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役員報酬を決めるときに知っておきたい税金(法人税・所得税)との関係

役員報酬を決めるときは、法人税と所得税のバランスを考慮すること、そして適切な手続きによりこれを定めることを意識してください。

会社役員のする仕事への対価については、従業員に対する給与とは異なる取り扱いが必要ですので、問題が起こらないよう当記事にて大事なポイントを押さえておいてください。

役員報酬の大きさと税金の関係

まずは役員報酬の大きさが法人税や所得税にどう影響するのか、税負担について言及していきます。

役員報酬で法人税の負担は減らせる

会社が支払う法人税の大きさは、会社の利益の大きさに対応します。そしてこの利益の大きさは、売上と経費のバランスで定まり、同じ売上高に対して多くの経費を使っているときはその分利益は小さくなります。

役員報酬に関しては、一定の要件を満たす場合は、従業員に支払う賃金と同じように会社の税務上の経費として処理することが可能でこれを「損金算入」といいます。

損金算入された役員報酬はその他経費と同じく利益から差し引くことができますので、結果として会社の利益は減少し、法人税の負担も小さくなるのです。

しかし、節税ばかり意識していると会社の利益を圧迫してしまい、資金繰りが悪化する可能性もあります。

役員個人の所得税等がかかる

役員報酬を増やすことで会社の法人税を減らせる反面、役員個人にかかる所得税や社会保険料は大きくなってしまいます。

役員報酬は従業員が給与を受け取ったときと同じように「給与所得」として処理されますので、原則通り累進課税制度に従い所得が大きいほど大きな税率が適用されます。

そのため、会社の経営状況や役員個人の状況などを総合的に考慮し、法人税の節税効果と所得税や社会保険料の増加のバランスを考えながら適切な役員報酬を設定することが重要といえます。税金を意識するときは税理士に相談し、最適な報酬の額を検討しましょう。

金額を決めるときのポイント

役員報酬の額を決めるときはさまざまな要素を考慮すべきです。特に意識しておきたいポイントを下表にまとめました。

役員報酬の額を決めるときのポイント
毎月の利益や固定費の予測を立てておく毎月の売上予測、経費(人件費、家賃、光熱費など)を算出し、そこから得られる利益を把握。この利益に見合った金額に設定することが重要。また、固定費を差し引いた上で、会社に残る資金も考慮する。
法人税と所得税等のバランスを考慮する上記の通り、役員報酬を増やすと会社の法人税は軽減されるが、役員個人の所得税等が増加する。 法人と個人、それぞれが許容できる税負担やバランスを考慮して金額を定める。
業務内容に見合った金額にする役員の職務内容、責任、貢献度に見合った金額であるべき。同業他社や事業内容が類似する企業の役員報酬を参考にしながら、適切な金額を考えると良い。また、実態に見合わない不当に高額な役員報酬だと税務署が認めない可能性もあるため注意が必要。
従業員との格差への配慮役員や従業員、それぞれの仕事内容に見合った金額とすることは大事であるが、あまりに役員報酬との差が大きいと従業員の働くモチベーションが下がってしまう。従業員の昇給やボーナスがない状況下で役員報酬だけ増額されていると特に反感を買いやすいため要注意。

会社の状況は常に変化するため、一度定めた役員報酬も定期的に見直しましょう。その際、会社の将来的な成長を見据えること、役員のモチベーションを維持することに着目すると良いでしょう。

※ただし、原則として役員報酬の増減は事業年度開始後3か月以内の改定に限って認められますので、やむを得ない事情があり期中の変更を行わざるを得ない場合は事前に税理士に相談しましょう。

なお、役員のモチベーションを上げる方法には、役員報酬以外にも「ストックオプション制度」などのインセンティブ報酬を取り入れるというやり方もあります。

役員報酬を定める手続きが必要

株式会社においては、株主総会で役員報酬を決める必要があります。所有と経営が分かれている株式会社において役員が報酬を取り過ぎると会社所有者である株主の利益が侵害されるおそれがあるためです。

とはいえ多くの中小企業では経営者である取締役が株主を兼ねていることが多いでしょうし、取締役兼株主が1人というケースも珍しくありません。その場合は法人とはいっても自分1人ですべて決めることができます。

原則は株主総会での決議

役員とは別に株主がいるとき、役員報酬を決める原則的方法は「株主総会での決議」であることを知っておいてください。

経営陣だけで勝手に決めることは許されず、株主総会を開いてそこで承認を受けなくてはなりません。まずは役員報酬に関する議案を提出し、そこで“普通決議”にて可決されれば、その金額を支給することができます。

定款を使ったやり方もある

役員報酬を変更するたびに議決を取るのが面倒だという場合、「定款」という会社の根本原則を使って少し簡略化させましょう。

例えば定款に「すべての取締役に関する報酬総額の限度額」を定めておけば、その範囲内に限り、取締役会で具体的な金額を定めることができます。取締役会とは経営陣だけでの会議ですので、迅速・柔軟に報酬について話し合うことができるでしょう。

ただしこの限度額を変更するときは「定款変更」を要しますので、株主総会の“特別決議”が必要です。“普通決議”に比べて要件が厳しくなりますのでこの点も留意のうえ、定款を活用しましょう。

創業計画書について|記載事項や押さえておきたいポイントなど作成方法を紹介

創業計画書は、会社や事業の立ち上げの際に作る事業計画書のことです。事業の見通しを立てるため、金融機関から創業融資を受けるため、などを目的に作成します。特に創業段階では実績がなく不確定要素も多いことから、創業計画書は重要な存在といえます。

当記事では「創業計画書を作成するにあたって知っておきたいこと」をまとめましたので、始めての会社設立を検討している方、あるいは会社を立ち上げたばかりの方などは参考にしてください。

創業計画書とは

創業計画書とは、これから始める事業の内容、目標、戦略などを具体的にまとめた書類です。「ビジネスの設計図」とも言える存在です。

計画書には、事業のアイデアだけでなく、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、財務計画など、多岐にわたる情報を盛り込みます。客観性・具体性のある内容とすることで、金融機関など外部の方にも当該事業の将来性や実現可能性を評価してもらいやすくなります。

どんなときに作成するのか

創業計画書は事業の見通しを立てるために作られます。今始めようとしている事業にはどのような課題があるのか、どれほどの売上高が見込まれて、どれだけの経費が発生し、どれだけの利益が出せるのか、こういった情報を整理していきこれからの予測を立てるのです。

事業がスタートしていませんのでどうしても想像に頼る部分も出てきてしまいますが、客観性のある数値・相場も参照して解像度を上げていくことで実現可能性の高い見通しを立てることもできます。そうすると当該事業で見直すべきポイントや注力すべきポイントなども明らかとなり、事業の失敗も少しは避けやすくなります。

また、事業の見通しがわかりやすく整理されることによって、創業計画書を自社の評価材料として使うこともできます。活用が想定される一番のシーンは「創業融資」です。融資を行う金融機関は、相手方の返済能力を審査してからでなければお金を貸すことはできません。返済したお金が約束通りに返ってこないリスクがあるからです。

特に創業段階だと安定して利益が出せない危険性が高いですし、今後どうなるのか、過去の実績がなく評価しづらいです。そこで創業計画書が役立ちます。不安要素が多いものの、創業計画書がしっかりと作りこまれていれば「この計画通りにいけば返済してもらえそうだ」という判断もすることができます。

創業計画書の作成方法

決まったフォーマットはありませんが、創業計画書を作成するときは次の事項を盛り込むよう意識しておきましょう。

  • 創業の背景や目的
  • 市場分析や戦略の内容
  • 必要な資金の内訳
  • 売上高や利益の根拠

創業の背景や目的を記載する

創業を検討している方についての職歴や具体的な実績、なぜ創業を決意したのか(動機)、そしてその事業が目的としていること、などを簡潔に記載しましょう。

特に審査の観点からは、長々と動機について記載する必要はありません。計画書に説得力を持たせられるような背景等があればその点をアピールしておきましょう。

市場分析や戦略の内容を記載する

これから始める事業ではどんな商品やサービスを取り扱うのかをわかりやすく示しましょう。そしてターゲットとする顧客、顧客にリーチする手段、競合他社との競争に勝つための戦略、などを具体的にまとめます。

その際は自社のことだけに目を向けたのでは不十分です。周りに意識を向け、他社がどのような活動をしているのか、昨今の市場動向はどうなのか、消費者の意識はどのように変化しているのか、これらの調査結果を反映させると説得力も増します。

必要な資金の内訳を記載する

資金調達を行う場合はただ単に「2,000万円が必要」と伝えるのではなく、その金額が必要な理由についても示す必要があります。

そこで内訳についても具体的に記載し、必要資金の過不足が生じないように留意してください。またその際は「設備資金」と「運転資金」に分けて考えることが大事です。融資の審査の観点からは、スモールスタートでまずは運転資金から備えて実績を積んでおくのが有効といえます。

売上高や利益の根拠を記載する

売上高の大きさ、経費の大きさ、利益の大きさについて明記しましょう。またその数字の根拠も示す必要があります。

これらの情報は、事業の見通しを判断するうえで特に重要といえます。

希望的観測で「毎月100万円くらいの売上は出るだろう」と考えるのではなく、なぜその金額になるのかを具体的に考えておく必要があります。立地の良さ、当該エリアにおける人口の多さや市民の属性、競合他社の状況なども踏まえて計算を行いましょう。

そうやって一つひとつの数字を考えていくと、一定以上の利益を出すために「日々どれだけの顧客が来店しないといけないのか」「客単価はいくら以上であるべきか」「人件費はいくらまで出せそうか」「家賃はいくら以下にしないといけないか」などが見えてきます。

創業計画書を策定するときのポイント

最後に、創業計画書の内容を考えるときに大事なポイントを整理します。以下の点を押さえて作成を進めていくと良いでしょう。

  • 具体的に書くこと
    (ぼんやりとした抽象的な表現は避け、具体的な数字や根拠を提示する。)
  • 分かりやすく書く
    (専門用語の多用は避けて誰にでも理解しやすい表現を使うこと、また、見やすさを意識した構成とすることも大事。)
  • 実現可能な計画を立てる
    (無理な計画、希望的観測に基づく計画は避け、実現可能性を意識して目標を設定する。)

資金調達の種類と成功するためのポイント

土地や建物、機械、備品、車両など、事業を立ち上げるときや規模を拡大していくときには大きな設備資金が必要となります。また材料や商品の仕入れ、従業員への人件費などの運転資金も確保しておくことが重要です。

自己資金でカバーできた方が事業も安定させやすいですが、外部から資金を調達することで事業の成長を加速させることも可能です。この資金調達の方法にはどんな種類があるのか、当記事で紹介します。

主な資金調達の種類

あらかじめ蓄えておいた預貯金などの自己資金を使う方法や、金融機関からの借入、補助金や助成金の活用、出資、などの資金調達方法もあります。

それぞれの特徴は次のように整理できます。

資金調達の方法特徴
自己資金を蓄える・返済不要で資金使途の制限もない。
・立ち上げ当初の、経営が不安定な時期に返済による圧迫がない。
・銀行借入をするときの審査でも自己資金割合の大きさがかかわってくるため、必要な資金のうち3割ほどは用意できていると良い。
金融機関からの借入・毎月返済が必要。
・事業実績がないと審査に通るのが難しくなるが、創業時期に適した制度が用意されていることもあって、資金調達の手法としてはメジャー。
・日々の取引における決済でも利用することになるため、金融機関とは良い関係性を築いておくことが大切。
補助金や助成金の受給・開業や事業承継、新たな取り組み、就労環境改善など、特定の取り組みに対して一定額を受け取ることができる。
・返済は不要であるが、後払いが基本。
・原則として申請手続きのため、手間も大きい。
第三者から出資を受ける・投資家、ベンチャーキャピタルから出資を受ける。
・クラウドファンディングにより不特定多数から出資を受けることもできる。
・知名度や将来性があれば、現時点の純資産価値と比較すると多額の資金調達をすることができる場合もある。
・条件についても協議により自由に定められる。
・出資を受けることで創業者の保有持分が減少するため、出資を受ける際には慎重な検討が必要。
知人や親族からの借入・借り入れは金融機関との取引が一般的であるが、対応してくれる人物が身近にいればその方からお金を借りることもできる。
・金融機関ほど厳格な手続や審査が必要なく、返済計画などのも柔軟に受け入れてもらいやすい。
・約束通りの返済がなされない場合、関係性が悪化して私生活にも影響してしまう。

共通するポイント

資金調達をする方法には、上述の通りさまざまな種類があります。それぞれ必要な手続の内容や難易度、調達できる規模などに違いがあるものの、事前準備として「綿密な事業計画を立てておくこと」が共通する重要なポイントといえます。

「だいたいこれくらいあれば足りるだろう」「しばらく経てば売上も伸びてくるだろう」などとあいまいな予測しか立てていない場合、まず、いくら調達すべきかが明確にできません。

また、売上高や利益の大きさが根拠ある数字で計算できていないと、返済やリターンの見込みが評価されません。

特に他人の資金を当てにするのであれば、自社がどんな事業をして、何のためにいくら必要なのか、売上や利益はどれくらい出るのか、を明確にしておく必要があります。一般的にはこれらの情報を事業計画書としてまとめていきます。
わかりやすく説得的な事業計画書が作れていると、相手方からの信用も得やすくなります。経営者自身も今後の見通しが立てやすくなりますので事前に計画を策定しておくことの利点は大きいです。

自己資金を準備するときのポイント

必要資金のうちできるだけ大きな割合を自己資金で確保できている必要があります。資金が使いやすいだけでなく、将来借入など他の資金調達をするときの審査にも影響があるためです。

そこで業種にもよりますが、借入時には基本的に「必要資金の3割以上」を自己資金で確保しておきましょう。可能なら5割を確保します。

返済スケジュールが現実的であるかという点を事業計画書の作成時に検討した上で、余裕を持った預金状況になるように設定すべきです。

金融機関からの借入のポイント

「金融機関からの借入」は資金調達として一般的な手法です。借入にあたっては、事前に必要資金を把握しておくことはもちろん、金融機関の選択も審査に影響があるためよく考えて選ぶようにしましょう。金融機関により方針が違いますので、同じ事業内容・同じ事業計画書の準備をしたとしても、審査の通過率は異なります。

例えばメガバンクだと開業時点での少額融資に前向きでないケースも多いです。その反面、全国に支店があり利便性が高いことから預金取引の相手方としては適しています。

地方銀行は相手方によってサービス内容や借入に対する考え方の差が大きく異なります。活動拠点となるエリアの地方銀行をいくつか当たって、融資に積極的なところを探してみると良いでしょう。
また、一般にあまり馴染みはないかもしれませんが信用金庫や信用組合との取引も視野に入れてみましょう。地域の事業者に対する支援が充実しており、比較的規模の小さな事業に対する融資にも積極的であるケースが多いです。

創業融資なら日本政策金融公庫も検討

日本政策金融公庫は政府が株式を保有する政府系金融機関です。民間の金融機関とは異なる特徴を持っていて、創業期、創業して間もない事業者でも利用しやすい融資制度を多く展開しています。

一般的な借入だと3割程度を自己資金でカバーすることが求められていますが、日本政策金融公庫であれば「必要資金の1割」を要件としている融資制度もあります。

補助金や助成金を活用するポイント

補助金や助成金の支給を受けようとするのであれば、形式的な要件を確実にクリアすることが重要です。

借入や出資は相手方との交渉により成り立ちますので、ある程度自由度があります。しかし補助金や助成金は行政が相手方であり、所定の要件を漏れなくクリアすること、決まった期間内に申請を行うことなどに注意しないと調達ができません。

ただ審査基準は明確ですので、各種制度に詳しい専門家の協力も得ながら手続を進めていけば成功をさせやすくなります。

出資を受けるポイント

個人投資家やベンチャーキャピタル(出資を業務とする組織)に出資を求める場合、「企業の成長性」「事業の新規性や将来性」をアピールすることが重要です。

事業計画書にもその点をアピールする内容を組み入れましょう。

例えば借入だと「返済の確実性」が注視されるため、事業が安定して長く活動できること、着実に利益が出せることをアピールするように作成します。
一方、出資だと「自分たちが得られるメリット」に出資者たちは注目していますので、これからの展開や期待感のあるリターンを示す必要があります。借入をするとき以上に事業計画書を作り込む必要があるでしょう。

個人事業主と法人|立ち上げ方法・運営方法・税金などの違いを比較

個人事業主として事業を始めることも、法人として事業を始めることも可能です。ただし立ち上げにあたっての手続や費用、その後継続的に発生する税務や税金の負担などにも差があります。

個人事業主と法人を選択できる状況にあるのなら、それぞれの特徴と違いを理解してから決断すると良いでしょう。現在個人事業主として活動している方が法人成りするかどうかを検討する際にも着目しておきたいポイントです。

立ち上げの方法

事業内容によっては設備を準備したり店舗の準備をしたり、許認可を取得したりなど、やらないといけないことはありますが、その前提として事業主体が存在していなければなりません。

個人事業主の場合はその「個人(自然人)」が主体となりますので、最低限やるべきことといえば開業届の提出くらいです。税務署に、開業をしたことの届出を行うのです。

一方、会社を立ち上げる場合は「法人」が主体となります。法律上の制度として人格を与えられることにより存在が認められ、そのためには①定款の作成や②出資の履行、③設立登記といった所定の手続を行わなければなりません。

法人の方が費用は大きい

法人の場合、立ち上げをするための手続で費用が発生します。

株式会社なら定款の認証を受けるために3万円から5万円の手数料が発生しますし、電子定款ではなく原本を紙で作成したときは4万円の印紙税も発生します。

設立登記には登録免許税として最低6万円の負担は発生します。株式会社と合同会社では「資本金の0.7%」にあたる税額が発生し、株式会社なら最低でも15万円は納付しないといけません。

費用とは少し異なりますが、出資金も納めなければなりません。昔のように資本金の最低額(数百万円以上)の定めはないため1円の資本金でも設立は可能ですが、設立当初の運転資金を確保する意味でも300万円ほどは用意するのが一般的です。

経営判断や運営の方法

個人事業主の場合、経営者自身が事業主体であり、意思決定についてもその個人が決断できます。従業員がいる場合でも会社における役員とは異なりますので、事業者1人で重要な経営判断を下すことができるのです。

法人においても1人会社であれば実質意思決定の方法に差はありません。

しかし役員が複数人存在する組織として運営する場合、代表者であっても、1人で何でも決めることはできません。株式会社だとさらに、決定事項によっては株主の意見も聴かなくてはなりません。

法人の方が意思決定は大変

1人会社を除き、法人の場合は意思決定に関与する人物が複数人登場します。それだけ慎重に経営判断をすることができ、多くの知見を取り入れながらより高度な戦略を打ち立てることができる、ともいえますが、やはり負担も増えます。

取締役会や株主総会での決議などが求められ、1つの事柄を決めるのにも時間とコストがかかってしまうのです。

比較的事業規模が小さく、スピード感を持って方針決定をしていきたいのであれば個人事業主の方が活動しやすいかもしれません。ただ、事業規模が大きくなってくると個人事業主として続けるのが難しくなってくることもあります。

税金のかかり方や税務

個人事業主の場合、売上から経費等を差し引いて算出される利益は、その個人が受け取る所得として「所得税」の課税対象になります。

一方、法人の場合は「法人税」が課税され、税率など適用されるルールにも違いがあります。

さらに、必要な税務の内容にも差があります。例えば「貸借対照表」「損益計算書」などの決算書のほか、「株主資本等変動計算書」や「個別注記表」、「キャッシュフロー計算書」など、会社の種類や株式の上場等に応じて作成すべき書類が増えます。

また個人だと住民税について自分自身で計算をしたり申告をしたりする必要がありませんが、法人は住民税(「法人住民税」とも呼ぶ。)に関しても申告作業が発生します。

法人の方が小さい税負担で済むこともある

税務の負担は基本的に法人の方が大きくなりますが、法人の方が節税効果を高めやすいです。

これには大きく2つの理由があります。

  • 経費計上できる範囲が法人の方が比較的広い
  • 所得税の方が最高税率は高い

例えば経営者個人への役員報酬や家族従業員への給与、生命保険料などを経費にすることができたり、社宅を活用して節税効果が高めたりなど、工夫できる範囲が法人の方が広がるのです。

また税率に関してですが、所得税の場合は累進課税に基づき5%~45%の税率が適用され、大きな利益が出ているほど割合大きな税負担が発生します。しかし法人税では基本的に一律23.2%の税率が適用され、規模の小さい法人においては一定額まで軽減税率が適用されます。
そのため大きな利益が発生している場合、個人事業主ではなく法人の方が税負担を小さくできる可能性が高くなります。

信用の得やすさにも差がある

「信用」は事業者にとってとても重要なものです。一般消費者、他社から信用されていないと取引を始めることは困難で、商品・サービス等の提供をすることすらできません。

信用は数値化されるものではないため個人事業主と法人の差を明確に把握することはできませんが、一般的には法人である方が信用を得やすいと考えられています。

法人だと登記が必須で存在確認が取りやすいこと、資本金が確保されていること、組織化されていて運営が比較的厳格であることなど、いくつか理由は考えられます。
また、税務の負担が大きいことから多くの法人は顧問税理士を付けています。専門家と顧問契約を交わしていることである程度運営の適正性が担保されますし、この点も法人の信用力に関わっていると考えられます。

一概に大きな差があるとは言い切れませんが、個人事業主として活動をするのか法人として活動をするのか、当記事で触れたような違いにも着目しながら判断をすると良いでしょう。

株式会社と合同会社~それぞれのメリット・デメリットとは?~

会社を立ち上げるときや、個人事業主から法人成りするとき、会社の形態を選択する必要があります。メジャーなものとしては「株式会社」がありますが、最近では「合同会社」が設立されることも増えてきています。

「株式会社と合同会社、どちらにしようか」と悩むこともあるかもしれません。このような方に向けて当記事では両社の特徴を比較し、それぞれのメリット・デメリットを紹介していきます。

株式会社と合同会社は共通点が多い

多種多様な法人があり、「会社」もここに分類されます。そして会社には株式会社や合同会社、そして合資会社、合名会社があり、それぞれに異なる性質を持っています。

例えば合名会社は社員がすべて無限責任で、会社債権者から社員が直接請求を受けるリスクを持っています。合資会社はこの無限責任社員と有限責任社員が混在する会社形態で、合同会社は有限責任社員のみで構成される会社形態です。

株式会社における社員(=株主)も有限責任しか持たず、この点においては合同会社と変わりはありません。会社債権者からの請求が出資分に制限されるため、攻めたビジネス展開もしやすいのです。

いずれも営利法人である点も共通しています。つまり、いずれの会社も「事業活動から得られた利益を社員に分配する法人」ということです。
合名会社や合資会社も営利法人です。他方、一般社団法人やNPO法人などは非営利法人に該当します。

法人税の負担も同じ

事業活動により利益が発生したとき、利益の大きさに対応する法人税等の負担が必要になります。

株式会社と合同会社における税務の内容は完全に一緒ということではなく、作成すべき計算書類等も若干の違いがあります。しかし法人税などの税金の負担に関しては違いがありません。

例えば同じ「法人」という枠組みに入る団体でも、社会福祉法人や学校法人、NPO法人などにはすべての所得に法人税が課税されるわけではありません。

これに対し税制上「普通法人」として区分される株式会社や合同会社は、すべての所得に対して課税がなされます。会社の種類が違うことによる差はありません。種類の違いによる税率の差などもありません。

作成する計算書類等には違いがある

会社として活動を続けていくには、日々の取引に関する金額の記録、計算の記録などを残していかないといけません。そこで帳簿などを作成する業務が発生し、積み上げた記録を基に決算、税務申告の作業を進めていくこととなります。

そして株式会社においては、計算書類等として次の書類を作成することになります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 附属明細書
  • 個別注記書
  • 事業報告書
  • 株主資本等変動計算書

また、決算公告の義務が課されており、貸借対照表の公開もしないといけません。

一方の合同会社では「株主資本等変動計算書」ではなく「社員等変動計算書」を作成し、「附属明細書」「事業報告書」に関しては作成することが法律上義務付けられていません。
また、決算公告の義務がなく、税務の内容については違いがあるといえるでしょう。

株式会社のメリット・デメリット

株式会社のメリットとデメリットを下表にまとめました。

株式会社のメリット
社員としての立場・権限を自由に譲渡できる株式会社における社員たる地位、権限は「株式」に集約されている。原則として株式は自由な譲渡が可能で、社員になることも社員を辞めることも簡単にできる。 合同会社の場合はこれが認められない。
株式を使った大規模な資金調達ができる株式の譲渡が自由である性質を活かし、自社の株式を市場に流通させる(上場する)ことで、規模の大きな資金調達も可能となる。
知名度が高い「株式会社」という名称は一般に広く知られており、比較的信用を獲得しやすいとも考えられる。
株式会社のデメリット
役員の再任にコストがかかる株式会社では経営者である役員と出資者である社員(株主)が一致しないことも多い。そこで役員の持つ大きな権限に対する抑止として任期が定められている。 原則として取締役は2年(定款に定めて最大10年まで伸長ができる)で任期を終えることになり、再任をするには手続上の手間や費用など、コストが発生する。
設立時の原始定款に対する認証が必要会社を立ち上げるとき、どの会社でも定款が必要になるが、株式会社においてはさらに「認証」の手続が必須。 利害関係が比較的広いことから、公証役場にて、公証人に内容をチェックしてもらうことが義務付けられている。この認証手続にも費用が発生する。
決算公告が義務決算公告を行うことが法律上義務付けられている。手間と費用が発生する上、財務状況が誰でも見られるようになる。

合同会社のメリット・デメリット

合同会社のメリットとデメリットについてまとめたのが下表です。

合同会社のメリット
役員の任期がない合同会社では社員(出資者)=役員となるため、任期の定めによる抑止力をはたらかせる必要がない。そこで一定期間おきに再任をする手間も費用も発生せず、企業活動にかかるランニングコストを株式会社より抑えられる。
設立手続が簡略化されておりコストも低い株式会社に比べて設立手続が簡単。コストも低い。 例えば定款の認証が不要で、認証手数料も発生しない。設立登記にかかる登録免許税も、最低額が株式会社の半額以下である。
決算公告の義務がない毎年決算公告を行う必要がなく、手間と費用の負担が少ない。
柔軟かつ迅速な意思決定がしやすい株式会社では重大な決断を株主総会で行う必要があり、その決議要件も法律で厳格に定められている。招集手続や当日での対応などの負担も生まれる。 合同会社では社員による協議で決することができ、比較的柔軟に意思決定がしやすく、機動的に方針を決めることができる。
合同会社のデメリット
出資分を自由に譲渡できない社員間の結びつきの強さは良さでもあるが、株式会社のように譲渡がなかなかできない。
資金調達の手段が限られる株式を上場して広く投資家から資金を募ることができず、手段が株式会社に比べると少ない。
知名度が低い「合同会社」という名称に聞き馴染みのない一般消費者もいるため、信用の獲得が株式会社より難しくなるケースがある。ただし年々合同会社の件数は増えており徐々に知名度は上がってきている。
社員間の対立が与える経営への影響が大きい社員間で方針や考え方が揃っていれば迅速な意思決定ができるが、その反面、意見が合わず対立関係が強まったときの悪影響も大きい。

ここでは一般論としての特徴を紹介しましたが、重要なのは各々の事情と照らし合わせたときのメリットやデメリットです。「一般的にはデメリットとされていることであっても自社にはあまり関係がない」というケースもあります。

そこで、経営方針や、やろうとしている事業内容に最適な方を選択することが大事といえます。会社設立に強い専門家を頼りに、まずは相談をすることから始めると良いでしょう。

法人の種類と特徴を解説|営利・非営利、事業内容、課税方法の違いなど

法人には「株式会社」や「合同会社」、「一般社団法人」や「一般財団法人」、「NPO法人」など様々な種類があります。それぞれ設立要件やできる事業内容、税金の負担などに違いがありますので、何か事業を始めるときは法人の選択にも注意が必要です。

ここではその区分と、よく設立されている法人についてそれぞれの特徴を紹介していきます。

法人の種類と区分

法人には、次に挙げるもの、その他様々な種類が存在しています。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合資会社
  • 合名会社
  • 一般社団法人
  • 公益社団法人
  • 一般財団法人
  • 公益財団法人
  • NPO法人 など

これらの法人を区分する方法はいくつかあります。例えば営利法人と非営利法人の違い、できる事業内容の違い、税金の課税方法違いなどです。

営利法人と非営利法人の違い

営利と非営利の違いについては「利益を求めるかどうか」「儲けを出すかどうか」といったイメージをされていることもあります。

しかし、正しくは「構成員に利益が還元されるかどうか」の違いです。

株式会社なら構成員である株主に利益が還元されるのはよく知られていることで、その性質上、営利法人に該当します。合同会社や合資会社、合名会社も同様です。

一方、構成員に利益分配を行わない非営利法人には一般社団法人、一般財団法人などがあります。一般社団法人などは非営利法人ですが、収益事業を遂行することに問題はありませんし、運営を続けていくにはある程度利益を出すことも必要です。

事業内容の違い

法人の種類によってはできる事業内容に制限がかかっています。

株式会社や合同会社であれば制限なく様々な事業を営むことが可能ですが、公益社団法人や公益財団法人のような公益法人については公益性のある特定の事業(学術研究、社会福祉事業、環境保全事業、教育事業など)を主として営む必要があります。

また、「特定非営利活動法人」であるNPO法人も当然特定の活動しか行うことが認められていません。他にも宗教法人や医療法人など、特定の事業を前提とした法人については事業内容に制限がかかります。

課税方法の違い

個人に対しては画一的に所得税が適用されます。実際に納付する税金は人により異なりますが、同じルールに基づいて課税されます。

しかし法人の場合は法人の種類に応じてルールが異なります。特に公益性のある法人については、特定の事業から得られる所得が非課税になることもあり、税負担に差が出るケースもあります。

株式会社/合同会社について(営利法人)

株式会社は営利法人の1種で、株式を割り当てられた株主が会社構成員(社員)となります。最終的な意思決定は株主総会で決せられ、取締役が会社から委任を受けて経営の役割を担います。また、株式は譲渡できるのが原則であり、社員(株主)の流動性が高いのも特徴です。

合同会社も株式会社に並ぶ代表的な営利法人です。設立件数は歴史の長い株式会社の方が多いものの、徐々に設立件数を伸ばしてきており、知名度も上がってきています。社員が有限責任であるなど株式会社との共通点も多いですが、社員の流動性がほとんどなく、人と人の結びつきが強いという特徴を持ちます。

その他、設立コスト(合同会社の方が低コスト)、役員の任期(株式会社では取締役の任期は原則2年、合同会社では制限なし)、公告の義務(合同会社には義務がない)などに違いがあります。

他方、法人税の課税については中小法人ならいずれも15%(課税所得800万円以下の部分)、23.20%(課税所得800万円超の部分)と同じ税率が適用されます。

合資会社や合名会社との違い

株式会社や合同会社とよく比較される法人に「合資会社」と「合名会社」があります。

これらは合同会社と同じ持分会社に区分される法人で、株式会社のように社員の流動性が高くありません。所有と経営が一致し、出資者が経営者として活動することになります。

ただ、合同会社とは違い、無限責任を負う社員が存在しています。会社として債務を弁済することができない場合は、社員がその責任追及を受けるリスクを負います。

  • 合資会社:有限責任社員と無限責任社員の両方がいる
  • 合名会社:有限責任社員のみで構成される

一般社団法人/一般財団法人について(非営利法人)

非営利法人の中でよく知られている法人には一般社団法人と一般財団法人がいます。

  • 一般社団法人:人の集まりが基礎となり成立する法人
  • 一般財団法人:財産の集まりが基礎となり成立する法人

どちらも社員に利益分配ができませんが、公益性のない事業ができないわけでもありません。

課税方法についても両社ともに共通しており、株式会社等とは異なる性質を持っています。非営利の事業から得た所得については非課税。その他収益事業から生じた所得については原則通りの法人税が課税されます。

なお、一般社団法人や一般財団法人は、公益認定申請を行うことで「公益社団法人」や「公益財団法人」になることができます。公益性を持たせることなど厳しい認定基準を満たし、その状態を維持することが求められますが、より手厚い税制上の優遇措置を受けることが可能となります。

NPO法人について(非営利法人)

NPO法人は非営利法人であって、社会貢献に資する特定の活動のみが認められている法人です。

学術研究や文化・芸術・スポーツに関する事業、他にも、社会教育・観光・まちづくり・災害救援などに関する事業、全20種のどれかに限って活動することができます。

これらの事業から生じた所得については法人税が非課税です。制限はあるものの、税金の面では大きく優遇されている法人です。

法人の種類に悩んでいる方は、法人設立に強い専門家にアドバイスを求めましょう。設立手続や事業内容の違い、税金の負担の違いなどを考慮して、最適な答えに近づくことができます。

会社設立で必要な作業~登記までの流れや税務署に提出する書類について~

会社を設立するまでにはいくつかの手続を進める必要があり、手間と時間、費用がかかります。また、設立登記によって法人格が与えられてからも税務署に法人設立届出書を提出するなど、しないといけない作業がたくさんあります。

場合により省略できるもの、逆に、さらに必要になるものも出てきますが、ここでは株式会社における基本的な設立の流れや届出書類について解説をしていきます。

会社設立手続の基本的な流れ

会社の立ち上げにはまず定款の作成が必要です。そして株式会社においてはその定款の認証を受けなくてはなりません。その後株式の割当と出資の履行を経て、設立登記を行います。登記を行うことで当該会社は法人格を得ることができます。

ここまでの基本的な手続内容を以下に示します。

  1. 定款の作成
    定款は会社にとってもっとも重要な規則。会社名にあたる「商号」など、様々な事項を発起人らで決定していき、定款としてまとめていく。そして作成した定款について、公証人による認証(法律に則り定款が作成されたことを証明する手続き)を受けなければならない。
  2. 出資の履行
    株式会社では、発起人が少なくとも1株以上を引き受けなければならない。発行する株式数、金額を定め、誰が何株引き受けるのかを決めて出資の履行(引き受ける株式に対応する金銭の払い込み)をする。
  3. 設立登記の申請
    法務局(登記所)で節理登記を行うことで、法人格が与えられ、会社として成立する。その際「認証を受けた定款」「出資が履行されたことを示す払込証明書」「収入印紙貼付台紙(登録免許税分の収入印紙の貼り付け)」「印鑑届出書(会社の実印を登録するための書類)」を提出する。

設立手続自体はそれほど難しいものではありません。ただし会社法に則って適正に手続を進めていく必要があり、定款の作成方法や出資方法など、ポイントを押さえておくことが大事になってきます。freee登記などのサービスを使ってすべてご自身で対応することも可能ですが、手続内容に関して相談が必要であれば税理士、あるいは司法書士など会社設立に強い専門家に依頼すると良いでしょう。

設立後も税務関係の書類提出が必要

登記申請が完了すれば、とりあえず会社として成立します。しかし会社設立に際して、さらに税務関係の書類や社会保険関係の書類提出が必要になります。

社会保険関係で手続が必要になるのは、従業員を雇ったときです。年金事務所や労働基準監督署、ハローワークなど、各所で手続を行います。ご自身で対応していくことも可能ではありますが、一連の手続は煩雑なため社会保険労務士に依頼することをおすすめします。

税務関係に関しても多数の手続が発生します。次のように、必ず提出しないといけないものから、必要に応じて提出するものなど様々です。

  • (必須)法人設立届出書
  • (雇用したときは必須)給与支払事務所等の開設届出書
  • (資本金1,000万円以上のときは必須)消費税の新設法人に該当する旨の届出書
  • (任意)青色申告の承認申請書
  • (任意)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • (任意)消費税課税事業者選択届出書
  • (任意)消費税簡易課税制度選択届出書
  • (任意)適格請求書発行事業者の登録申請書
  • (任意)申告期限の延長の特例の申請書
  • (任意)減価償却資産の償却方法の届出書
  • (任意)棚卸資産の評価方法の届出書

提出が必須の書類

税務関係のうち、提出が必須とされている書類は「法人設立届出書」です。税務署に対して、法人を設立した旨を知らせる届出書を作成し、提出します。この作業は設立登記を行ってから2ヶ月以内に済ませなくてはなりません。

また、従業員を雇用して源泉徴収義務者になるときは「給与支払事務所等の開設届出書」も提出しないといけません。従業員の雇用をした日から1ヶ月以内に届出書を作成して税務署に提出しましょう。

消費税に関連するものとして「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」もあります。資本金の額(または出資の金額)が1,000万円以上の会社を設立したときに提出が必要な書類です。
ただし、法人設立届出書で“消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日”の欄を記入して提出しているときは、別途こちらの届出書を出す必要はありません。

提出が任意の書類

提出が必須の書類はあまり多くありませんが、任意で提出する書類はたくさんあります。任意ですので対応しなくても違法にはなりませんが、特定の制度を利用するためには提出しておく必要があります。

税制上の優遇措置を受けたい、税負担や税務の負担を軽減したい、といった場合には届出を検討しましょう。任意で提出する書類の例を下表にまとめてみましたので、参考にしてください。

任意で提出する書類書類の内容
青色申告の承認申請書法人税申告を青色申告で行うときに必要な申請書。 白色申告・青色申告は任意に選択できるが、青色申告の方が税制上お得であるため、多くの場合は申請を行う。 提出は原則「事業年度開始の前日」であるが、設立した年度においては次のいずれか早い方の前日までが期限となる。 設立日から3ヶ月事業年度の終了日
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書従業員を雇って源泉徴収義務者となった場合において、所定の条件を満たし源泉所得税の納付をまとめて行うことを認めてもらう場合に必要な書類。 提出期限の定めはない。
消費税課税事業者選択届出書消費税の課税事業者になることを選択する場合に提出する。 原則は「選択しようとする課税期間の初日の前日まで」が期限であるが、設立後すぐの会社については「事業開始日の属する課税期間の終了日まで」に提出すれば良い。
消費税簡易課税制度選択届出書消費税に関して簡易課税制度を選択する場合に提出する。 原則は「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」が期限であるが、設立後すぐの会社については「事業開始日の属する課税期間の終了日まで」に提出すれば良い。
適格請求書発行事業者の登録申請書適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者のこと。)の登録をする場合に提出する。 提出する日から15日以降を登録希望日として記載することで、その希望日からインボイス発行事業者になれる。
申告期限の延長の特例の申請書法人税の申告期限を延長させたい場合、事業年度終了日までに税務署へ提出する。   また、地方税に関して申告期限の延長を求める場合は、事業年度終了日から22日以内に、都道府県税事務所に対して「事業税等に係る申告書の提出期限の延長の承認申請書」を提出する。 ※詳細は各都道府県のHPをチェック。
減価償却資産の償却方法の届出書特定の減価償却方法を採用するときに届け出る書類。 必要な場合は確定申告の期限までに提出する。
棚卸資産の評価方法の届出書在庫等の資産に関する評価方法を選ぶときに届け出る書類。 必要な場合は確定申告の期限までに提出する。

「提出した方がいいのだろうか」「これはどんな制度で、どんなメリットがあるのか」「いつまでに何をしないといけないのかよくわからない」と悩むときは税理士に相談しましょう。ご自身で一つひとつ調べていくより効率的ですし、的確なアドバイスを受けることができます。