M&A、スタートアップ税務に強い税理士なら池袋の鷲津裕税理士事務所

月別アーカイブ 2026年8月27日

日本政策金融公庫で融資を受けるメリットとは

小規模事業者、それも創業からそれほど経っていない事業者だと、資金調達をするのも簡単ではありません。代表的なのは「銀行から融資を受ける」という手法ですが、これもある程度の実績がなければ審査に通らない可能性が高いため、そんなときは「日本政策金融公庫から融資を受ける」ことも検討してみましょう。

当記事で中小企業が日本政策金融公庫を利用するメリットを取り上げていますので、検討にあたっての参考にしていただければと思います。

「融資の受けやすさ」が一番のメリット

金融機関も日本全国多数存在しますが、日本政策金融公庫には「中小企業でも融資が受けやすい」という大きなメリットがあります。その理由として以下4つのポイントを挙げることができます。

  1. 創業融資にも積極的
  2. 低金利で借入できる
  3. 豊富な融資制度がある
  4. 無担保・無保証人の融資制度がある

各ポイントについて見ていきましょう。

創業融資にも積極的

日本政策金融公庫は創業期の企業に対する融資にも積極的な姿勢を持っているため、立ち上げ直後の企業向けの融資制度も用意されています。

創業期の企業への融資はリスクも大きいと評価されやすいため、通常だと審査も厳しくなり、なかなか資金調達を成功させられません。もし、他の金融機関からの融資が難しいと思われるときは日本政策金融公庫への申し込みを考えてみましょう。

低金利で借入できる

金利が比較的低く設定されているのも日本政策金融公庫を利用する大きなメリットです。同じ金額を借りられたとしても、金利が低ければその分企業にとってのリスクは小さくなり、経済的な負担も抑えることができます。

また、変動金利のみならず固定金利を選択できるケースがあるのも利点です。

一般的には融資の際変動金利が設定されていることが多いのですが、固定金利が選択できることで「返済額が変動してしまう」というリスクを回避することができるのです。固定金利が変動金利より常に優れているわけではなく、それぞれに良し悪しがありますが、選択肢が用意されていることでより自社に合った融資を実現しやすくなるでしょう。

豊富な融資制度がある

創業融資のこともそうですが、日本政策金融公庫には多種多様な融資制度が用意されています。そのため事業の状況や目的、業種などを問わず、幅広い企業が利用しやすくなっています。

大きな区分としては次の3つが挙げられます。

融資制度の区分特徴
国民生活事業・個人事業主や小規模事業者が主な対象
・融資残高は平均約900万円
・短期の運転資金についても取り扱いあり
中小企業事業・中小企業が主な対象
・融資残高は平均約1.3億円
農林水産事業・農林漁業やその加工流通分野の事業者が主な対象
・長期事業資金についての融資

さらに細かく融資制度が設けられていますので、一度公式のWebサイトから調べてみると良いでしょう。

日本政策金融公庫:「融資制度を探す」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index.html

無担保・無保証人の融資制度がある

多くの場合、特に創業期でリスクの大きな企業の場合、融資を受ける際に担保あるいは保証人を求められます。

他方、日本政策金融公庫であれば、一定条件を満たし無担保・無保証人にて融資を受けることも可能です。
よく会社代表者が保証人となるケースがあるのですが、そうするとプレッシャーが大きすぎて攻めた経営ができなくなるなどの問題が起こってしまうのです。しかし保証人等が不要となればより積極的に事業を展開しやすくなります。

次の融資に繋がる間接的なメリットもある

日本政策金融公庫からの融資に成功し、その後計画通りに返済することができれば、それを実績として次の資金調達に活かすことができます。

初めての融資だと、相手方も「本当に完済してくれるのだろうか」「信用していい企業なのだろうか」と不安に思うかもしれません。
一方で、「前に日本政策金融公庫からお金を借りて、その後計画通りに返しました」とアピールができれば別の金融機関も少し安心でき、審査においても良い印象を与えることができるでしょう。

その他のメリットについて

ほかにも日本政策金融公庫ならではのメリットが下記の通りいくつか挙げられます。

返済期間を長く設定できる

日本政策金融公庫の場合、返済期間を比較的長く設定することもできます。

「運転資金10年以内」「設備資金20年以内」などと設定できるケースがあるのですが、民間の金融機関だと数年程度短い返済期間でしか組めないことが多いです。また、元金返済に関して据置期間を設けられる(「5年以内」など)のも大きなメリットといえます。

融資実行までがスピーディ

資金ショートを起こしそうな場合、できるだけ早く融資を実行してもらう必要があります。事業がピンチではなくても、手続きがスピーディに進められる方が企業にとって望ましいでしょう。

この点、日本政策金融公庫を利用した融資であれば審査期間が短いことが多く、一般的な銀行などと比べて1,2ヶ月ほど早く資金を得られるケースもあります。

企業経営に関する相談ができる

日本政策金融公庫では融資制度の提供のみならず、経営に関する相談や事業者に役立つ情報の提供なども行っています。融資に伴い事業活動についての相談・質問ができるのも日本政策金融公庫のメリットといえます。

緊急時の資金調達で頼れる

日本政策金融公庫では、災害被害を受けた企業が利用しやすい融資制度も用意しています。そのため緊急で資金調達をしたいときにも適しています。

例えば、地震や台風、火災などで事業の復旧を要する事業者に対して、「災害復旧貸付」を提供することで復興を支援しています。

参考:「災害復旧貸付」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/saigai.html

日本政策金融公庫からの融資でも入念な準備が欠かせない

日本政策金融公庫は小規模事業者にとって心強い味方となります。しかしながら「簡単に資金調達ができる」ということではありません。

日本政策金融公庫からの融資であっても審査に通るため、入念に準備を進めておく必要があり、とりわけ事業計画書の策定は重要度が高いです。

綿密な、実現可能性の高い計画を立て、「返済できそうだ」と思わせることが大事です。計画の策定について不安がある場合は専門家の力も借りながら、より質の高い計画を練り上げましょう。

受取配当等の益金不算入制度をわかりやすく解説

法人税を計算するときは「受取配当等の益金不算入制度」について知っておく必要があります。この制度は、企業がほかの会社から受け取った配当金に関して、法人税の負担を軽減する仕組みになっています。

当記事では、この制度の基本的な考え方から具体的な計算方法まで、わかりやすく解説していきます。

受取配当金とは何か

受取配当等の益金不算入制度について考えるには、まず「受取配当金」とは何かを理解しなくてはなりません。

受取配当金とは、企業がほかの会社の株式を保有していることで受け取る配当金のことです。たとえば、X社がY社の株式を持っている場合、Y社が利益を上げて株主に配当金を支払うと、X社はその配当金を受け取ることになります。

《 他社の株式を持つ典型例 》

  • 長期的な付き合いや取引関係を強化したいとき
    → 長年の取引関係があって、今後も安定した関係を続けたいと考えているとき、X社がY社の株を買ったり、Y社がX社の株を買ったりすることがある。これにより両社の結びつきが強くなり、取引や協力関係の安定が期待される。
  • 経営を安定させたい
    → 外部からの急な買収や、経営方針を揺るがすような動きを防ぎたいときに、信頼できる会社同士で互いに株を持ち合うことがある。
  • 新しい事業や技術を得たい
    → 将来的に一緒に新しい事業を始めたり、相手方の会社の技術やノウハウを活用したりしたい場合に、その会社の株を買うことがある。
  • 資金を有効活用したい
    → 会社が余った資金を預金などに預けるだけでなく、将来性のある会社に投資することで、配当金や株価の値上がりによる利益を得ようとする場合がある。

また、株式の配当に加え投資信託の収益分配金や、投資法人からの金銭分配なども受取配当金に含みます。

企業の会計処理では、この受取配当金は「営業外収益」として損益計算書に計上されます。つまり、会計上は収益として扱われ、企業の利益を構成する要素としてカウントすることが認められます。

益金不算入は何を意味するか

「益金不算入」とは、簡単にいうと「法人税の計算において収益として数えない」という意味になります。益金不算入のものは、会計上は収益で計上したとしても、法人税の計算上の「益金」(法人税計算上の収益のこと)には含めないということです。

たとえば、100万円の受取配当金があった場合、会計上は当該会社が100万円の収益を得たものとして処理できますが、法人税について考えるときは益金不算入の適用を受けますのでその一部または全額が益金から除外されます。
結果として、その分だけ法人税課税の対象になる所得が減少し、納めるべき法人税額も少なくなります。

益金不算入となる金額は、株式の保有割合や保有目的によって異なります。すべての受取配当金が一律に益金不算入となるわけではないため注意してください。

なぜ受取配当金は益金不算入なのか

受取配当金が益金不算入になる理由は、「二重課税の排除」にあります。

配当金というものは、そもそも配当を支払う会社が法人税を支払った後に残った利益から株主へと分配されるものです。

たとえばY社が1,000万円の利益を上げ、300万円の法人税を支払ったとしましょう。残った700万円の中から株主であるX社に100万円の配当を渡し、X社がこの100万円の配当金に対してさらに法人税を支払わなければならないとすると、同じ利益に対して2度も法人税金が課されることになります。

この問題を解決するために、益金不算入の制度が設けられています。払い過ぎた法人税の還付金なども同様に扱います。

ただし、すべての配当に関して完全に益金への算入を排除する必要があるかというと、そうではありません。「企業支配を目的とした株式保有」と「単純な投資目的の株式保有」とでは、二重課税排除の必要性が異なることから、保有割合に応じて益金不算入の割合も設定されています。

受取配当等の益金不算入の方法

受取配当金の処理を行うときは、次のように株式の保有割合に応じて4つの区分に分け、それぞれで異なる不算入割合を適用します。

受取配当等の区分とそれぞれの不算入割合
完全子法人株式等 (100%の保有)・配当を支払う会社の株式を100%保有しているケース。親会社が子会社を完全にコントロールしたい場合などでこの形になる。
・受取配当金の全額が益金不算入
・完全に支配している子会社からの配当であり、実質的に同一組織内の資金移動と考えられるため
関連法人株式等 (1/3超~100%未満の保有)・株式保有割合が1/3を超えているケース。完全親会社ほどではないが、特定の会社に対して特に大きな影響力を行使したい場面でこの形になる。複数の会社で協力して新たな事業を立ち上げた場合など。
・この区分でも基本的には受取配当金の全額が益金不算入であるが「負債利子控除」という調整計算が行われる
※負債利子控除:株式取得のための借入金の利息相当額を配当金から差し引いて益金不算入額を計算する仕組みのこと。
その他の株式等 (5%超~1/3以下の保有)・株式保有割合が5%を超え1/3以下のケース。将来的に子会社化を検討している、将来的により取引関係を深めていきたいと考えている、などさまざまなニーズが考えられる。
・受取配当金の「50%」が益金不算入
・この区分は、ある程度の関係はあるものの、完全な支配関係にはない投資を想定している
非支配目的株式等 (5%以下の保有)・株式保有割合が5%以下のケース。配当金や株価上昇による利益を求めて、上場企業などに投資するときこの形になる。経営への関与などは考えておらず、単なる資産運用の一環。
・受取配当金の「20%」のみが益金不算入
・投資目的での株式保有と考えられるため、二重課税排除の必要性も限定的に考えられている

実務上の注意点

受取配当金等について益金不算入とする場合、正しい区分判定をするよう注意してください。たとえば「非支配目的株式等」であるにも関わらず「その他株式等」として計算してしまうなどのミスが起こらないようにしましょう。本来20%の不算入割合であるべきものを50%の割合で適用してしまうと、税額に大きな差が生じてしまいます。
そのため、保有割合を確認するだけでなく、完全子法人株式等→関連法人株式等→非支配目的株式等、とそれぞれの該当性をまずは判定していき、いずれにも該当しない場合にのみその他の株式等の区分に該当するものと判定すべきです。

また、関連法人株式等の区分にあたるときは「負債利子控除」に注意してください。この控除制度の趣旨は、株式から生じた配当金は益金に不算入とするのに対し、株式取得のための借入金の支払利息が損金に算入されることとのバランスを取ることにあります。
借金をして株式を買えば、その配当金が全額非課税になるという不合理を防ぐための仕組みです。負債利子控除の計算は複雑ですのでミスしないよう注意し、できれば税理士に対応を任せましょう。