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株式会社と合同会社~それぞれのメリット・デメリットとは?~

株式会社と合同会社~それぞれのメリット・デメリットとは?~

会社を立ち上げるときや、個人事業主から法人成りするとき、会社の形態を選択する必要があります。メジャーなものとしては「株式会社」がありますが、最近では「合同会社」が設立されることも増えてきています。

「株式会社と合同会社、どちらにしようか」と悩むこともあるかもしれません。このような方に向けて当記事では両社の特徴を比較し、それぞれのメリット・デメリットを紹介していきます。

株式会社と合同会社は共通点が多い

多種多様な法人があり、「会社」もここに分類されます。そして会社には株式会社や合同会社、そして合資会社、合名会社があり、それぞれに異なる性質を持っています。

例えば合名会社は社員がすべて無限責任で、会社債権者から社員が直接請求を受けるリスクを持っています。合資会社はこの無限責任社員と有限責任社員が混在する会社形態で、合同会社は有限責任社員のみで構成される会社形態です。

株式会社における社員(=株主)も有限責任しか持たず、この点においては合同会社と変わりはありません。会社債権者からの請求が出資分に制限されるため、攻めたビジネス展開もしやすいのです。

いずれも営利法人である点も共通しています。つまり、いずれの会社も「事業活動から得られた利益を社員に分配する法人」ということです。
合名会社や合資会社も営利法人です。他方、一般社団法人やNPO法人などは非営利法人に該当します。

法人税の負担も同じ

事業活動により利益が発生したとき、利益の大きさに対応する法人税等の負担が必要になります。

株式会社と合同会社における税務の内容は完全に一緒ということではなく、作成すべき計算書類等も若干の違いがあります。しかし法人税などの税金の負担に関しては違いがありません。

例えば同じ「法人」という枠組みに入る団体でも、社会福祉法人や学校法人、NPO法人などにはすべての所得に法人税が課税されるわけではありません。

これに対し税制上「普通法人」として区分される株式会社や合同会社は、すべての所得に対して課税がなされます。会社の種類が違うことによる差はありません。種類の違いによる税率の差などもありません。

作成する計算書類等には違いがある

会社として活動を続けていくには、日々の取引に関する金額の記録、計算の記録などを残していかないといけません。そこで帳簿などを作成する業務が発生し、積み上げた記録を基に決算、税務申告の作業を進めていくこととなります。

そして株式会社においては、計算書類等として次の書類を作成することになります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 附属明細書
  • 個別注記書
  • 事業報告書
  • 株主資本等変動計算書

また、決算公告の義務が課されており、貸借対照表の公開もしないといけません。

一方の合同会社では「株主資本等変動計算書」ではなく「社員等変動計算書」を作成し、「附属明細書」「事業報告書」に関しては作成することが法律上義務付けられていません。
また、決算公告の義務がなく、税務の内容については違いがあるといえるでしょう。

株式会社のメリット・デメリット

株式会社のメリットとデメリットを下表にまとめました。

株式会社のメリット
社員としての立場・権限を自由に譲渡できる株式会社における社員たる地位、権限は「株式」に集約されている。原則として株式は自由な譲渡が可能で、社員になることも社員を辞めることも簡単にできる。 合同会社の場合はこれが認められない。
株式を使った大規模な資金調達ができる株式の譲渡が自由である性質を活かし、自社の株式を市場に流通させる(上場する)ことで、規模の大きな資金調達も可能となる。
知名度が高い「株式会社」という名称は一般に広く知られており、比較的信用を獲得しやすいとも考えられる。
株式会社のデメリット
役員の再任にコストがかかる株式会社では経営者である役員と出資者である社員(株主)が一致しないことも多い。そこで役員の持つ大きな権限に対する抑止として任期が定められている。 原則として取締役は2年(定款に定めて最大10年まで伸長ができる)で任期を終えることになり、再任をするには手続上の手間や費用など、コストが発生する。
設立時の原始定款に対する認証が必要会社を立ち上げるとき、どの会社でも定款が必要になるが、株式会社においてはさらに「認証」の手続が必須。 利害関係が比較的広いことから、公証役場にて、公証人に内容をチェックしてもらうことが義務付けられている。この認証手続にも費用が発生する。
決算公告が義務決算公告を行うことが法律上義務付けられている。手間と費用が発生する上、財務状況が誰でも見られるようになる。

合同会社のメリット・デメリット

合同会社のメリットとデメリットについてまとめたのが下表です。

合同会社のメリット
役員の任期がない合同会社では社員(出資者)=役員となるため、任期の定めによる抑止力をはたらかせる必要がない。そこで一定期間おきに再任をする手間も費用も発生せず、企業活動にかかるランニングコストを株式会社より抑えられる。
設立手続が簡略化されておりコストも低い株式会社に比べて設立手続が簡単。コストも低い。 例えば定款の認証が不要で、認証手数料も発生しない。設立登記にかかる登録免許税も、最低額が株式会社の半額以下である。
決算公告の義務がない毎年決算公告を行う必要がなく、手間と費用の負担が少ない。
柔軟かつ迅速な意思決定がしやすい株式会社では重大な決断を株主総会で行う必要があり、その決議要件も法律で厳格に定められている。招集手続や当日での対応などの負担も生まれる。 合同会社では社員による協議で決することができ、比較的柔軟に意思決定がしやすく、機動的に方針を決めることができる。
合同会社のデメリット
出資分を自由に譲渡できない社員間の結びつきの強さは良さでもあるが、株式会社のように譲渡がなかなかできない。
資金調達の手段が限られる株式を上場して広く投資家から資金を募ることができず、手段が株式会社に比べると少ない。
知名度が低い「合同会社」という名称に聞き馴染みのない一般消費者もいるため、信用の獲得が株式会社より難しくなるケースがある。ただし年々合同会社の件数は増えており徐々に知名度は上がってきている。
社員間の対立が与える経営への影響が大きい社員間で方針や考え方が揃っていれば迅速な意思決定ができるが、その反面、意見が合わず対立関係が強まったときの悪影響も大きい。

ここでは一般論としての特徴を紹介しましたが、重要なのは各々の事情と照らし合わせたときのメリットやデメリットです。「一般的にはデメリットとされていることであっても自社にはあまり関係がない」というケースもあります。

そこで、経営方針や、やろうとしている事業内容に最適な方を選択することが大事といえます。会社設立に強い専門家を頼りに、まずは相談をすることから始めると良いでしょう。

著者について

鷲津裕税理士事務所 administrator

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