざっくりと次のようにまとめることができます。

  • 給与20万円の従業員を雇用・・・会社負担額は3万円程度
  • 給与30万円の従業員を雇用・・・会社負担額は5万円程度
  • 給与40万円の従業員を雇用・・・会社負担額は6万円程度

※従業員の年齢、事業の種類によって負担割合は若干変動することに注意。

いったん雇用したあとで給与を下げることは法的に難しいですし、雇用時に相手方の同意があっても最低賃金を下回ることはできません。

雇用後も継続的に事務手続きが必要

従業員に関する税務も発生します。所得税に関して毎月の給与支払時に源泉徴収の必要が生じるとともに、毎年年末調整の作業も発生します。また、源泉徴収を行うことになるため、「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」を従業員から提出してもらい、その内容に沿って給与から控除すべき所得税額を算出します。

また、法定三帳簿と呼ばれる「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」の作成および保存の義務も課されます。賃金台帳とは給与の支払いを記録したもの、労働者名簿とは従業員の個人情報や入退社の日付などを記録したもの、出勤簿とは勤務時間や日数などを記録したものを指します。
さらに従業員へ付与される有給休暇を管理するための「有給休暇管理簿」も作成しないといけませんし、雇用に関するその他さまざまな書類も作成後は一定期間保管しないといけないなど、法律によりさまざまなルールが課されているのです。 従業員を雇いはじめた当初の手続き以外に、継続的な事務の負担が発生することも認識しておかないといけません。「労働力を獲得して給与を支払う」という単純な問題と捉えず、労働者を保護するための各種ルールが強制的に適用されること、事務的な負担も多く発生することを認識のうえ、雇用すべきかどうかを決断すべきです。

事務手続きは煩雑ですが、事業をスケールするには従業員の働きも必要です。初めての雇用にあたっては弁護士や社会保険労務士等の専門家にもご相談の上で進めていただければと思います。

売上の帰属時期について分かりやすく解説

取引先から入金があった日に売上として計上するのか、それとも商品を納品した日に計上するのか、適切な会計処理を行うには売上の帰属時期についてのルールを知っておく必要があります。ここでは、売上の帰属時期の具体的な判定基準について分かりやすく解説します。

売上の帰属時期とは

売上の帰属時期、取引による収益(売上)を会計上いつ生じたものとして計上するのかは、会計上・税務上大きな意味を持ちます。これは、簡単にいうと「いつの時点でお金を稼いだと見なすか」というタイミングの問題です。

企業活動に伴いさまざまな取引が日々発生しますが、それらの売上をいつの時点で企業の収益として認識するかが財務諸表の作成や税金の計算にも影響するのです。そのためこのタイミングが適切に扱えていないと、会社の経営状態を正確に把握できなくなったり、税務上の問題が生じたりする可能性があるのです。

発生主義・現金主義・実現主義について

売上や費用の帰属時期を考えるうえで重要な考え方、「発生主義」と「現金主義」、そして「実現主義」があります。

発生主義とは、実際にお金の受け取りがあったかどうかに関わらず、サービスや商品を提供した時点や費用の発生する取引が「発生した時点」で計上する考え方です。費用を計上するときの原則的な考え方で、たとえば、3月に商品を購入し、代金の支払いが4月だった場合でも、3月の費用として計上します。

※個人事業主や小規模な企業では一定の条件下で現金主義による処理も認められる。

一方、現金主義とは実際にお金を受け取った時点で収益等を計上する考え方のことです。先ほどの例では、代金を支払った4月で費用を計上することになります。

これに対し実現主義は売上を計上するときの原則的な考え方で、商品やサービスの提供が完了して対価を受け取る「権利が確定した時点」を基準に収益を計上します。

売上を計上する時期の判断基準

会計上、売上を計上する時期は実現主義に従います。

ポイントは「いつ権利が確定したか」にあるため、実際にお金を受け取った時点ではないことに注意が必要です。資産の譲渡をした場合と役務の影響をした場合とで取り扱いが異なりますので、各パターンを見てみましょう。

資産の譲渡(物品販売等)の場合

資産の譲渡とは、簡単にいえば「モノを売ること」を指します。店舗で商品を売る、自社製品を納品する、会社の不動産を売却する、など形ある物を相手方へ渡して対価を得るタイプの取引が該当します。

そして資産の譲渡にあたる場合の売上の計上時期は、基本的に「モノを相手方へ渡した時点」となり、その考え方を「引渡基準」と呼んだりもします。

《 資産の譲渡が行われた場合の例 》

  • 店頭販売の場合・・・商品を顧客に手渡したとき(レジで精算した日)
  • ネット販売の場合・・・商品が顧客に届いたとき(配達完了日)
  • 工場から直送する場合・・・顧客の指定場所に納品された日
  • 固定資産の売却の場合・・・所有権移転登記が完了した日
  • 有価証券の売却の場合・・・約定日(取引が成立した日)

ただし、大型設備など、設置や調整等を要するモノに関してはその作業を行ったうえで相手方による検収が通常は行われます。製品や設備が正常に動作することを確認し、承認した時点で取引が完了したと評価します。この「検収基準」が採用されるケースもあることは留意しておきましょう。

役務の提供(サービス提供等)の場合

役務の提供とは、「サービスを提供すること」と言い換えることもできます。アドバイスをする、情報を提供する、荷物を運ぶ、など形のないサービスを提供して対価を得る取引が役務の提供に該当します。

この場合の売上の計上時期は、基本的に「サービスの提供が完了した時点」です。

《 役務の提供が行われた場合の例 》

  • コンサルティングの場合・・・報告書を提出して業務が完了した時点
  • 宿泊サービスの場合・・・宿泊が終了した時点
  • 運送サービスの場合・・・荷物が目的地に到着した時点
  • 修理サービスの場合・・・修理が完了して顧客が確認を済ませた時点

役務の提供においては、いつ履行義務が果たされたかがポイントになります。つまり、契約で約束したサービスがいつ完全に提供されたのかに着目します。

ただ、長期間にわたるプロジェクトの場合だとそのすべてが終わってからではなく、進捗度合いに応じて段階的に売上を計上することもあります。また、複数回にわたる役務提供においては、都度の提供を完了した時点で売上を計上したり、契約期間に応じて均等に計上したりする方法もあります。

売上計上に関する実務上の注意点

売上の計上に関しては、証憑類や帳簿を適切に管理すること、取引に関する契約書を作成しておくことに注意しましょう。

注文書、納品書、検収書、請求書などの書類を保管しておいて、後日でも商品の受け渡し日や相手方が商品等について承認をした日などが証明できるようにしておくべきです。また、契約書に納品条件や支払条件、サービス提供の範囲等を明記しておくことで売上時期の判断について客観的に示しやすくなります。

特に期末に近い取引では計上時期が決算の内容に影響するうえ、意図的に売上を前倒ししたり先送りしたりしていると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。計上時期について悩む場合は税理士に相談あるいは業務の代行を依頼することもご検討ください。

消費税の課税対象と非課税対象について具体例を挙げて紹介

事業に取り組んでいる方にとって、消費税は無視できない重要な税目の1つです。よく理解しないまま処理していると正確な税額を把握できず、ご自身にとってもリスクがありますのでご注意ください。

まずは、何が課税対象で何が非課税なのかを把握しておきましょう。

消費税課税の基本的なルール

消費税は、すべての取引に発生するわけではありません。以下の4つが課税の条件です。

  • 日本国内で行う取引であること
    ※日本国外で行う取引は対象外。
  • 事業者が事業として行う取引であること
    ※個人事業者・法人が事業の一環として行う取引が対象で、個人的な譲渡や贈与は対象外。
  • 対価(代金)をもらって行う取引であること
    ※お金や何かの見返りをもらう取引が対象で、無料のサービス提供などは対象外。
  • 資産の売却、貸し出し、またはサービス提供のいずれかであること
    ※商品を売る、建物を貸す、サービスを提供するなどの取引が対象。

これらの条件を満たす取引のことを「課税取引」と呼びます。

課税対象と非課税対象の大きな違い

「消費税がかからない」という表現することもありますが、これを細かく見ると、「課税取引に該当しない取引(不課税取引)」と「課税取引に該当するが法律上課税しないと定められている取引(非課税取引)」が存在しています。

課税取引・売上に消費税がかかり、事業者が納税義務を負う
・ほとんどの商品やサービスの販売が対象
非課税取引・法律で「課税しない」と決められた取引で、消費税はかからない
・土地の売却や賃貸、医療、教育関連の取引など
不課税取引・そもそも消費税の対象にならない取引
・国外での販売、無料サービスなど

このような分類があることも知っておくと良いでしょう。

課税される取引例について

多くの取引には消費税が課税され、次のように例示できます。

  • 物品の販売
    (食料品、衣類、機械、建築材料など、商品を売った場合)
  • サービスの提供
    (美容院、運送業、飲食店、Webサイト制作など、サービスを提供した場合)
  • 建物・設備の賃貸
    (オフィスビル、工場などの建物や設備を貸した場合)
  • 建築・請負業
    (建物の建設や工事を請け負った場合)

なお、建物の賃貸のうち貸し出しの目的が「居住」のものについては課税対象の取引から除外されます。

課税されない取引例について

次に掲げる取引が、法律により「課税しない」と定められている非課税取引です。

  • 土地の売却・賃貸、居住用建物の賃貸などの不動産関連取引
  • 社会保険医療に基づく診療、介護保険サービス、社会福祉事業による福祉サービスなど
  • 学校の授業料、入学金、学校が行う教科書の譲渡など
  • 株式などの有価証券の譲渡や受取利息など

なお、取引内容が非課税かどうかは契約内容や実際の提供状況によって判断されます。

たとえば建物を貸すときに「住宅用」と契約していても、実際に事務所として使用されている場合は、消費税がかかる可能性があります。そのため契約書は実情を的確に反映して作成することも重要です。

これら非課税取引に対し、そもそも消費税の対象にならない不課税取引がこちらです。

  • 寄附金、無償でのサービス提供など対価性がない取引
  • 給与、配当金、保険金の受け取りなど事業取引ではないもの
  • 国外での商品販売、国外の会社への役務提供など

このほか、登記や許可など法律に基づく手数料についても不課税です。

課税事業者と免税事業者の違いも重要

消費税の負担に関しては、事業者のカテゴリも重要です。同じ取引を行っても、事業者によって負担が生じたり、反対に負担が生じなかったりします。

免税事業者「消費税の申告・納付義務が免除されている事業者」のこと。 前々年の課税売上高が1,000万円以下、かつ特定期間(個人は前年上半期、法人は前事業年度開始日から6ヶ月間)の課税売上高または給与等支払額が1,000万円以下であれば免税される。 ※新設法人で資本金1,000万円以上などの場合は除く。 免税事業者は、消費税の申告手続きが不要。
課税事業者「消費税の申告・納付義務がある事業者」のこと。 上記免税事業者の条件を満たさない、もしくは適格請求書(インボイス)発行事業者として登録した場合に課税事業者となる。 課税事業者は、消費税の計算・申告・納付に対応しなければならない。

すべての取引、すべての事業者に消費税が課税されるわけではありません。ルールが複雑で税務処理に困ることもあるかと思いますが、事業者の義務として適切に対応していかなくてはなりません。

また、消費税は利益に対して課税される税金ではないため、赤字であっても納税が発生する可能性があり、スタートアップ企業においても注意が必要です。

消費税は注目度が高いため政治における争点になりやすく、今後も継続的に税制改正により変更される可能性が有りますので都度正しい情報を反映していく必要があります。

しかしながら、経理・税務業務にばかり時間を割くのは得策ではなく、専門的な内容については税理士に対応をお任せいただければと思います。正しい処理の方法、計算や申告に関するアドバイスや代行が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

税務上の優遇措置が受けられる「中小法人」や「中小企業者」とは?

法人税法や租税特別措置法では法人税に関するルールが規律されており、原則的なルールに加え、特定の会社に対する優遇措置についても定められています。措置の内容によって「中小法人」や「中小企業者」などと定義されており、それぞれ若干の違いがあります。

優遇措置の有無が会社の税負担を大きく左右することになるかもしれませんので、定義されている会社の区分を確認しておきましょう。

法人税課税の原則と例外

法人税に関する基本的なルールは法人税法という法律で定められています。そして法人税とは、会社などの法人が事業活動から得た利益に課される税金であり、一般的な税と同じく公平な課税を原則としています。
各社の状況、業績などに関わらず同じ基準で課税され、現在の基本税率は「23.20%」となっています。

しかし、現実の経済では企業の規模や経営状況によって担税力に大きな差があり、特に中小企業は大企業と比べて資金調達力が限られている、経営基盤が比較的脆弱である、景気変動の影響を受けやすい、などの特徴があります。

そこで例外的措置として中小企業を課税上優遇する制度がいくつか設けられているのです。この点において租税特別措置法が重要な役割を担っています。この法律は特定の政策目的の実現を果たすため各税の例外を定めており、たとえば「中小企業の支援」「特定産業の振興」「地域振興」などを目的にさまざまな特例的ルールを置いていて、これに伴い法人税に関する規定も置いてあります。

「資本金1億円以下」が基本的な条件

法人税法および租税特別措置法において税務上の優遇措置を受けるには、「中小法人」や「中小企業者」などの定義に当てはまらないといけません。

また、これらの定義も措置の内容に応じて差異があるため、各措置で定められている定義を確認していかないといけません。

ただ、多くの措置において共通する条件があり、それが「資本金1億円以下」という内容です。資本金の大きさに着目することでまずは会社を区分することができます。

法人税率の軽減措置に関わる「中小法人」

法人税の基本税率は「23.2%」ですが、「中小法人」に該当する会社に関しては2025年4月1日から2027年3月31日まで、年800万円以下の所得金額に対して「15%」の軽減税率を適用することが認められます(本則19%)。
※所得10億円超の中小法人については当該期間中、「17%」が適用されることに注意。

中小法人の定義は比較的シンプルで、以下を満たせば税務上の優遇措置が受けられます。

  • 資本金1億円以下の普通法人であること
  • 資本金5億円以上の法人と完全支配関係がないこと

なお、前3年間の平均所得が15億円を超える法人については適用除外事業者として「15%」ではなく「19%」が適用されます。

そこで中小法人に適用される税率を簡単に整理すると、下表のように区分することができます。

適用対象区分①区分②中小法人に適用される税率
~2027年3月2027年4月以降
年800万円超の部分23.20%
年800万円以下の部分適用除外事業者19%
上記に該当しない単年所得10億円超17%19%
上記に該当しない15%

欠損金の控除限度額に関わる「中小法人等」

欠損金の控除は、過去の赤字(欠損金)を将来の黒字から差し引くことを認める制度です。控除できる金額は当期所得の一定割合に制限されるのですが、「中小法人等」に該当する会社では控除前所得金額が控除限度額となります。

中小法人等と定義されていますが、「等」が付くのは前項で紹介した中小法人に加えて以下の組織も加わるためです。

  • 公益法人等
  • 協同組合等
  • 人格のない社団等

なお、これらの組織は資本金にかかわらず制限のない欠損金の控除が認められます。

貸倒引当金の損金算入に関わる「中小企業者等」

貸倒引当金は将来の貸倒れに備えて計上する引当金のことです。原則として貸倒引当金の損金算入は制限されていますが、「中小企業者等」に該当する会社に関しては一定の損金算入が認められています。

中小企業者等の基本的な要件は中小法人等とおおむね同じですが、公益法人等や人格のない社団等、協同組合等を除く中小法人から適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)を対象外としています。また、法定繰入率の適用において、相互会社と外国相互会社は対象外とするなど細かな規定があります。

交際費等の損金算入限度額に関わる「中小法人等」

交際費は原則として損金不算入ですが、「中小法人等」に該当する会社に関しては、年800万円までの損金算入が認められています。

この優遇措置における中小法人等の特色は、外国法人も対象となり得るという点にあり、より広い範囲の法人を対象としています。また、いくつかの措置では対象外とされている適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)でもこの措置に関しては適用を受けられます。

その他租税特別措置に関わる「中小企業者」

研究開発税制や設備投資促進税制など、さまざまな政策目的に基づく優遇措置がほかにもあります。これらの措置における「中小企業者」の定義はより厳格で、以下の点を考慮して判定する必要があります。

  • 資本金1億円以下
  • 従業員数1,000人以下
  • 大規模法人からの株式保有割合の制限

また、適用除外事業者(前3年間の平均所得が15億円を超える法人)に関してはこれらの措置が受けられません。

なお、税制は毎年のように改正が繰り返されていますので、詳細についてはその都度専門家も頼りながら確認することをお勧めします。