法人の経営をしていくには、売上・利益を出すための業務を遂行するだけでなく、税務にも向き合わなくてはなりません。そして税務手続きにおいては1年という期間で大きな区切りがつけられており、期限が定められている手続きもありますので全体のスケジュールを確認しておくことが大事です。ここでその流れを押さえておきましょう。
年間スケジュールの例
税務手続きに関して法人がしないといけない作業はたくさんあります。3月決算法人を例に、1年間のスケジュールを簡単にまとめたのが下表です。
1月 |
・12月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ※特例適用者の場合:7月~12月分の源泉所得税を納付 ・償却資産税申告書の提出と納付 ・法定調書の作成、給与支払報告書の提出 |
2月 |
・1月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・償却資産税第4期分の納付 |
3月 |
・2月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・実地棚卸 ・翌期の税務ポジションや事前申請有無の確認 |
4月 |
・3月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・償却資産税第1期分の納付 |
5月 |
・4月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・法人税、消費税、地方税の確定申告と納付 |
6月 | ・5月分給与の源泉所得税、住民税の納付 |
7月 |
・6月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ※特例適用者の場合:1月~6月分の源泉所得税を納付 ・償却資産税第2期分の納付 |
8月 | ・7月分給与の源泉所得税、住民税の納付 |
9月 | ・8月分給与の源泉所得税、住民税の納付 |
10月 | ・9月分給与の源泉所得税、住民税の納付 |
11月 |
・10月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・法人税、消費税、地方税の中間申告と納付 |
12月 |
・11月分給与の源泉所得税、住民税の納付 ・償却資産税第3期分の納付 ・年末調整 |
※前期消費税額48万円超~400万円以下で、中間申告は年1回と想定。
上場会社等の法人は四半期決算を行うこともありますし、毎月月次決算を行うこともあります。その他、特例の利用や課税の規模によってスケジュールが変動することもありますので注意してください。また、こちらは3月決算法人を例にしていますので、決算月が変われば全体のスケジュールも変わってきます。
決算までの日々の業務
決算に関する仕事は決算月付近でのみ発生するわけではありません。忙しい時期とそうでない時期の差はあるかもしれませんが、年間を通して会計手続きを積み上げていかないと決算はできません。
そこで次の流れに沿って日々の業務を進めていきます。
- 仕訳業務
決算対象となる年度分すべての仕訳を決算までに済ませておく必要があるため、日々の取引は日常的に記帳しておく。
クラウド型会計ソフトでは領収書データ等から仕訳を自動で登録するものもありますので、従来に比べて事務負担は軽減されています。
- 試算表を作成
日々の仕訳記録から総勘定元帳、仕訳帳が作られ、それらの情報と連動する形で試算表を作成。専用の会計ソフトを使えば仕訳記録が自動的に反映されていく。 - 決算整理仕訳
決算のために必要な、年度単位で行うべき仕訳(年払いとしてる費用などの処理)を行う。 - 決算書を作成
貸借対照表、損益計算書などを作成する。これら決算書をもとに確定申告および納付も行う。
記帳業務を溜め込まずに対応していけば、決算にかかる負担も軽くすることができます。顧問税理士に記帳代行を頼むこともできますが、自社で記帳を行うメリットは適宜自社の財務状況を把握し経営の意思決定に使用することができるという点になります。
弊所では、顧問税理士には適宜会計のチェックや税務アドバイスを求めつつ、自社の取引については自社で整理することが好ましいと考えております。
納税が必要な税金について
法人のする活動にはさまざまな税金が絡んできます。適切に申告や納付の義務を果たさなければならず、期限にも注意が必要です。
法人税 | ・全法人に申告義務がありますが、利益が出ている法人に納税が生じます。 ・期限は原則として事業年度の終了日の翌日から2ヶ月後 |
源泉所得税 | ・給与や報酬等を支払う事業者が対象 ・期限は給与の支払月の翌月10日、 |
消費税 | ・一定以上の国内売上高がある事業者、インボイス発行事業者になった事業者が対象 ・期限は原則として事業年度の終了日の翌日から2ヶ月後 |
また、地方税にも留意する必要があり、「法人住民税」や「法人事業税」、「償却資産税」などが発生します。
多くの税金は「事業年度の終了から2ヶ月以内」という期限にかかるため、決算月から2ヶ月以内に確定申告や税金の納付に対応できるよう備えましょう。申告期限の延長申請を行うことで延長することもできますが、期限に間に合わないときは延滞税や加算税等のペナルティの負担も加わってしまいます。
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